2020年から2021年にかけて、イケア・ジャパンは原宿・渋谷・新宿に都心型店舗3店舗をオープンしました。各店舗はそれぞれのお客さまのニーズにあわせたルームセットや商品ラインナップを取り揃えています。
また、IKEA原宿ではスウェーデンコンビニ、IKEA渋谷ではベジドッグ専用のビストロ、IKEA新宿ではデリの量り売りなど、イケアの新たな試みを見ることができます。
3店舗のうち、2022年4月にはIKEA渋谷にてリニューアルエリアが完成。主に、2階・5階・6階を改装し、より利便性に優れた内装となっています。
今回は、IKEA渋谷のリニューアル内容やその目的について、IKEA原宿・渋谷・新宿 マーケットマネジャーの青木エリナさんにお話を伺いました。また、IKEA原宿、IKEA新宿を含めた都心型店舗をオープンした背景についても振り返っていただきました。

原宿・渋谷・新宿に都心型店舗をオープンした背景。イケア・ジャパンの新たな試み
ーーまずは、都心型店舗をオープンすることになった背景について聞かせてください。
青木:都心部に人口が流入していることが大きな理由のひとつです。
イケアは郊外に大型の店舗を構えるのがスタンダードな形ですが、日本で運営していくなかでお客さまから「イケアの名前は知っているけれど実は行ったことがない」、「遠いからなかなか行けない」などの声を多数いただいておりました。
それならば、都心部に店舗を出店したほうがよいのではないかということで、新しいイケアのフォーマットで都心部に店舗を構えることにいたしました。
それぞれのエリアが沢山の人々を魅了する街であるため、より多くの方々に、高品質で、デザイン性、機能性に優れ、サステナブルな商品をお手ごろな価格でお届けするため、都心型店舗をオープンしました。

ーーIKEA原宿・IKEA渋谷・IKEA新宿は各店舗ごとに特徴があり、お客さまの層も異なるそうですね。
青木:まず、大型店舗には圧倒的に家族連れのお客さまが多くいらっしゃいます。一方で、都心型店舗の第1号としてオープンしたIKEA原宿には、10代~20代の若いお客さまが多く来店されています。ご家族と同居されている方はもちろんですが、ひとり暮らし、ふたり暮らしのお客さまも多いですね。
そのためIKEA原宿では彼らのニーズを汲み取り、アクティビティでカテゴライズした商品をまとめて見ることができるような作りになっています。具体的には、人が生活するうえで欠かせない、「眠る」「整える」「くつろぐ」「料理する」の4つが反映されています。
IKEA渋谷は、IKEA原宿のお客さま層と似ているところはありますが、年齢的にはIKEA原宿よりやや上の年齢層の方が多い傾向にあります。また、ひとり暮らし・ふたり暮らしの方や、法人のお客さまも数多く来店してくださっています。
IKEA渋谷の特徴としては、上層階に家具類、下層階に小物類を配置していることです。各店舗ごとに階層や広さなどが異なるため、商品の見せ方はそれぞれ工夫しています。限られたスペースでも好きな家具を置きたい、インテリアコーディネートを楽しみたいという方は多くいらっしゃるので、「限られたスペース」を「可能性に溢れたスペース」として、快適な暮らしができる解決策やインスピレーションに溢れたソリューションをお届けするルームセットを展示しています。
3店舗目としてオープンしたIKEA新宿は、IKEA渋谷よりもさらに上の年齢層の方が来店されていることに加え、お子さま連れのご家族も多くお見受けしています。
店舗の特徴としては、部屋のカテゴリーに分けて、家具と一緒に小物を販売していることです。
リビングルームやベッドルーム、キッチンなど、家のなかで活動のコアとなるエリアに対応した見せ方になっています。
それぞれの店舗に特徴はあるものの、原宿、渋谷、新宿は、日々変化を遂げている大きな街です。イケアの都心型店舗は、その街の成長とともに、お客さまのニーズにお応えしながら、進化を続けています。
ーー店舗ごとに利用するお客さまの層が異なることで、選定する商品やどのようにフードを提供するかなど、イケアとしてチャレンジングだった部分はありますか。
青木:各店舗ではそれぞれ建物の形も階層も違うため、店内のどの場所でどんな見せ方をすれば、お客さまにとってわかりやすくお買い物しやすいか、という点を考えることはイケア・ジャパンにとって初めてのチャレンジでした。
また、IKEA原宿の「スウェーデンコンビニ」、IKEA渋谷のベジドッグ専門「スウェーデンビストロ」、IKEA新宿の「スウェーデン バイツ」といったように、イケアとして世界初となるエリアを各店舗にオープンしています。
まずIKEA原宿では、1階にある「スウェーデンコンビニ」のほかに、2階にはこちらもイケア初であるスウェーデン風ラップサンド「TUNNBRÖD/ツンブロード」をお楽しみいただける「スウェーデンカフェ」も併設しています。意外にも原宿にはゆっくりできるカフェが少ないので、来店するお客さまからはお喜びの声をいただいています。

