高遮音性設計により周囲の騒音を最大37dBまでカットする、SHUREイヤホンのエントリーモデルSE215が巷で話題だ。 SHUREといえば、マイクロホンで知られているメーカーだが、90年代後半に開発されたプロ用のインイヤーモニターシステムを、多くのミュージシャンが「イヤモニ」としてステージで利用するようになり、 そのままオフでも装着している様子が口コミなどで拡散されたことによって、ファンや一般ユーザーの間で広まっていったという。

プロのステージからカジュアルなリスニングまで、その音質と高遮音性に信頼が寄せられているのは、そうした経緯があるからだろう。そこで今回、ライブのステージやレコーディング・ステージなどで、SHURE製品を愛用しているTAARAAAMYYY(Tempalay)、そして大井一彌(DATS / yahyel)の3人に、SE215とSE112を試してもらいながら、イヤホンへのこだわり、SHUREへの思いなどを語ってもらった。なお後半では、3人に事前に作ってもらった「SHURE SE215で聴きたい楽曲プレイリスト」を発表してもらい、その聴き心地についても聞いた。


InterviewTAAR×AAAMYYY(Tempalay)×大井一彌(DATS / yahyel)

SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり

──みなさんが、初めてイヤホンを使ったのはいつですか?大井一彌(以下、大井) 僕は、親が持っていたMDウォークマンを、付属のイヤホンで聴いたのが最初ですね。AAAMYYY 私もMDウォークマン!最初はイヤホンていうか、耳にパチって貼り付けるクリップ型のやつだったと思う。TAAR ああ、あったね。懐かしい! 俺はウォークマンではなくラジカセでした。ずっと音楽はスピーカーで聴いてたんですけど、あるときラジカセ本体の裏側に、ジャックを挿し込める穴があることに気づいて。そこにイヤホンを挿して聴いた時に「なんだこの立体感は!?」ってなったのを覚えています。それが原体験ですね。その時のイヤホンは、今とは比べ物にならないくらいチャチかったのだけど(笑)。AAAMYYY 飛行機とかで配られるようなやつ?TAAR そうそう!(笑)大井 カナル型のイヤホンを初めて付けた時も衝撃でしたね。耳の中にめっちゃ入ってきて、最初はエグイくらい気持ち悪いんだけど、慣れるともう病み付きっていう感じでした。

TAAR 遮音性がちゃんとあって、音楽に没頭できるんだよね。

SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり

──ヘッドホンとイヤホンを、どのように使い分けてます?TAAR プライベートはイヤホンですね、どこにでもパッと持っていけるし。ヘッドホンはどちらかというと「モニタリング」というか、仕事をするときに使っています。大井 僕もそう。僕は2つ持っていて、ミックスダウンが終わったときにチェック用として使っているのが、アップル純正のやつ。おそらく、世界で一番使われているイヤホンだと思うので、これを「スタンダード」として音のバランスをチェックしています。で、普段リスニング用に使っているのは、聴いていて気分が上がるような、ちょっと音に色付けがされているモノを使ってますね。AAAMYYY 私もそんな感じです。──イヤホンを選ぶときは、どんなところをチェックしていますか?大井 僕は「一体感」ですかね。付けていることを忘れさせてくれるイヤホンを、リスニング用には求めています。TAAR やっぱり「遮音性」が気になりますね。ノイズキャンセリングがあまり好きじゃないので、ノイキャン機能を使わずにしっかり遮音してくれるイヤホンを求めています。

スピーカーやヘッドホンよりもイヤホンが優っている部分も、個人的にはそこだと思っているので。ノイズキャンセリングって、周囲の騒音をイヤホンやヘッドホンに付いているマイクで拾って、その周波数とは逆の位相をぶつけることで音を聞こえなくしているわけじゃないですか。でもそれって「作られたサイレント」というか。本当の意味での「遮音」は、密閉型のイヤホンにあると思っているんです。そういう意味でも、このSHUREのSE215は素晴らしいですね。

SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり

──ちなみに、皆さんのSHUREに対するイメージってどんなものですか?大井 SHUREといえばマイクで、僕らミュージシャンにとっては切っても切れない関係ですね。特にSHURE SM57、SM58は誰もが一度は必ず使っているマイクだと思うし。ボーカルはもちろん、僕はスネアにも大抵はSM57を立てている。TARR アンダーソン・パークとか、コーンの凹んだSM58でドラムを1ショットずつサンプリングして、それでこないだのアルバム(『OXNARD』)を作っていると聞きました。大井 世の中にいいマイクは沢山あるんですけど、中でもスタンダードな音が録れるマイクといえば、この2機種ですね。今までも、そしてこれからもスタンダードであり続けると思う。AAAMYYY 私も色んなマイクを試したんですけど、最初に手にしたSM58に戻りましたね。

曲によって、自分が聞かせたい声の周波数って変わるんですけど、それをどれもちゃんと拾ってくれるのがSM58。オールマイティなマイクという気がします。

SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり

──AAAMYYYさんはイヤモニにSHURE SE215を使っているそうですね。AAAMYYY そうなんですよ。色々探した中で、いちばんコスパが良くて、いちばん装着感がよくて遮音性も高かったんです。TAAR AAAMYYYちゃんのやつ、白いカラーリングがめっちゃ可愛いね。SHUREのイヤホンは、リスニングというよりプロユースというイメージがあります。耐久性の高さがその理由だと思うけど。SHUREは元々マイクも、ライブで使うということを想定して作られたものだし。──今回、大井さんとTAARさんは初めてSE215を試したそうですが、まずは率直な感想を聞かせてもらえますか?大井 さっきTAARくんも言っていたけど、今まで使ったどのイヤホンよりも密閉性が優れていました。例えば、歌モノで音数の少ない曲を聴くと、息遣いとかもクリアに聞こえてくるし、それが街の中で聴いていても聴こえるんですよ。それって凄いことだなって。

周囲の騒音から閉ざされた「無音状態」を、街中に持ち出せるということじゃないですか。──確かに。ちょっと世界が変わる感覚を味わえそうですね。TAAR そう、「音が鳴っていない瞬間」をどこでも楽しめる。僕はまず、SE215とSE215 Special Editionを両方ともワイヤードで聴き比べてみたんです。SE215の方がイヤモニに近いというか、ライブのステージにあるコロガシ(足元のモニタースピーカー)が、そのまま耳の中に入ってくる感じなんですよね。正しい音のバランスで再生してくれているというか。SE215 Special Editionは、それをタウンユースに寄せたという感じ。音楽を楽しむためのチューニングがされているのかなって思いました。「SE215が持っているドライバーのポテンシャルで、音楽をこんなに楽しむことが出来るんだよ?」っていうSHUREのメッセージというか、哲学を勝手に感じましたね(笑)。AAAMYYY 音質もとても良くて。アナログシンセでしか出せない音の太さや立体感も再現してくれる。
私は普段、ワイヤードのSE215をイヤモニとして使っているんですけど、今回Bluetoothを使ってみたら、その部分が全く変わっていなかったことにも驚きました。TAAR ケーブルが着脱可能なのも嬉しいですよね。今、色んなメーカーや、個人工房などで様々なケーブルが出ていますけど、その中から自分好みの組み合わせを見つける「リケーブル」の楽しみもあるじゃないですか。そもそも、Bluetoothのイヤホンで着脱式になっているって珍しいですよね、他に見当たらない。すげえな!って素直に思いましたし、オタク心をくすぐられました(笑)。──装着感はどうでしたか?AAAMYYY 私はよく髪をいじるので、普通のカナル式だと耳からスポッと抜けてしまうことが多いんですけど、耳にかけるタイプのSE215ならその心配がないですね。

SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり

大井 僕、こういう耳の穴だけじゃなくて、耳の穴周辺までユニットが密着するタイプのイヤホンを色々試してみたことがあるんですけど、形が合ってないと耳が痛くなっちゃうんですよね。でも、これはずっと着けていても全然痛くならないんです。「そうか、SHUREが想定した耳の形なんだな、俺は」と思って嬉しくなりました。(一同笑)

SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり
──耳の形にあったイヤホンを見つけるのも、なかなか難しいんですよね。大井 そう。耳の型を取って作るイヤホンもありますが、ものすごく高価じゃないですか。
こんなにリーズナブルでフィットしやすいのは嬉しいですね。AAAMYYY 私は耳の穴が小さいので、遮音パッドのサイズを大中小の中から選べるのも助かります。TAAR 耳に装着した時に、SHUREのロゴが外から見えるのもワクワクしますね。「俺、SHUREのイヤホンつけてるんだぜ?」っていうアピールポイントになる(笑)。だって、タウンユースでSHUREのイヤホンつけてる人を見かけたらグッとこない?AAAMYYY グッとくる!大井 「あいつ、本気で音楽聴いてるんだな」って思うよね。

SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり

──ちなみにSE112はいかがでしたか??TAAR 僕はすごく好きでした。最初のイヤホンとして、SE112を手にしたらかなりラッキーじゃないかな。1万円を切る価格でこのサウンドクオリティはちょっとびっくりです。バランスも良いし、しかも軽いんですよね。

SHURE 座談会|TAAR×AAAMYYY×大井一彌がイヤホンを通して語る「聴く」ことへのこだわり

──イヤパッドも、SE215よりは密閉性が低い分、街の中でも程よく音が入ってくるから「安心」というのもありますよね。さて今回、みなさんには「SE215で聴きたい曲プレイリスト」を作成してもらいました。大井 僕はさっき、外に「無音空間」を持ち出せるって言いましたけど、そんなSE215だからこそ楽しめる楽曲を中心に組んでみました。曲を聴き進むにつれて、だんだんアンサンブルが厚くなっていくように並べているんですけど、まずはMichael Van Krückerというドイツのピアニストによる独奏です。音の隙間を活かしたような演奏で、その空気感が伝わってくる。2曲目は、映画『メッセージ』のサントラ。Jóhann Jóhannssonが手がけているんですけど、この曲は声の定位が立体的で、雑踏の中で景色を俯瞰しながら聴いているととても気持ちいいんです。3曲目は、フィンランドの男女混成アカペラ・グループ。この曲も、SE215で聴きながら歩いていると、自分の足音も聞こえないくらい遮音性が高いので、なんだか宙に浮いているような気分を味わえます。Clannadはアイルランドのエキゾチックな音楽なんですが、パキッとしたサウンドがリファレンスに向いていて。ライブハウスでよくPAさんが、ドナルド・フェイゲンの“The Nightfly”を流すじゃないですか(笑)。あんな感じで、定位感やリバーブ感の確認にぴったりなんですよ。Luca Citoliはノイズミュージックで、どれだけヤバイ音が出せるか確かめようと思って入れてみました(笑)。どの曲を聴いても、ちゃんとその世界に没入できるイヤホンだと思いましたね。AAAMYYY 私のプレイリストは、普段聴いているボーカリストの曲を中心に作成しました。Sabrina Claudioは、彼女の息遣いや、アコースティックな楽器のニュアンスがどう聴こえるか、いつもイヤホンを選ぶ時にチェック用として聴いているんです。次のブラッド・オレンジは、「自分が好きな曲を聴きたい」と思って入れたんですけど、これもバッチリ(笑)。JILは、パッドシンセの厚みみたいなものが、どう再現されるかを確かめたくて。アナログシンセの「うねり」みたいなものが、臨場感たっぷりに伝わってきましたね。ロイル・カーナーは、音数も少なくて家の中でセッションしているような雰囲気の曲なんですけど、その環境音や、遠くで歌っている人の距離感などがちゃんと聴こえました。ZHUとTame Impalaのコラボ曲は、私の好きな低音感がしっかり再現されていると思いましたね。

