
第104回天皇杯の決勝に辿り着いたのは関西の両チーム。
ガンバ大阪は久方ぶりのタイトルのために、ヴィッセル神戸は2冠の夢を現実にしていくために、その情熱をぶつけていく激闘かつ熱戦になることは間違いありません。
そして何よりも、クラブの格をさらに上げていくために、タイトル獲得は必須のものです。いま、手を伸ばせばすぐそこにそのタイトルがあります。
今回は関西ダービーとなった天皇杯決勝戦のプレビューを行っていこうと思いますので、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
今回の内容は以下になります。
・予想スターティングメンバー
・ガンバ大阪側から考えるプレビュー
・ヴィッセル神戸から考えるプレビュー
・まとめ
予想スターティングメンバー
ガンバ大阪側から考える展開
まずはガンバ大阪から見る試合の展望を考えていきます。
結論から述べると、この試合の重要な項目となるのは「試合のテンポ」だと考えます。
ヴィッセル神戸は試合のテンポを上げ、対戦相手の呼吸を浅くして上回っていくことで勝利を掴み取ることが多いチームです。だからこそ、ガンバ大阪は試合のテンポ感を管理していく必要があります。
いわゆる相手に付き合わないという表現です。そしてガンバ大阪はテンポを上げずともサッカーを展開することのできるチームです。今季はそれを証明しているシーズンです。
では試合のテンポを管理していくために何が必要なのでしょうか。それは相手を広げていく事だと思います。
ヴィッセル神戸の守備は442のセットから、424のハイプレスへの移行か442のミドル~ローブロックへの移行が基本形となっています。特に立ち上がりはこの424のプレスを広げることが最優先になると予想します。
ヴィッセル神戸は人をかなり意識してプレスをかけます。だからこそガンバの両サイドバック(以下SB)は幅を作りながら、ヴィッセルの1stプレスラインを広げていく必要性があるでしょう。
ガンバはヴィッセルの1stプレスラインを広げて選手間の距離を広げることが出来れば、いわゆる「ギャップ」や「門」を広げることができます。ここの出口を使うことが次の重要なファクターとなることは間違いありません。
ではここを使うために何が必要になってくるのか?それはゴールキーパー(以下GK)とセントラルハーフ(以下CH)の動きです。
前者の一森純の加入は大きくガンバ大阪の保持安定に尽力しています。また後者のポジションに入る鈴木徳真も同様です。
特に鈴木徳真は以下のように動くことが多く、この動きがヴィッセル神戸に後手を踏ませるものになるかもしれません。では以下の図をご覧ください。

先述したように、ヴィッセルは442や424と3ラインを形成しながら守備を行うチームです。
対するガンバ大阪。鈴木徳真が1stプレスラインの手前に降りることも行うかもしれませんが、アンカー(以下DMF)化する事が多くなると思います。
ヴィッセルの3ラインに対して、ガンバは4ラインを作ることで、呼吸場所を作り出します。門を広げてここに届け続けると、ガンバはヴィッセルのプレッシングを空転させる事ができます。
そうなってくると、ヴィッセルは鈴木徳真のところに人を当てる事が多くなりそうです。これは他のDMFを配置するチームやDMF化するチームに対しても行う事なので、同様にこのような修正は行いそうです。

さらに2トップのどちらかがプレスバックをする方法もあるのですが、可能な限りCHを引っ張り出したいところです。ここは鈴木徳真の手腕が問われそうです。
そしてここで必要になるのが宇佐美貴史や坂本一彩のさらに奥の出口の作り方と幅と深さの担保です。以下の図をご覧ください。

