家事の負担を減らすことはできるのか。家計アドバイザーの下村志保美さんは「掃除や洗濯、料理だけでなく、名前がついていないような細かい雑務に時間を奪われている人が多い。
まずはこの『名もなき家事』を認識することが第一歩になる」という――。
※本稿は、下村志保美『自分時間が30分増える 余裕がある人の時間整理術』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
■私たちの時間を溶かしてしまう「犯人」
「気がついたら1日が終わっていた」、「やるべきことがまったく進まないまま、時間だけが過ぎている」――。
これは私たちが、よく経験することではないでしょうか。自分でも何だかよくわからない間に“時間が溶けていた”ように、感じる方も多いかもしれません。
本稿では、この「何をしていたかわからない」時間がなぜ生まれるのかについて、一緒に考えていきましょう。
日々の暮らしを回していくうえで、絶対に必要なのが「家事」。家事と一口に言っても、実は想像以上に細かくて、やる範囲も広いものです。
■細々とした「名もなき家事」が多すぎる
近年、よく言われている「名もなき家事」を、皆さんはご存じですか?
「名もなき家事」とは、掃除、洗濯、料理など、その活動がわかりやすく名づけられているもの以外の、小さくて細かい雑務のことです。
そこで今回、私が思いつく限りの「名もなき家事」を、図表1のようにリストにしてみました。
恐らくこの本を読まれているほとんどの方が、「あるある!」、「わかる!」と共感してくださると思います。と同時に、
「名もなき家事」、多すぎない?
と思われるはずです。

リストを眺めただけで、「はーっ……。面倒くさい!」となる方もいるはず。私もその1人です(笑)。
そしてこの名もなき家事こそ、私たちから時間を奪っているものの正体のひとつ。リストに挙げたのはほんの一例ですが、それでもざっと30個以上はあります。これらをひとつずつ、丁寧に、そして1人で続けていたら……。
時間がいくらあってもたりませんよね。
■「なぜ私だけが…」とイライラしがち
たとえば、「名もなき家事リスト」にある、「献立を考える」というタスク。自分や家族の健康を守るために、食べるもののバランスを工夫するのは、とても大事な作業です。
ただしそこには「どうやって考える?」、「何の食材をどれだけ買う?」「家族の好みは?」。そしてその先にある、「冷蔵庫のストックを使いきらなきゃ」、「トマトは今週中に食べきりたいから、トマトを使ったおかずを……」と、エンドレスで考えるべきこと、やるべきタスクが発生していきます。
家事(行動)に思考(行動に伴って発生する、考えなくてはならないこと)が連動して増えていき、脳みその中はフル回転の状態に!
体ではなく脳が疲れている=慌ただしく感じる
という状況が発生します。

