日本での買い物に夢中になる中国人客は多い。「爆買い」などと言われた一時期のような狂騒的な雰囲気はないが、それでも買い物を主な目的にして日本を訪れる中国人もいる。
日本を旅する中国人の中には、日本のショッピングモール巡りに熱中する人が多い。中には買い物を目的に日本旅行を計画する人もいる。2024年に日本を訪れた外国人は過去最多の3686万人で、同年には訪日外国人による宿泊や買い物などの支出額は8兆1395億円に達した。
訪日中国人が日本での買い物を好む理由としては、他国にはないデザインの品が多いだけでなく、正規販売店の価格も比較的安いことがある。しかし、中国人客が日本での買い物に夢中になるもう一つの理由として「接客態度」がある。日本に来た中国人客のLさんは、日本の商店での接客の仕方については、中国人の間でよく話題になると説明した。Lさんは「話しかけたとたんに、頭を深く下げてお辞儀をします。買わないと申し訳ないと、思ってしまいます」と笑いながら話してくれた。
Lさんによると、銀座にある店で靴を試着しようしたところ、甘い顔立ちで優しい口調の店員女性が、両膝をついて指先をやわらかく使いながら靴を試着させてくれ、「あなたの新しい靴です」と言って、世界を溶かすような笑顔でLさんを見上げたという。
日本ではこのような光景が、高級ブランド店に限らず、さまざまな店舗で日常的に見られる。
店が気に入った商品を切らしていても心配する必要はない。日本人店員は、どの店舗に在庫があるかを素早く検索してくれる。さらに、たとえ自分の店舗に在庫があっても、どの百貨店で買うとさらに安いかを親切に教えてくれる場合すらある。
日本のある商業施設を取材したところ、赤ちゃんやペットを連れて来た客もいた。店員はそんな客にも温かくあいさつし、「so cute(とてもかわいいですね)」などとほめた。落ち着きのない赤ちゃんやペットもいたが、店員がいらだちを見せることは全くなかった。
日本の各百貨店は、中国人観光客向けに特別な利便性も提供している。例えば、中国語対応のスタッフや中国語での免税手続きが可能であり、免税された金額分が中国人の間で普及している支付宝(アリペイ)やスマートフォン微信支付(ウィーチャットペイ)の口座に直接入金される。また、支払いに支付宝や微信支付、銀聯カードを利用すれば、さらに割安に購入できる。
中国では多くの実店舗小売業者が「なぜ消費者はショッピングモールを訪れなくなったのか」と嘆いている。
中国人観光客のBさんは東京新宿のデパートで、高級ブランドのバッグを買うために実物をいろいろ見比べて、中国国内で購入した場合とも比べて「どれだけお得」になるかなども考えて1時間以上も悩んでいた。問題は時間だ。店内の別の階で免税手続きをせねばならず、閉店時間も考えなければならない。Bさんは「日本での買い物をすると、時間に追われちゃうんですよね。それ以外は、全てが素晴らしいのですけど」と感慨深げに語った。(翻訳・編集/如月隼人)