特にヴィッセルCHを動かした時にできるスペースはバックラインの手前となります。ここに入ってくるのがセンターフォワード(以下CF)かオフェンシブミッドフィルダー(以下OMF)になります。
宇佐美貴史も坂本一彩もここに入ってくるタイミングがとても上手く、さらにマーカーのベクトルを利用しながらボールをキープする事が存外に上手いです。ぜひとも注目して欲しい局面の一つです。
これで手前を使う準備ができます。しかしヴィッセルはここに対して組織で対応する術があります。それがセンターバック(以下CB)を押し出す方法です。
全体のプレスを徒労に終わらせないため、山川哲史やマテウス・トゥーレルは前に出てくることをビビりません。とてもすごい選手だなとヴィッセルの試合を見ていると毎度思います。
だからガンバ大阪はウイング(以下WG)が幅を作り、深さを取りに行くことが重要になります。
これを行っていくと、ヴィッセル最終ラインを引き下げるまでとは行かずとも、止めることはできます。そうなると手前が使えると思いますし、出てくるなら最終ラインの背後を使っていけると思います。
まずはこの方法を使って、ガンバ大阪はヴィッセル神戸のハイプレスから作り出すハイテンポの展開をいなしていきたいところです。
これらを使っていくことができれば、チャンネル(SBとCBの間のこと)攻略とそれに付随するCHのカバーを強制することによってバイタルエリアを使っていくことはできるのではないでしょうか?
守備で主導権を握るのではなく、ボールを持ちながら自分たちのペースで試合を進めていくことで、勝利により近づくと思います。
ヴィッセル神戸側から考える展開
では次はヴィッセル神戸側から考える展開です。
この試合の大きなテーマでもある試合のテンポ感。ヴィッセルはハイプレスからそのテンポ感を作り出したいところです。
しかし厄介なのがDMF化するであろう鈴木徳真。ここをどうやって抑えていくかがキーファクターです。
現にガンバ大阪の前進が頓挫する時は、彼が完全に消されてしまった時です。ヴィッセルもここをしっかりスカウティングをして臨むはずです。
ではどうやってそこを消すかを考えていこうと思います。
まず最初に選択するであろう方法がCFと前に出るインサイドハーフ(以下IH)で隠しながら、出入りで消していくパターンです。詳細は以下の図をご覧ください。

このように CBに出る人とDMFを消す方法で対応すると思います。
しかしガンバ大阪はGKの一森純を加えながらビルドアップや回避を作り出せるチームです。だからこれを行っていくと、必ずと言っていいほど どちらかのCBが開いてきます。
そうするとWGが外からCBに覗くことが多くなってしまいます。以下の図をご覧下さい。

このように玉突きでSBまで逃げられてしまうとハイリスク・ハイリターンのハイプレスになってしまいます。
だからヴィッセルはCH化する井手口陽介を前に出すことを行っていくと思います。彼の走力とプレスに出た時に相手に届くか否かの強度、プレスバックの力強さはリーグ屈指のもので、相棒に入る扇原貴宏のカバーのバランス感覚も抜群です。
さらに以下の図のように、組織としてもこのように守ることが多くなっています。

しっかりとサイドを圧縮しながら、ボールを回収することが多いのがヴィッセル神戸です。組織と個人の行き来が多くある中で、守備対応に入るCBが優位になる方法を持ち合わせています。
宇佐美貴史や坂本一彩への対応がハイプレスを完結できるか否かにかかってきそうです。そして何度も言うように、組織で、個人守備に入る瞬間を支えていきたいところです。
また攻撃局面です。実は少しずつ少しずつ保持を積み重ねていった今季のヴィッセル神戸。
SBを残しながら3バック化する方法に加えて、井手口陽介のヘルプによって、SBが広がる4枚の形も今季は見せています。この形を上手く駆使しながら、大迫勇也や宮代大聖の下のリンクと武藤嘉紀の背後への力強さを生かします。
そこでです。ガンバ大阪の守備は基本的に442のミドルブロックの形成と整理から始まります。DMF扇原貴宏には2トップのどちらかが監視しながら、全体を押し戻した瞬間にプレスのスイッチが入る形が多く見られるものとなっています。
よってヴィッセルからすると、押し戻した瞬間にひっくり返す上のパスを使って攻撃を構築していきたいところです。
具体的にボールを送りたい場所は以下の図をご覧ください。

ボールを戻した瞬間に空くであろうバックラインの手前のスペースを大迫勇也や宮代大聖のところに届けてポイントを作っていきたいところです。
大迫勇也はもちろんのこと、今季の宮代大聖は大きく成長し、下のリンクはもちろんのこと、上のパスを強引に収め切る強さも手にしています。大迫勇也の域に届きそうな勢いで宮代大聖は成長していると僕は思っています。

ここで起点を作りながらサイドを取りにいき、クロスからのフィニッシュの試行回数を増やしていけば、自然とゴールに近づくと僕は予想します。
まとめ
文字面だけでは伝わらないのが試合のテンポ感です。そのテンポをどのように上げていくのか、もしくはどのように管理していくのか、この辺りが優勝に近づく大きなポイントになると思います。
また両チームとも、最高の選手が所属しています。構造の先にある個人の戦いにもやはり注目です。
組織が生かす個、個が生かす組織。これらを支えるために構造があります。もっとサッカーは複雑で楽しいものだと思います。
そしてこの決勝戦も対照的なチームのぶつかり合いです。確実に熱く、そして最高の試合が待っています。
ぜひ皆さんも、どんな試合になるのか、そして決勝をリアルタイムで見てみてください!