中国メディアの環球時報は13日、「電気自動車(EV)の推進に中国の優位性が必要な理由」とするインドメディアのデカン・ヘラルドの記事を紹介した。筆者はインドのタクシャシラ研究所インド太平洋研究プログラムのリサーチアナリスト、Bhumika Sevkani氏。

記事はまず、インド政府が2030年までに全乗用車の30%をEVにするという野心的な目標を掲げているもののインドにおけるEVの普及率は依然として著しく低く、24年の販売台数全体のわずか2.5%にとどまっていることに触れた。

その上で、「インドにおけるEV普及率の低さを考えると、30年までの目標達成は困難を極めるだろう」とし、「政府は、需要が低いにもかかわらず、自動車メーカーがEV製造施設に少なくとも5億ドルを投資し国内付加価値(DVA)基準を満たした場合に、輸入関税を減額する制度を通じてEV製造業の高度化に努めている」と伝えた。

記事によると、政府はこうした国内での取り組みが進む中、中国系企業、特に中国のEV大手、比亜迪(BYD)の参入に明確な反対姿勢を示している。BYDは当初、インド企業と提携して製造工場を建設するため10億ドルの投資を提案したが、政府は「国家の戦略的利益」を理由にこれを拒否した。BYDは最近、幹部のインド渡航に必要な就労ビザの取得に支障をきたした。

記事は「インドは、この確執を長引かせるのではなく、EVやバッテリー、充電インフラに関する中国の専門知識を活用してイノベーションを加速し、EVの普及を促進すべきだ」とし、「インドのEV部門が抱える課題は、中国のEVメーカーとの間の協力の余地を生み出している」と伝えた。

記事によると、EVの普及を促進するには、政策的な野心に加えて、インフラや技術、製造能力への投資も欠かせない。普及が遅れている理由の一つは、購入者の航続距離に対する不安で、これは、充電インフラとバッテリー交換ネットワークの拡大によって解決可能だ。消費者が従来の内燃機関車を好むその他の理由としては、コストの高さやバッテリー技術に関する安全性への懸念、そしてモデルの少なさなどが挙げられる。

記事によると、政府はEV製造支援スキーム(SPMEPCI)を通じて輸入部品の問題に対処しようとしたが、その厳しい要件により、EVメーカーは輸入関税減免の申請をためらっている。対照的に、州政府はより包括的なEV政策を導入し、土地補助金や税免除、労働インセンティブをより迅速に承認して提供している。

記事は「中国のEV産業は急速に成熟しており、バッテリー技術や車両設計、製造効率などの分野で貴重な専門知識を提供している。

特に合弁事業や充電インフラの設置、部品提携などを通じた選択的な協業は、インド企業がEV導入の課題に対処するのに役立つ可能性がある」とし、「いずれにせよ、インドの自動車メーカーは依然としてバッテリーやその他の小型部品を中国からの輸入に依存している。2023~24年に輸入したバッテリーの75%が中国製だ。タタなどインドでよく売れているEVを製造している企業も中国の技術に依存している」と伝えた。

記事によると、技術集約型部品メーカーとの提携を促進して現地に工場を設立することで、輸入を減らし、製造における技術移転を可能にできる。フォードやテスラは中国の車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)と提携して米国にバッテリー工場を建設し、トヨタはBYDと共同でEVを製造している。

記事は「インド政府が中国からの投資受け入れに消極的であることから、企業はアジアや欧州市場への進出を迫られている。一方、中国の充電インフラは民間セクターのイノベーションをけん引役として急速に発展している。BYDは急速充電ステーションを建設し、CATLと吉利(Geely)はバッテリー交換ネットワークを構築している。これらの企業との連携は、インドが先進技術を導入する上で役立つ可能性がある」と伝えた。

記事によると、インド政府系シンクタンクのNITI Aayogはこのほど、取引の遅延を回避するため、中国企業に対する投資審査の緩和を勧告した。バランスの取れたアプローチとは、JSWと上海汽車集団(SAIC)の合弁事業に見られるように、国内の製造能力を強化するパートナーシップを促進することだ。こうした製造業における連携は、国内部品サプライヤーの基盤を拡大し、中小企業に新たな機会を創出し、クリーンモビリティ分野における技術力を大幅に向上させる可能性がある。

(翻訳・編集/柳川)

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