2025年8月28日、仏国際放送局RFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)の中国語版サイトは、米国でがん研究資料を無断で自国に持ち帰ろうとした中国人医師が逮捕、起訴されたと報じた。
記事は、米テキサス州ヒューストンのMDアンダーソンがんセンターに勤務し、乳がん転移を防ぐワクチンを研究していた35歳の中国人医師が7月9日、米議会が資金提供するがん研究資料を中国に持ち出そうとした疑いでヒューストンの空港で逮捕されたと紹介。
また、法廷文書の情報として、医師が未公開の研究資料を自身のGoogleクラウドから削除した後、中国のサーバー上にある百度(バイドゥ)のクラウドストレージに同じ資料をアップロードしていたこと、MDアンダーソンがんセンターに在籍中、雇用主に報告することなく、守秘義務契約に反して中国の重慶医科大学と共同研究を秘密裏に進めていたと報じた。一方で、医師は法廷文書で「私にはこれらの資料を所有し、保持する権利がある」と主張しているとした。
そして、医師は5100ドル(約75万円)の保釈金を支払って釈放されたものの、ヒューストンに留まることを求められていると紹介。医師の行為は「企業秘密の窃盗」と「政府記録の改ざん」にあたる疑いがあり、有罪になれば最大10年の懲役と1万ドル(約147万円)の罰金が科される可能性があると指摘した。
記事は、この事件の背景について、米国政府による中国人研究者への監視強化があると解説。今年初めにもミシガン大学の中国人研究員2人が逮捕される事件があったとし、専門家からは「中国の研究者や機関の活動が、米国の学問の自由と国家安全保障に潜在的な脅威をもたらす可能性がある」との警告も聞かれると伝えた。
さらに、同州ハリス郡地方検事が「われわれは命を救い続けるために、これらの知的財産を米国内に留めなければならない」とコメントしたことに言及し、事件を国家的な知的財産保護の問題として位置づける米当局の姿勢を示唆した。(編集・翻訳/川尻)