エンドロールを眺めながら、率直に「これでいい!これがいい!」と思ったことをまずは伝えたい。 マーベル・スタジオが贈る2025年の最新作であり、1961年にマーベルの“原点”とも言えるコミックで初登場したヒーローたちが、マーベル・シネマティック・ユニバース( MCU)の世界で初めて描かれた『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』。
本作はマーベルを愛する者には「新たな出発」であり、初見の人にはタイトル通りの「最初の一歩」として申し分ないと言えるだろう。

マーベルの礎を築いた4人のヒーローチーム「家族」を取り巻く喜怒哀楽の人間ドラマ

宇宙でのミッション中に起きたアクシデントにより、特殊能力を得た4人=ファンタスティック4の物語はこれまでも何度か映像化されてきたが、ファンタスティック4は前書きでも触れたように、マーベル・コミックスの礎を築いた作品であることから、原作ファンたちの期待値も高かったことだろう。スタン・リーとジャック・カービーによって創造された個性の異なる4人のヒーローは、「ケンカもするし、悩みもある」リアルな人間として描かれた初のヒーローチームとも言え、兄妹・夫婦という血縁関係を含むチーム構成は、それまでのマーベルにはない革新だった。そして今回の『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』ではその血縁関係、つまり「家族」に焦点が当てられた。本作の軸となったのは、天才科学者でファンタスティック4のリーダーでもあるリード・リチャーズ(ミスター・ファンタスティック)と、リードのパートナーであるスー・ストーム(インビジブル・ウーマン)の夫婦関係。特殊能力を得た4人が世界を守る一方で、スーの“妊娠”というパーソナルな出来事が物語のベースに。そしてリードとスーの間に待望の“子”が誕生することで、ヒーローの「家族」を取り巻く喜怒哀楽の人間ドラマが展開される。
【最速レビュー:ファンタスティック4:ファースト・ステップ】 レトロな未来と家族の絆。マーベルとヒーローの新たな旅立ち
これまでのMCU作品の中でも、「家族」がキーワードとなった作品は少なからずあった。ただし、ここまで“子”がダイレクトに地球の命運に関わるケースは珍しい。マーベルのヒーローたちは各々が凄まじいパワーを持つが、苦手となる場面や手に負えないヴィランも存在する。ただしそれは能力の相性や強度的な観点であり、本当の意味での弱点は「家族」であるというリアルを、本作は突きつける。 ただし、一方で注目したいのは、ヒーローにとって「家族」は強点にもなりえるということ。その対比として、リード(父)とスー(母)が描かれているように感じ、筆者はあえてリードを弱点となった側に置こうと思う。
それほど母となったスーの、火事場の馬鹿力と呼ぶのは失礼なほどの、守るべき者のための発揮した真のパワーをぜひ目撃してほしい。

世界観は“1960年代のレトロ・フューチャー”個性の異なるヒーローと最強クラスのヴィラン

本作の大きな特徴として、“1960年代のレトロ・フューチャー”という、懐かしさを感じさせる世界観で物語が描かれている点にも着目したい。NASAを思わせる宇宙服、アナログ感のあるガジェット、ヴィンテージ感あるポスターなど、どこかアナログで未来への希望に溢れた“古き良きSF”の息吹が、画面の端々から漂ってくる。さらに映像面では、それらの要素に現代的なVFXが違和感なく融合。美術・衣装・音楽も含めて、ロマンチックでノスタルジックな雰囲気は、2025年の今においては新鮮に感じるとともに、原作のテイストを忠実に再現しているように感じた。続いて、登場キャラクターについて。先ほども紹介した頭脳明晰なリードや冷静沈着なスーに加え、情熱的なジョニー・ストーム(ヒューマン・トーチ)と無骨で優しいベン・グリム(ザ・シング)という4人の異なる個性がしっかりと引き立ち、チームとしてのバランス感も心地良い。彼らがただのヒーローではなく、ひとつの家族であるということが、たわいない会話からもすんなり伝わってくる。4人それぞれの良さはあったが、個人的にジョニーの「普段はおちゃらけているけどやるときはやる」キャラが、どこかトム・ホランド演じるピーター(スパイダーマン)に重なった。
【最速レビュー:ファンタスティック4:ファースト・ステップ】 レトロな未来と家族の絆。マーベルとヒーローの新たな旅立ち
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そしてマーベル作品と言えば、ヒーローに立ちはだかるヴィラン(悪役)。本作では、惑星を喰らう“宇宙神”と呼ばれるギャラクタスと、その使者として全身銀色&白銀のボードで宇宙を駆け巡るシルバーサーファーが登場する。原作コミックにおいてもとりわけ人気の高い、最強クラスのヴィランの待望のMCUデビューということで、果たしてどのような描かれ方をするのかと、胸を高鳴らせたマーベルファンはきっと多いはず。誤解を恐れずものすごく端的に言うのなら、ギャラクタスはヴィランらしいヴィランであり、どこか「面白かった」。
そしてシルバーサーファーは、静謐な美しさと悲哀を漂わせたパフォーマンスで、とにかく「格好よかった(演じたジュリア・ガーナーに拍手)」。その真意は、スクリーンで躍動する両者の姿を見てもらえればきっと伝わるだろう。
【最速レビュー:ファンタスティック4:ファースト・ステップ】 レトロな未来と家族の絆。マーベルとヒーローの新たな旅立ち
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MCUという壮大な世界観における“点”と“線”等身大の4人のヒーローとの再会は近い