次に、IKEA渋谷の1階には、お肉を使わないベジドッグ専門の「スウェーデンビストロ」、7階には都心型店舗で初となる「スウェーデンレストラン」が入っています。1Fのスウェーデンビストロでは、世界共通のベジドッグメニューに加えIKEA渋谷限定のベジドッグを販売。7Fのスウェーデンレストランでも、同じく世界共通のメニューと併せてIKEA渋谷限定のメニューを販売しています。こちらのエリアでは、平日のお昼時にスーツを着て来店される方もいらっしゃるなど都心型店舗ならではの利用の仕方をされています。

そして、IKEA新宿では、量り売りデリの「スウェーデン バイツ」をお楽しみいただけます。ご自宅のほか、新宿御苑など近隣の場所に持ってお出かけされる方や、平日であればお昼ご飯を買いに来られる方もいらっしゃり、さまざまなシーンでご利用いただいています。
上記のような形で、コロナ禍にプロジェクトがスタートしたIKEA新宿を中心に消費者の方の購買行動や食事スタイル変化に合わせてフードのモジュールを提供し、お客さまに満足いただいております。「イケアというブランドのエントリーポイントになる」こと、つまりイケアを知るきっかけになることを都心型店舗の役割としているため、フードでも関心をお持ちいただき普段から足を運んでいただくことで、家具を買うタイミングで想起いただけることを目指しています。
よりお客さまが買い物しやすい環境を。IKEA渋谷がリニューアル
ーー今回、2022年4月にIKEA渋谷の一部をリニューアルしたとのことですが、リニューアルをした意図はなんでしょうか?
青木:IKEA渋谷はオープン直後から、ビジネス用途でのお客さまからのお問い合わせが数多くありました。また、渋谷のマーケットを考えたときに、渋谷は街の再開発が進んでいますし、今後新しいオフィスも増えるだろうという意見もありました。そうしたお客さまがよりシームレスにお買い物できる環境や、アドバイスしやすい環境を整えるため、今回のリニューアルに至りました。
さらに、都心型店舗をオープンしてから約2年の間で、ビジネス用途のお客さまと個人用途のお客さまのニーズが近しくなってきたのもリニューアルに至った理由のひとつです。例えば、オフィスの家具を探す際にプロフェッショナルユースの商品ではなく、一般家庭向けの商品を求めるお客さまが増加したことや、それとは反対に、在宅勤務をされる方がプロフェッショナル向けの商品を選ぶ機会が増え、ビジネスと個人用途の垣根を超えたニーズが高まっていることがわかってきたんです。

ーーリニューアルポイントを階層ごとに教えていただけますか。
青木:全7フロアのうち、今回大きな改装を行ったのは、2階の一部と5階・6階です。
まず、2階にはホームデコレーションエリアとサーキュラーショップを移設しました。特に今回、6階から2階に移したサーキュラーショップはイケアとして取り組んでいるサステナブルな活動の一環で、「家具に第二の人生を」というキャッチフレーズをもとに、展示品の家具やお客さまが未開封で返品した商品などをご紹介しています。
ーーなかでも今回、5階部分を大きくリニューアルされたのだとか。
青木:5階は3点ほどリニューアルを実施しています。
まずは、インテリアデザインサービスエリアを新設しました。もともと渋谷・道玄坂にあった法人のお客さま向けのプランニングスペース「IKEA for Business」を閉店し、IKEA渋谷の5階に集約することで、個人向け・法人向けのどちらにも対応できるように改装し、お客さまの利便性向上を実現しています。また、ビジネス用途のお客さまがゆっくりと商談できるスペースも設けました。
次に、パーツエリアのオープンです。これは、「その日に小物を購入したい」というニーズ、また「キッチンなどの商品群も合わせてみたい」というような、お客さまのお声がありました。そのことから、キッチンのようなフレームや引き出しの扉など、さまざまな種類から選んで組み合わせられる家具のパーツをご覧いただけるエリアの開設に至っています。今までパーツを取り揃えている都心型店舗がなかったのですが、今回のリニューアルをきっかけにIKEA渋谷でパーツの素材感やお色味などを実際に目で見て確認していただけるようになりました。
そして、キッチンの展示エリアもリニューアルしています。
プランニングスタジオと少し重なる部分はありますが、リニューアル以前の都心型店舗にはシステムキッチンの展示エリアがなかったんですね。それを今回、パーツエリアと共にフルシステムのキッチンを設置し、実際のサイズ感を体験していただけるようになりました。
ーー6階部分はどう変化したのでしょうか。
青木:リビングルームやベッドルーム、収納アイテムなど、大型の家具類をまとめて見ることができるように変化しました。もともと6階にあったサーキュラーショップを2階に移設することでスペースが広がったので、ソファとクッション、ラグなどのテキスタイルのフロアを隣同士にするなどし、部屋のコーディネーションをイメージしやすい配置に変更しています。
これらのリニューアルを実施することで、よりお買い物しやすいIKEA渋谷に生まれ変わったのではないかと考えております。
都心型店舗は今後も進化し続ける店舗でありたい
ーー都心型店舗がオープンしたことで、都心に住む方はイケアに足を運びやすくなりましたが、利便性という点においてイケア・ジャパンとして取り組んでいることはありますか。
青木:お客さまの好む方法でお買い物ができるよう、オムニチャネル化を推進しています。例えば、それぞれの都心型店舗ではそれぞれのお客さま層に合うような商品を取り揃えているものの、どうしても大型店舗と比べて売り場面積に違いがあるため、全9500のアイテム全てを扱うことが出来ません。そのため、大型店舗に足を運ばずとも、都心型店舗にはない商品の注文書を作ることで後日配送の手続きやIKEAオンラインストア、IKEAアプリで購入ができるように整えております。特に家具などの大きな買い物は、その場では購入せずに一度帰ってご検討いただいた後に商品を購入される方も多く、店舗外からでも注文することが出来るIKEAオンラインストアは好評をいただいております。そのほかにも、カスタマーサポートセンターではお電話にて注文を承り、商品をご用意する事も可能です。
このような形で、イケアの持っているさまざまな販売チャネルをすべてのお客さまがご利用いただけます。
ーーなかでも、最近大型店舗・都心型店舗の両方で導入されたサービスがあるそうですね。
青木:イケア専用アプリ内にある機能のひとつ「IKEA Scan & Pay」です。この機能は、店舗でのお会計時間を短縮できるのが特徴でお客さまのお買い物の利便性を追及したサービスです。

