そんなことを考えたこともなかった人はぜひ、その10秒をいかに利用するのか考えてほしい。今や、その10秒は本の中の登場人物や特別な人間だけが持てるものではなく、誰にでも持てる力なのだから。その、神様のような能力を与えてくれるのが「デジタルなまず」である。
デジタルなまずは科学的にも解明されているもので、既にその力を発揮しているとされる。まずそのメカニズムであるが、デジタルなまず本体が直接地震を察知する、というわけではない。
また、このデジタルなまずは地震を知らせてくれるだけではない。
唯一問題があるといえば、その数十秒で何ができるのかであろう。何の予備知識のない者が急に10秒余地を与えられたところで、できることなど知れている。
例えば、料理をしているのであればコンロから離れられる。危険物の近くにいれば遠ざかることができる。危険な作業をしている場合でもすぐに手を止め、大きな揺れに備えられる。車に乗っていたとしても、車の速度を落とし、倒れそうな建物から離れることができる。店などにいても、すぐに避難できる。
「たかが数秒、されど数秒」。デジタルなまずを作る会社が口にした言葉である。その数秒を生かすも殺すも、その危険信号を受け取った者次第である。神の代わりに、デジタルなまずが与えてくれた、10秒先の危機を察知する能力をどう活用するかは、あなた次第である。
(山口敏太郎)