U23アジア杯決勝直前、大会最強のウズベキスタンを日本は破れるか?二人の天才を揃えた強敵に迫る
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AFCU23アジア杯決勝が4日午前0時30分(日本時間)にカタールのジャシム・ビン・ハマド・スタジアムで開催される。日本の相手となるウズベキスタンは今大会最強と称されるチームであり、圧倒的な強さで勝ち上がってきた。

決勝で戦う強敵ウズベキスタンにスポットライトを当てる。

日本はリベンジマッチに勝てるか

今大会のウズベキスタンは最強と言っても過言ではない。大会5試合すべてで複数得点、無失点と対戦相手を寄せ付けることはない結果で勝ち上がってきた。

グループリーグはマレーシアに2-0、クウェートに5-0、ベトナムに3-0で突破し、ラウンドオブ16では大会優勝候補の一角であるサウジアラビアを2-0で一蹴し、韓国とオーストラリアを打ち破ったインドネシアを2-0で倒して同国初の五輪出場を決めた。

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また大会に招集された全23人中12人がA代表経験者が揃っており、経験値においても他の代表チームを凌駕(りょうが)する。またA代表経験者がウズベキスタンよりも多いサウジアラビア(13人)、インドネシア(14人)と対戦しても、個の能力の高さと優れた組織力で粉砕してみせた。

4-2-3-1のフォーメーションを基本としたショートカウンターで相手の隙を突き、相手がボールを持てば素早くブロックを固めながらプレッシャーをかけるため攻守ともに洗練されている。

また2022年に開催された前回大会では日本は準決勝でウズベキスタンと対戦しており、ウズベクが誇るレフティーモンスターのMFジャスルベク・ジャロリディノフ、同チームのエースストライカーのFWクサイン・ノルチャエフにゴールを決められて0-2で敗れている。

リベンジマッチとなるが、同チームにはジャロリディノフとノルチャエフは健在であり、後述する二人の天才がいるため難しい勝負となるだろう。

二人の天才が攻守を支える

MFアボスベク・ファイズラエフ(ロシア1部CSKAモスクワ)、DFアブドゥコビル・クサノフ(フランス1部RCランス)の天才コンビが日本の障壁となって立ちふさがるだろう。

ファイズラエフはウズベキスタンの至宝ともいえる20歳の天才であり、すり抜けるようなドリブルに、繊細なタッチから繰り出されるパスセンスは一級品だ。

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ファイズラエフ

クラブシーンでもその才能を見せつけており、今季ロシア1部リーグ戦で18試合3得点8アシスト、カップ戦8試合1得点3アシストと傑出したスタッツを記録している。ファイナルパス、クロスの精度はロシアプレミアリーグ随一とロシア紙『ソビエトスポーツ』で絶賛されるほどだ。

クサノフは身長186センチのセンターバックであり、総合能力に優れたポテンシャルがあふれるディフェンダーだ。

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タックルをしかけるクサノフ(右)

若干19歳でチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグにも出場しており、精度の高いロングフィード、先読みを駆使した正確なカバーリング、統率力のあるラインコントロールと現代型センターバックに求められるスキルを高水準で備えている。まだ20歳と若いため粗さやファウル癖もあるが、同世代のアジアのCBでは群を抜いている。

この他にも精度の高い左足と推進力を持ち合わせる左サイドバックのDFイブラヒムカハイル・ユルダシェフ(カザフスタン1部カイラト)、利き足を問わない技術力を誇るウイングのMFホジマト・エルキノフ(UAE1部アル・ワフダ)の招集にも成功しているため、圧倒的な個の力を持つ選手が揃う総合力の高いチームが形成されている。

育成に力を入れるウズベク

旧ソビエト連邦構成国のウズベキスタンは中央アジアでは最多の人口約3679万人(Statistics Agency of Uzbekistan 2023)の大国であり、サッカーは同国で最も支持を集めている。

これまでウズベキスタンはソビエト1部リーグでウズベク人で史上唯一得点王(1968年)に輝いたFWベラドル・アブドゥライモフやウクライナ1部ディナモ・キエフでリーグ得点王となったFWマクシム・シャツキフ、そして同国代表最多得点記録を更新したイタリア1部カリアリFWエルドル・ショムロドフなど優秀な選手を輩出してきた。

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ジェノア時代のショムロドフ

だが優秀な選手を輩出しているものの、同国はワールドカップに出場歴がない。

アジア有数の強豪国と数えられる同国は2011年開催のAFCアジアカップでベスト4に入るが、国際大会とは無縁という実力に見合わない結果が続いていた(育成年代では2003年にワールドユース選手権に出場)。

同国の若手選手は国内リーグでロシア、ウクライナ、カザフスタンなど旧ソビエト圏の欧州リーグへのステップアップが多い。これまで国内育成もソビエト、ロシアの育成メソッドが導入されているため、旧ソビエト圏のリーグでプレーしやすい土壌も形成されている。だが日進月歩の勢いでサッカーのメソッドは進化する現状に取り残されるリスクが介在していた。

近年は旧ソビエト圏以外のリーグで活躍する選手が増加傾向にあり、カリアリでプレーするショムロドフやRCランスで活躍するクサノフと西欧のリーグでプレーする選手が登場した。育成年代ではイングランド1部ブレントフォードのBチームに入団したMFムハンマダリ・ウリンボエフやドイツ1部ライプツィヒの下部組織に所属するDFダヴィド・ベルヤフスキーがいる。

このためウズベキスタンの若手選手は旧ソビエト圏以外の欧州各国クラブから注目され始めており、状況は緩やかに変わりつつある。

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昨年ウズベキスタンのサッカー界で新たな施策が動き出した。ロシアの通信社『スプートニク』が、国内初のナショナルフットボールセンターをシャフカト・ミルジヨエフ大統領の大統領令により創設することが決定したと報じた。

このナショナルフットボールセンターはコーチ、審判、アナリスト、スカウト、スポーツ心理学者、マネージャー、マーケティング担当者と多岐に渡る専門家の育成と研究を目的とした機関を発足する。この他にも代表チームのトレーニングセンター、リハビリテーション施設の設置も決定したという。

欧州の最新メソッドなどの導入が期待されており、五輪出場を決めたウズベキスタンは悲願のワールドカップ出場を達成するため本腰を入れている。

ウズベキスタンは当然AFCU23アジア杯優勝を目指しており、五輪という大きな国際舞台で経験を積んで悲願のワールドカップ出場につなげる構えだ。大きな野心を抱く同大会最強の敵と日本はどのような熱戦を繰り広げるのか。プライドをかけた激闘から目が離せない。