今年4月に英国最高裁判所は、「女性の法的定義は生物学的性別に基づく」との判決を下した。
「2010年平等法における女性と性別という用語は、生物学的な女性と生物学的な性別を指す」として、女性の性別認定証明書を持つ人は「平等法における『女性』の定義に該当しない」とされた。
この判決を受けて、スコットランドサッカー協会やイングランドサッカー協会(FA)は、トランスジェンダー女性の女子サッカー出場を禁止することを決めている。
『BBC』によれば、FAに登録されているアマチュアのトランスジェンダー女性は28人いるそう。そのうちのひとりである28歳のビリー・スカイさんは、公式戦でプレーすることができなくなった。
「昇格に貢献したチームメイトたちと一緒にプレーできないのは本当に悲しい。あのクラブには多大なる献身を注いできたのに。
どうすればいいの?男子とプレーする?だって、そこでプレーするのは安全じゃないと感じている。それに、チームメイトの皆が私をここにいてほしいと言っている」
4年前にトランスジェンダーだと告白した彼女ビリーさんは、熱心なサッカーファンで、性転換直後はスポーツを諦めていたが、ロンドンのクラブに誘われたことで考えが一変したそう。
「(サッカーをプレーすることで)人生で初めて、自分がトランスジェンダーであること、他人と違ったり、変だとか考えない瞬間があった。ただここにいる他の誰かと同じように感じられた。
大好きなコミュニティを見つけた。それ以来、これが私の人生。私のアイデンティティは、まさにサッカーそのもの。
サッカーには本当に力を与えてくれるものがあると感じた。ピッチ上で自信が持てるようになり、人としても自信が持てるようになった。そして、そのストーリーを続ける機会の一部を失いたくない。
コーチや審判になる可能性もあったけれど、私にとってサッカーへの愛はそこではない。ピッチに出て、人々と繋がり、最後の瞬間まで100%の力を出し切ること」
一方で、トランスジェンダー女性の排除を支持する女子選手もいる。
ある匿名選手は「対戦したチームにトランスジェンダーの女性選手が2人いた。身体的な差異がピッチ上でどのように現れるかを、直接目の当たりにした。さらにひどいのは、私たちが声を上げようとすると、やめろと言われること。私はキャプテンとして、コーチから審判やFAに何か言えば、たとえ丁寧な言葉だとしても、おそらく罰せられるだろうと明言された。報復を恐れるあまり、私たちの多くが沈黙してしまう」とも語っていたそう。