店舗に来店された際、まずはイケアのブルーバッグを手に取っていただき、購入したい商品のバーコードを読み取ってからブルーバッグに入れていきます。購入商品すべてのバーコードをスキャンしたあと、アプリ内で[購入]に進むとQRコードが表示されます。あとは、そのQRコードをレジで読み取っていただきお支払いいただくことで、お買い物は完結します。

こうすることで、セルフレジを利用する場合でも、コワーカーがお会計する場合でも、商品のバーコードをひとつずつ読み取り、バッグに移し替えるという手間がなくなります。
どの販売チャネルでも同じレベルでの利便性を提供するために導入した、サービスのひとつです。
ーーイケアの都心型店舗の今後の展望を教えてください。
青木:2022年5月1日はIKEA新宿が1周年、同年6月にはIKEA原宿が2周年を迎えます。
IKEA原宿、IKEA渋谷、IKEA新宿の各店舗にある商品はコワーカーがインカムにて在庫を確認でき、3店舗で連携を取ることが可能です。今後は、より連携を深めていき、お客さまがお買い物しやすい環境や商品展開が常に進化し続ける店舗でありたいと考えています。
また、都心部はアクセスが良く、流行に敏感な方も多く集まるので、都心型店舗をイケアの情報の発信源としても活用していきたいと考えております。
イケア・ジャパンは「より快適な毎日を、より多くの方々に」をビジョンに掲げており、それはどの場所でも変わりません。都心型店舗のオープンをきっかけに、イケアを体験したり知っていただけたりすることにより、快適な毎日を作るお手伝いができるのではないかと考えています。
今後もさまざまな方の人生のステージに寄り添ったアイデアを提供できるよう、お客さまのニーズを捉え、より便利なお買い物のために必要なサービスやシステムを検討し続けたいと思っています。

■イケアのサステナビリティについて
地球は、私たちのただひとつの「家」です。イケアでは、人にも地球にもポジティブな影響を生み出したいと考え、「健康的でサステナブルな暮らし」、「サーキュラー&クライメートポジティブ」、「公平性と平等性」といった、3つの主要な分野に取り組んでいます。
それはイケアの取り組みだけでなく、商品の展示一つをとっても言えることで、店舗の至るところに散りばめられています。
都心型店舗にお越しになるお客さまは、サステナビリティに関心の高い方も多いため、イケアでは環境に配慮した暮らしのインスピレーションを与えるような、商品やルームセット、サービスを行っています。例えば、竹を使用した照明や家具の販売、サステナブルな暮らしを提案したルームセットの展示、プラントベースのフードメニューの販売などを行っています。ほかにも、店舗には「mymizu(マイミズ)」という無料給水スポットがあり、マイボトルをお持ちいただければどなたでもご自由にお使いいただけます。さらには、循環型社会を目指し、開店準備の段階で生じた新中古品、また商品の入れ替えで使用しなくなった展示品などをアウトレット価格で販売するサーキュラーショップもあります。このように、イケアでは、より多くの人々が、限りある地球の資源を大切にしつつ、より快適な暮らしを実現できるソリューションを提案しています。
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