プロデュースしたベーカリーは国内外で350店舗を超えますが、実は直営店は岡山の2店舗のほかにはアメリカに2店舗のみ。
なぜアメリカなのか? なぜ次はハワイなのか?
それには、代表の河上が渡米時に確信した「日本のパン」への揺るぎないニーズと、コロナ禍の中でさらに高まった「日本のパンがアメリカで受け入れられ、愛されている」という実感が背景にあります。今回は、その経緯を代表の河上とともに振り返りながら「Okayama Kobo Bakery & Cafe」ハワイ出店までのストーリーをお伝えします。
アメリカでのベーカリー開業支援のためには、まず直営店舗が必要だった
時をさかのぼること数年。当時、おかやま工房では「リエゾンプロジェクト」として国内ですでに50店舗以上のベーカリー開業支援を行い、セミナーや研修を開催してきました。海外からの依頼も年々増え、東南アジアやインドなど各国の現地に飛んでは開業支援を行っていました。


(研修の様子)
2013年のこと、アメリカ・ロサンゼルスの飲食店から、新規にベーカリー開業を考えているという相談が相次いだため、代表の河上が初めて渡米します。
その相談はあいにく開業には結びつきませんでしたが、河上はそのとき「アメリカには、おかやま工房のパンや日本のパンを求める人が想像以上にたくさんいるのではないか」と感じ「アメリカに開業支援向けの研修センターを作りたい」という構想を抱きます。
そこで、兵庫県に本社がある厨房機器メーカーのアメリカ現地法人社長に相談したところ、「使っていない倉庫を改装して研修センターにしてみては」と快諾。現地スタッフとともに、おもに現地の日本人を対象に研修を行い、アメリカでの開業支援をスタートさせました。
アメリカでの開業支援が進まない…その理由は?
しかし、せっかく開業支援をはじめたものの、期待に反しなかなかベーカリー開業にまでいたらない日々が続きます。
その理由は…?と考えてみると、一番に思いついたのが以下でした。
「日本での開業支援のメソッドを、そのままアメリカで行って、本当にパンが売れるのか」という部分に、実例も確証もなかったのです。
開業を目指す人たちからの質問に対しても、想像で答える形になってしまい、安心して開業できるよう背中を押せていなかったのかもしれない……。
そこで試しにアメリカで日本流のパンを作って売れているモデル店舗がないか探してみたところ、その時点でも皆無といっていい状態でした。
「それなら、まずはアメリカにおかやま工房の直営店を作り、そこでの成功体験を開業支援に応用できる体制をつくろう!」
と河上は思いました。
これがアメリカにおける直営店「Okayama Kobo Bakery & Cafe」誕生のきっかけとなります。
カリフォルニアに2店舗がオープン。売り上げが伸びず苦戦するも、「塩バターロール」がヒット
そして2018年。全米で1号店となる「Okayama Kobo Bakery & Cafe」アナハイム店がオープンします。

(「Okayama Kobo Bakery & Cafe」アナハイム店)
2022年には2号店として日系の「都ホテルロサンゼルス」内の1階に「Okayama Kobo Bakery & Cafe」ダウンタウンLA店を開業しました。

(「Okayama Kobo Bakery & Cafe」ダウンタウンLA店)
しかし、もともと日本人や日系の飲食店がが少ないアナハイムでは、週末になると小麦の香り高い「日本のパン」を求めて遠方からも車で買いに来てくれるお客さんが増えてきたものの、認知度の低さから平日の売上が伸びず1年目は赤字に。
日本で大人気だった看板商品の塩バターロールも、塩分=不健康というイメージの強いアメリカでは苦戦し、現地のスタッフからは「もうやめようか…」という声も出ていました。
しかし、河上の「塩バターロールは焼きたてが本当においしい。焼きたてを配ってみては」というアイデアを試してみたところ、なんとクチコミやSNSで評判が広がり、爆発的に売れるようになったのです。

(焼きたての”塩バターロール”)
コロナ禍の逆境を糧に広がった「Okayama Kobo Bakery & Cafe」のパンの評判
こうして「Okayama Kobo Bakery & Cafe」は2年目からは無事黒字へと転じたものの、今度は2020年の新型コロナ流行により存続の危機に陥ります。
アメリカでは厳格なロックダウンが敷かれたため、お客さんがパンを買いに来ることができません。
しかし何か方法はないものか……と考えた結果、地域の中華料理店など日系経営の飲食店と連携し、Webで注文を受けたパンをそれぞれの飲食店へ配達して並べ、受け取りに来てもらう仕組みを構築しました。

(アナハイム店Instagramより)
すると、パンを受け取りにきたお客さんがSNSなどでおかやま工房のパンを「おいしい」と発信。なんと、カリフォルニア中の日系店から「うちにもおかやま工房のパンを置いてくれ」とオファーが殺到することになったのです。
アメリカでの直営店オープンまでには、いくつもの壁を乗り越える必要が…
アメリカでベーカリーを開業し、日本のパンを焼きたい・売りたい・広めたいと目指す人たちのために、モデルケースとなるべくスタートした直営店舗「Okayama Kobo Bakery & Cafe」ですが、実現までにはさまざまな課題がありました。
まず、日本と同じパンを売るといっても、日本人とは体格も食の嗜好も大きく異なるアメリカ人に向けてサイズや味・素材は同じでいいのか?という部分が論点となりました。
アメリカでは甘みが強く硬いパンが好まれる傾向があり、日本のような小麦の風味を生かしたシンプルなパンや、いろいろな具の入った惣菜パンが受け入れられるのかという懸念があったのです。

