中国チベット自治区ラサ市の寺が太陽光発電所を設置して自治区で初めてカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出をゼロにする)を実現した寺院となった、と中国メディアが報じた。寺の炭素排出量を試算したところ、暖房用やまきでの炊事で多くの二酸化炭素(CO2)を排出していることが分かったためだ。
中国通信社(CNS)によると、「ゼロカーボン寺院」を実現したのは、ラサ市トゥールン・デチェン区の古栄鎮に位置する乃朗寺。標高4200メートルを超える山腹にあり、寺の歴史は700年以上に及ぶ。チベット仏教のカルマ・カギュ派に属している。
指導者のバウォ師によると、乃朗寺には現在30名余りの僧侶が在籍。実践と体得を重んじる修行の場となっている。僧侶たちは実修を主とし、厳格な戒律のもとで生活。仏陀(ブッダ)の教えと三蔵にのっとった修行の段階に従って日々を送っているという。
バウォ師は「こうした修行を大切にしながら、近年は文化の保護と継承、そして環境保護と生きとし生けるもののための取り組みにも新しい挑戦を始めた」と語り、ゼロカーボンおよびカーボンニュートラル寺院の発想はまさに「環境保護と利生」の理念から生まれた、と説明した。

太陽光発電と蓄電・充電が一体となったシステムを導入した寺の駐車場には複数の電気自動車(EV)用充電スタンドを設置。寺の敷地内のあちこちに植樹や緑化が施されている。注目すべきは乃朗寺の主導により、チベット自治区初となる自然保護区域「乃朗谷自然保護区」も設立された点だ。
充電スタンドは太陽光発電所の電気を使用。
乃朗生態文化保護センターのスタッフであるツェリン・チュダン氏によると、乃朗寺の太陽光発電所は敷地面積2500平方メートル、年間発電量は約100万キロワット時に達する。五つの蓄電キャビネットを備え、オフグリッド(系統外)でも1週間の運転が可能だという。
この太陽光発電所の設置には国家電網西蔵電力有限公司およびラサ市当局の全面的な支援があった。2024年にはグリッドへの接続(系統連系)も実現し、余剰のクリーン電力を送電網に供給できるようになった。(編集/日向)