そして人は皆、「自分だけは損をしたくない」と考える生き物。「名もなき家事」を、私だけが引き受けている……と思うようになったら、家族にイライラしたり、自分は家事能力が低いんだと落ち込んでしまったり。
時間がないうえに、自己肯定感も下がってしまう……。
そんなのって、悲しいですよね?
たかが家事。されど家事。まずはあなたの時間を奪っているものの正体を知りましょう。
そのうえで、限られた24時間の中から、自分が自由に使える時間を増やすためのテクニックを、片づけのルールも交えながらお伝えします。
■洗濯を片付けるまでの動線はムダが多い
「何だか一日中、家事をしているような気がする」、「バタバタしているのに部屋が片づかない」――。
そう思う方はもしかしたら、時間も体の使い方もムダにしているかもしれません。
ゆとりある時間をつくるためには、「動線(移動するルート)」を最小限にし、最大限の結果を得ることが大事です。
家事動線の中でムダな動きが出やすいものと言えば、洗濯時の動きでしょう。
洗濯物を洗濯機の中に入れ、洗い終わったら取り出し、ベランダや庭に干す。
さらに取り込み、家族に合わせて分けたたむ頃には、もう1日が終わり、また新たな洗濯物を洗濯機の中へ……。
一体、どれだけ部屋の中と外を動けばいいの⁉
洗濯の繰り返しに「もうウンザリ!」と思っている人は多いはずです。
■ドラム式洗濯乾燥機を買った結果…
「洗濯にかける時間をとにかく減らしたい」と思っている方には、私はドラム式の洗濯乾燥機の購入をおすすめしています。
「テクニックじゃなくて、結局お金で解決ってこと?」とがっかりされる方もいるかもしれません。確かにドラム式洗濯乾燥機は決して安くありませんし、「電気代などのランニングコストがかかるのでは」と、躊躇される気持ちもわかります。
でもドラム式洗濯乾燥機があれば、洗濯動線はぐっとラクになり、使える時間が圧倒的に増えます。そのメリットを実感しているので、私はもう手放せません。
なんといってもまず、天気に左右されない。私自身はもともと洗濯という家事が好きで、晴れた日にベランダいっぱいに洗濯物を干すことに幸福を感じていました。
ですが、毎日晴れとは限らないし、留守にしているタイミングで雲行きが怪しくなりハラハラ、せっかく干した洗濯物が雨に濡れてまた洗い直す虚しさ。部屋干しという手もありますが、臭いが気になりますし、室内に洗濯物が干されている光景は「片づいていない」感が出て好きになれませんでした。
そこで10年前からドラム式の洗濯乾燥機を導入し、夜間に乾燥までを一気に終わらせ、朝に洗濯物を片づけるというルーティンができました。

■「誰の服?」と悩む時間ももったいない
ドラム式の洗濯乾燥機を使い始めてまず感じたのは、朝の時点で洗濯物を片づけるという家事が終わることで、夜の「やらなきゃいけない」が減ったこと。そして今まで好きだと思っていた洗濯物を干す、取り込むという作業は、いざなくなると「ラクになった!」と実感しました。これはやめてみて初めて気づいたことです。
ドラム式洗濯乾燥機をさらに便利に使うために、実践しているコツがいろいろとあります。
まずは、洗う前に、その人の分の洗濯物を特大ネットにまとめること。わが家は大人3人がひとつの洗濯乾燥機を共有していますから、みんなが一気に洗濯物を入れると、乾燥が終わったときに「これ、誰の服?」と、なりがち。
特に娘と私のものは、同じようなサイズのインナーやソックスが多いので、その都度考えながら取り出す時間はもったいない。
■便利家電の導入は、浪費ではなく投資
そこで私は、自分の分の洗濯物は、あらかじめ特大ネットにひとつにまとめてから、洗濯機に入れています。こうすれば、誰が洗濯乾燥機を回しても、取り出したときに「誰のだっけ?」と悩む時間が生まれません。
また、繊細な素材の衣類や下着などは、お風呂に入ったときに手洗いをしてしまう。そしてお風呂を出る際には、洗った服を浴室内に吊るし、浴室乾燥機のスイッチをオン。今、私が洗濯のために動いている時間は、これくらいのものです。

洗濯に限らずですが、特に女性の方は「家事は自分がやればタダ」、「家事にお金をかけるのはもったいない」と感じる方が多いように思います。
でも家事に費やしている時間を減らして、その分を仕事や副業にあてられるなら、長期的に必ず元が取れるはず。
便利家電を導入することは、浪費ではなく設備投資。上手に使いこなして、自分の自由な時間を生み出しましょう。

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下村 志保美(しもむら・しほみ)

家計アドバイザー

1968年、愛媛県松山市生まれ。「空間・お金・心」の3つを整えることで、忙しい女性をサポートする「PRECIOUS DAYS」を主宰。2014年に片づけのプロとして起業。訪問やオンラインでの整理収納レッスンをはじめ、各種講演やコンサルティング、ESSE onlineでの記事執筆、家計アドバイザーとしての活動など、多岐にわたって活躍する。著書に『『「お金が貯まる家」にはものが少ない』(扶桑社刊)、『片づけのプロが教える心地いい暮らしの整え方』(三笠書房刊)がある。

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(家計アドバイザー 下村 志保美)
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