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TAAR 僕のプレイリストは「リファレンス」がテーマ。SE215でどう聴こえるか?を確かめたくて選んだ曲なので、ジャンルとかバラバラなんですけど……。1曲目は自分の手がけた楽曲ですが、いちばん聴き慣れているのでリファレンスとしては最適かなと思って。マスタリングが砂原(良徳)さんで、音にもめちゃめちゃこだわったんですけど満足な音質でした。次のコーネリアスも、とても緻密な音作りである上に「無音」も存在していて、ある意味「イヤホン~ヘッドホン泣かせ」な楽曲だと思うんですけど(笑)、聴いていてとても心地よかったですね。特にボーカルの再現力が素晴らしくて、SE215は歌モノに向いているなと思いました。青木孝允さんの楽曲は、特に高域のノイズが左右にパンニングするなど、イヤホンで聴くとより楽しめる音像で。SE215は中高域の立体感もしっかりと再現してくれているので、聴いていてとても気持ちよかったです。ディスクロージャーも、左右の広がりが凄いんですよ。その分、ボーカルが目の前で歌っている感じも伝わってきて。これ、どうやってミックスしているのか未だに謎ですね。ここまでの4曲は、高域から低域まで満遍なく音が鳴っていて、左右の広がりも奥行きもしっかりあるんですけど、最近のちょっとローファイ系のヒップホップなどよりも、こういうイヤホンの真価が試される音像でこそSE215は威力を発揮するんだなと思いましたね。──なるほど。ちなみに僕はYMOの『SOLID STATE SURVIVOR』を聴きながらここまで来たのですが、アナログシンセの厚みや、高密度の音像などがめちゃくちゃにクリアに再現されていて感動しました。AAAMYYY 確かに、YMOを聴くのにめっちゃ良さそう!TAAR で、最後のトロ・イ・モアは「自分が好きな曲」ということで入れました(笑)。アルバムの中で、この曲がいちばんローファイ的なアプローチをしているんですけど、これはこれで気持ちよかったですね。──これだけ高音質なイヤホンが普及することで、皆さんが作っている音楽も変わってくると思いますか?大井 そう思います。みんなのプレイリストも、結構ハイファイな音作りがされているものを選んでいるなと思って。例えば、レコーディングの時に本物のアナログシンセを使ったのか、ソフトシンセを使ったのかは、チープなイヤホンだと聴き分けは難しい。でも、これだけいいイヤホンだったら分かると思うんですよ。リスナーの皆さんが、そういう環境で僕らの音楽を聴いてくれるようになったら、ますます音作りにこだわりたいと思うし。AAAMYYY 私もミュージシャンとして、すべての音に気持ちを込めて作品を作っているし、それをどうやって届けたらいいのかをいつも考えているので、リスナーの方たちと、私たちの間にあるツールはメチャクチャ大事だと思います。TAAR 音楽って「主役」にもなれば「BGM」にもなると思っていて、イヤホンってその両方を楽しめるツールだと思うんですよ。ヘッドホンだとどうしても音楽が主役になるし、スピーカーも、ちゃんと聞こうと思ったら向き合わなければならない。このSE215は、遮音性が高いゆえに「主役」にもなるし、イヤホンだからこそ、何か他のことをしながら聞き流すことも出来る。自分次第で色んな音楽の楽しみ方を選べるのが、他のサウンドシステムにはないSE215の魅力だと思います。

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Text by Takanori KurodaPhoto by Ryutaro Izaki

INFORMATIONSEイヤホンシリーズ

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SE215ワイヤードイヤホン:Clear /SE215-CL-A

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SE215 iOS/Android対応イヤホン:Translucent Black / SE215-K-UNI1-A

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SE215 SPECIAL EDITION ワイヤレスイヤホン:Translucent Blue / SE215SPE-B-BT1-A

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SE215 SPECIAL EDITIONワイヤレスイヤホン:White / SE215SPE-W-BT1-A

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SE112ワイヤレスイヤホン:Black / SE112-K-BT1-A

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