(日本の店舗で人気No.1の揚げたてカレーパン)
実は、当初は、味も店名もアメリカ風にして現地のベーカリーに合わせてみてはどうだろうという意見も出ました。実際に売れているものに合わせるのは基本的な戦略だといえます。
しかし、それに対して思わぬところから反対の声が上がったのです。
それは、のちの全米1号店となるアナハイム店の家主さんからでした。
「自分は歴史あるおかやま工房のパンが好きだから、直営店のオープンを応援している。味をアメリカ風にしてしまったり、おかやま工房と名乗らないのなら店舗は貸さない!」
それを聞いて河上はじめスタッフ一同は「やはり日本のパンを愛してくれる人たちがアメリカにも確実にいる」と確信しました。

(アメリカの店舗でも日本と同じ味わいの焼きたて無添加生地のパンを)
やはり日本のままのパンでいこう、素材には北海道産小麦をなんとしても使おう!と決め、FDA(アメリカ食品医薬品局)に輸入の許可を取るための手続きに奔走しました。
パン作りの機械も日本で使用しているものを使いたかったのですが、アメリカは国の政策により海外製品の輸入制限が厳しく、10種類ほどの機械をそれぞれ日本円で300万円もの費用をかけて認可を受けなくてはいけないのです。また審査を受けてから認可されるまでに半年~1年以上かかることもザラだといいます。

(アメリカ製のオーブン)
このような事情で、機械を日本から運ぶのは断念し、アメリカのマシンを使うことに決めましたが、大変なのはマニュアル作りです。
熟練のパン職人ならどんな機械でも長年の感覚で同じ状態の生地を作ることができますが、おかやま工房のアメリカ出店の先には「現地で未経験からベーカリー開業をめざす人たちがおいしいパンを安定して作れるようになる」という目標があります。
そのためにはやはり丁寧なマニュアル作りは欠かせません。
開業支援で配布するパン作りのマニュアルは、すべて日本の機械を使う前提で書かれたもの。

(何種類もある生地それぞれに、専用のレシピとマニュアルを再構築)
アメリカのマシンを使ってもちゃんと「おかやま工房」のパンができあがるよう、ゼロからレシピを作り直し、素材の分量からオペレーションまで何度も何度も試作を繰り返してようやく納得のいくマニュアルが完成しました。
2023年秋、全米で3店舗目の「Okayama Kobo Bakery & Cafe」ハワイ店出店へ
アメリカ本土と比べて、圧倒的に日系人や日本人在住者、そして日本人旅行客の多いハワイ。
しかしそのハワイでも、やはり多くのベーカリーでは甘みの強いパンを取り扱っており、国産小麦100%で日本と同じ味わいの焼きたてパンが食べられるベーカリーはほとんどないといいます。
あるとき、アナハイム店の店長の友人夫妻(ハワイ在住)がカリフォルニアを訪れ、Okayama Kobo Bakery & Cafeのパンを食べたときに「こんなにおいしいパンがアメリカで作れるなんて信じられない!」と驚き、ぜひハワイにも出店しないかという話になりました。
開店予定地のカカアコは、高層コンドミニアムの建設ラッシュで日本人を含めたハイクラスの居住者が増えており、複合施設「SALT(ソルト)」やオーガニックスーパー「 WHOLE FOODS(ホールフーズ)」、倉庫街の壁に描かれたカラフルなウォールアート(壁画)など、日本人観光客にもトップクラスの人気を誇るエリアです。

(ハワイ・オアフ島カカアコの出店予定地/2023年6月)
カリフォルニアの1・2号店と同じく、自社プライベートブランドの北海道産小麦と瀬戸内産小麦を100%使用し、保存料やイーストフード・乳化剤などの添加物を一切加えない手づくりパンを店内のオープンキッチンで毎日焼き上げ、日本と変わらぬ味の焼きたてパンを毎日50種類提供予定です。
ハワイ店オリジナルの、地元ハワイのロースターでパンに合わせて焙煎したブレンドコーヒーにも期待が集まります。
ハワイ店出店についてのプレスリリースはこちら。
焼きたてパン「おかやま工房」が、2023年秋、ハワイに全米で3店舗目となるベーカリーカフェを開店!PR TIMES×
「おかやま工房リエゾン」について
株式会社おかやま工房では、岡山県内に「焼きたてパン広場リエゾン」と「おかやま工房 国富店」を運営。どちらも素材や「3たて(焼きたて、揚げたて、作りたて)」にこだわった無添加生地のパンが地元で愛されている人気店です。

(焼きたてパン広場リエゾン/岡山市北区田中)

(焼きたてパン広場リエゾン/岡山市中区国富)
国内外で「パン屋さんをはじめたい」という個人や企業に対し、パンづくりから店舗経営まで一貫したコンサルティングや技術指導を行う「リエゾンプロジェクト」を展開し、これまでに約300店舗以上の開業支援を行っています。
▼おかやま工房ホームページ
https://okayamakobo.com/shop/
▼Okayama Kobo Bakery & Cafe USA(アメリカ)ホームページ
https://www.okayamakobousa.com/
▼リエゾンプロジェクトの詳細について
https://okayamakobo.com/liaisonproject/
今後もおかやま工房では、大切な家族が安心して食べられるパンを日本や世界に向け発信・提供していきます。