■価格
    ニコン Z 30:オープン価格、市場想定価格は税込98,000円前後
    Z 30 16-50 VR レンズキット:オープン価格、市場想定価格は税込120,000円前後
    Z 30 ダブルズームキット:オープン価格、市場想定価格は税込150,000円前後
    ■国内発売日
    2022年8月5日
ニコンからVlog向けのAPS-Cミラーレス「Z 30」登場ニコンは、Zマウントを採用したAPS-Cサイズ/DXフォーマットミラーレスカメラ「Z 30」を発売した。バリアングル式液晶モニターの搭載し、動画最長記録時間125分対応などにより、Vlogをはじめ、日常の撮影からこだわりの撮影までの幅広いシーンでの動画撮影に適したミラーレスカメラとしている。


APS-CサイズのCMOSセンサーを搭載したニコンZ 30 YouTube等の番組としての動画や、Instagram等でのVlogとしての動画が溢れかえる昨今、動画のプロから動画を始めたばかりの方と、動画作成は様々な情報発信のツールとして本当に多岐に及んでいる。もちろん動画作成に関連するツールもプロでもアマチュアでもそれぞれ好みのツールや、手近なツールを使って、それぞれのスタイルに合わせて動画作成を行われているだろう。

その中でも圧倒的に動画作成のツールとして用いられるのがiPhoneを始めとした高機能・高画質なスマートフォンなのは間違いない。iPhoneのCM等ではiPhoneだけで撮影されたものもよく見かけるし、他のAndroid系のスマートフォンのCMでも、ここ最近は動画のクオリティーを主張しているものがより多く見受けられる。

当然スマートフォンの写真クオリティーも向上しているわけで、スマートフォンの高機能化と高画質化を実感すれば、スマートフォンで動画の撮影からアップロードまで一台で完結できるわけだから、最も優先的に選択されるツールであることは間違いない。

ただ、動画で生計を立てている者から言わせてもらうならば「スマホは簡単だが難しい」ということだ。
スマートフォンで動画を撮影するのが簡単なのはすぐにご理解いただけるだろうが、なぜ難しいのか、そこがわかるとスマートフォンで動画を撮るよりも、ニコンZ 30で動画を撮ることが良いのか理解していただけると思うので、その辺も踏まえてニコンZ 30を触った感想なども織り交ぜて話をさせていただこう。

NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRとの組み合わせニコンZマウントのレンズに対応ではスマートフォンからニコンZ 30に乗り換えたとして、動画や写真を撮影するにあたってどういう変化があるのだろうか?簡単にまとめてみよう。

まず一番わかりやすく効果的なところで言えば、様々なレンズに交換できること。最近ではスマートフォンでも広角・標準・ズームと言ったレンズが備わっているものもあるが、なかなか適切なレンズで撮影できるわけではない。交換レンズ式のカメラであれば、その演出用途に合ったレンズを選択できるメリットが生まれる。

本体に搭載したNIKKOR Z DX 50-250mmとNIKKOR Z DX 16-50mm(右)ニコンの「Z」マウントのレンズ群には、高精細な多種多様なレンズがそろえられている。
Z 30のセンサーサイズはAPS-Cなので、Z DXレンズとZレンズ(センサーサイズがAPS-Cのカメラで使用する場合、焦点距離は約1.5倍)の双方が使用できるし、マウントアダプターを使えば「F」マウント用のレンズまで使用することができ、ニコン純正のレンズだけではなくサードパーティーの「F」マウントレンズ等も使用できる。

これが「レンズ沼」とも言われる所以なのだが…。それでも、レンズ毎に設定されている焦点距離や絞り値等の違いで、演出の幅は大きく広がる。ただ、大きさや重さで言えば、スマートフォンがZ 30に負ける要素は今のところないだろうが、メカニカルなレンズ搭載の手ブレ補正(VR)はスマートフォンに負けないアドバンテージのはずだ。

迅速な設定操作と右手だけでの快適な操作性次にシャッタースピードや絞り値、そしてISO感度を思いのままコントロールできること。これはZ 30に限ったことではないが、大概のデジタル一眼カメラであればこの三つの要素をダイヤルなどにより瞬時にコントロールでき、撮影シーンに合った設定に調整することが可能だ。


ISOボタンや露出補正ボタン、メインコマンドダイヤル(右下)、グリップにはサブコマンドダイヤルを搭載明るすぎる所を明るく撮ることや、暗い所を暗く撮影することも容易になる。「スマホ任せ」で撮影していると、シーンの設定などでは明るすぎる所も暗すぎる所も、「ちょうど良い」明るさで撮影されてしまい演出の意図が破綻してしまう。ちょっとしたことのように思うが、これが実は重要なことなのだ。