ここからは、本作がMCUという作品群にとって、どのような意味を持つのかという点に触れていく。まずマーベルを愛する者はいつしかひとつひとつの作品を、ある意味で「俯瞰して観ている」自分に気付く瞬間があるのではないだろうか。そしてその自分にとって各作品は、MCUの壮大な世界観を構成する”点“として存在し、それらが繋がる”線“としてMCUを観ているはずだ。そしてもっとコアなファンは、さらなるウンチクを持って”面“となるMCUを楽しんでいるのだろうが、それゆえに「初見だとついていけない」的なジレンマが、少なからず存在しているのは否めない。しかし! その解釈を踏まえたうえで『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は、”点“として初見でも存分に楽しめる作品だと、声を大にして言いたい。地球と宇宙、ヒーローとヴィランというマーベルの終わりなき対立を、壮大なスケールのバトル要素も随所に盛り込みつつ、家族を巡る人間模様も丁寧に描き、MCUでは短いとさえ感じる1時間 55分にまとめている。もちろん作品の中には、MCUの作品群を追い続けている人なら気付く描写や、ニヤリとする小ネタも挟み込まれている。ただしそれを知らなくても(知っていればより楽しめるのは重々承知で)楽しめる本筋の展開が、明快かつ感情移入する形で進んでいく。派手なアクションやシリーズ間のクロスオーバーを期待している往年のファンにとっては、やや穏やかなストーリーに感じるかもしれない。それでもヒーロー映画の枠にとらわれずに、「家族のかたち」や「新たな旅立ちの不安と希望」に向き合った物語は、これまでのMCU作品とは一線を画す力強い一歩となっている。そして本作は、2026年公開予定の『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に連なる重要作として位置付けられている。
『ドゥームズデイ』とは、ロバート・ダウニー・Jr.が悪の科学者ドクター・ドゥームとしてMCUに電撃復帰し、『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』のルッソ兄弟が再びメガホンを取るという、近年では最高の盛り上がりを見せること必至の超話題作だ。そのオールスター作品に、存在感を示した等身大の4人のヒーローたちがいないわけはないだろう。MCU新章の幕開けを担った『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』。新たな一歩が、あの4人のヒーローで良かったと純粋に思う。それは特殊能力に翻弄されながらも、人としての絆を確かめ合う姿に少なからず共感を覚えたからであり、なおかつ彼らの人間味に自然と惹かれている自分がいるからだろう。ファンタスティック4は、「特別な人間がヒーローなのではない」ということを改めて教えてくれる。不安も後悔も乗り越えた先に、ヒーローは存在した。『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降の、圧倒的なヒーローを求める世界。その中で、MCUにまつわる固定観念や、さらなる強大なヴィランも、ザ・シングの「It's clobberin' time!(正義の鉄拳タイムだ!)」ばりにぶち壊してくれることを、ファンタスティック4に期待したい。
【最速レビュー:ファンタスティック4:ファースト・ステップ】 レトロな未来と家族の絆。マーベルとヒーローの新たな旅立ち

Text byRASCAL(NaNo.works)

INFORMATION

【最速レビュー:ファンタスティック4:ファースト・ステップ】 レトロな未来と家族の絆。マーベルとヒーローの新たな旅立ち

ファンタスティック4:ファースト・ステップ

2025年7月25日(金)日米同時公開監督:マット・シャクマン(『ワンダヴィジョン』)キャスト:ペドロ・パスカル(『マンダロリアン』、『キングスマン:ゴールデン・サークル』)、ヴァネッサ・カービー(「ミッション:インポッシブル」シリーズ、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』)、ジョセフ・クイン(『ストレンジャー・シングス 未知の世界』、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』)、エボン・モス=バクラック(『パニッシャー』、『一流シェフのファミリーレストラン』)© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.公式サイトはこちら

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