スマートフォンでの撮影時、設定変更は画面でメニュー操作して変更しなければなず、メニューの階層によってはなかなか探し出せない設定などもあり、撮影のタイミングを逃してしまうこともしばしばあるだろう。

Z 30はメインコマンドダイヤルやサブコマンドダイヤルでシャッタースピードや絞り値、ISOボタンを押してISO感度の設定なども思い通りに設定、また各ダイヤルとボタン等はユーザーが置き換え可能で、撮影モードダイヤルにはU1からU3までユーザー独自の設定を記憶し切り替えることもできる。またこのダイヤルやボタンでの設定が、右手だけで行えるのも利点だ。


手ブレはZレンズの補正機能で対応上記でも少し触れたが、やはり撮影時にかなり気になるのは「手ぶれ」だろう。スマートフォンでも手振れ補正が機能として備わっているものが多くなってきている。またスマートフォン用のスタビライザーなども豊富に発売されており、製品によって精度と操作方法はまちまちで、左右上下にパンやチルトをする時にジョグで操作できるものや、自分が動く場合に手ブレだけに反応し、スマホの方向などは固定するボタンなどが備わっているものもある。

NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRには5.0段の手ブレ補正効果を発揮する光学式VR機構を内蔵ただしこれを使いこなすためには、それなりに訓練が必要になってくる。ではZ 30ではどうかと言うと、ボディー内手ブレ補正はないものの、Zレンズの強力な手ブレ補正(VR)機能が備わっており、快適に手ブレのない撮影を行える。もちろんミラーレス一眼サイズが搭載可能なスタビライザーと組み合わせて使うことで、より手ブレのないクオリティーの高い撮影を行えることは言うまでもない。


ただスマートフォン用のスタビライザーと違い、ミラーレス一眼を搭載可能なスタビライザーはそれなりに高価なものが多いので、おいそれと手を出すことができないだろう。そんな時に役に立つのが撮影用リモコンを搭載できるトライポッドグリップ3070だ。

重宝するトライポッドグリップ3070上記で手ブレさせないようにトライポッドグリップが役に立つと書いたが、本当に簡単な事で手ブレなく左右にカメラを振ることができる。左手でカメラ底面からレンズを持ち、トライポッドに角度を付けて右手で持ち、トライポッドの末端をおなかにつければ驚くほどに手ブレしない。

スマホではできない技だし、昔からビデオカメラを振っていた者だから格好が悪くてもこれが最適というTipsだ。リモコンを搭載して使用すれば、動画撮影ボタンなどもそのまま押すことができるのだ。


   SmallRigトライポッドグリップ3070リモコンML-L7セットまた、バリアングル式画像モニター搭載なので、自撮りの場合もトライポッドグリップを調整して自撮り棒にトライポッドグリップをミニ三脚にして据え置き、リモコンを手に持って撮影開始という感じで、撮影ボタンを押している動作が記録されない動画を撮影することも可能だ。

暗部に強く写真も綺麗・その他の機能もスマートフォンでは暗く撮影できない場所でも、Z 30なら楽々撮影可能だ。スマートフォンのイメージセンサーよりも大きなセンサーを搭載している分、暗い場所でも光をとらえやすく、Z 7やZ 6と同じ画像処理エンジンEXPEED 6で高画質を実現し、感度も常用で最高ISO 25600の高感度で動画撮影(写真撮影時の最高感度はISO 51200)が行える。

当然、写真撮影の性能も高いものを持っている。人物はもちろん、犬や猫の瞳も検知する瞳AFを搭載、そして制限はあるものの最大約11コマ/秒の高速連続撮影が可能と、スチルカメラとしても優秀だ。

ニコンZシリーズ中、最小・最軽量のZ 30だが、グリップ高は低くなく、大きめの手で握っても、指の第一関節が余るようなことはない。非常に握りやすく、右手だけで様々なコントロールが行え軽快に扱える。そして動画の連続撮影時間が飛躍的に伸びている。条件や制限はあるものの、フルHD 24p/25pで最長125分の連続撮影が可能だ。

 
  ※画像をクリックして拡大他にも録音帯域も音声帯域か広域帯域が選べたり、フルHD 120p等のスロー撮影、Z 30をWEBカメラとして使用したり、静止画の現像や動画編集などのソフトも無料で使用することができる。

スマートフォンには負けない、特化した多彩な機能が詰まったZ 30は、スマホから卒業したい動画制作者、気軽に高画質な動画と写真を撮影したい人、写真撮影から動画撮影に幅を広げたい人等に、初めての筐体として最適の一台になるだろう。

小山田有作|プロフィール
you-artsの屋号で映像の仕事を始めて20年。企業PVやセミナービデオなどを中心に、ディレクションから撮影、編集に2DCGの作成などを行っている。スチルの撮影もこなし、現在はYouTubeの番組制作も携わっている。

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