韓国の石油化学産業は厳しい状態が続いている。中国メディアの環球時報は、「韓国の『石油化学四巨頭』のロッテケミカル、LGケミカル、ハンファソリューション、錦湖石化は2025年上半期にいずれも巨額の赤字に陥った」として、現状を紹介し、業績不振になった原因を分析する記事を発表した。
石油化学企業が赤字転落、「崩壊の瀬戸際」の評も
韓国の中央銀行である韓国銀行発表した25年第2四半期(4-6月期)の企業経営についてのリポートによると石油化学業界の売上高は前年同期比で7.8%減少し、24年第3四半期(7-9月期)以来、4四半期連続のマイナス成長だった。朝鮮日報の9日付報道によれば、韓国の「石油化学四巨頭」は24年に8784億ウォン(約970億円)の赤字に転落した。25年上半期も約5000億ウォン(約550億円)の赤字で、通年の赤字はさらに拡大する可能性があるという。朝鮮日報は、「石油精製業は韓国にとって半導体、自動車、一般機械に次ぐ第4の輸出産業だが、今や韓国は『石油精製大国』が崩壊する瀬戸際」にあると評した。
韓国の石油化学業界には輸入ナフサの加工に強く頼って来た特徴がある。国際原油価格の高止まりに伴い、輸入と輸出に強く依存する韓国の石油化学産業の価格競争力での弱点が拡大した。韓国聯合ニュースによると25年上半期、韓国の主要石油化学企業の平均売上原価率は98.6%に達し、21年の87.6%から大幅に上昇した。企業にっては売上原価率が100%を超えた。つまり「操業すればするほど損をする」状態になった。HDヒュンダイケミカルは上半期に売上原価率が107.3%、韓国とフランスの合弁のハンファ・トタルエナジーズ・ペトロケミカルでは103.7%、SKジオセントリックでは101%に達し、いずれも全面的な赤字に陥った。
状況変化のため、従来型「ビジネスモデル」通用せず
電気料金の高騰も石油化学会社の負担を追加した。韓国の工業用電力価格は今年になって22年第1四半期比で約65%上昇し、現在は石油化学業界の生産コストの6割を占めるに至った。韓国の主要石油化学企業10社はこの二重の打撃を受け、今年上半期の赤字の合計は1兆8000億ウォン(約2000億円)を超えた。
重要な石油価格製品であるエチレンの製品価格と原料コストの差も、利益を維持するには不十分な状態だ。基礎化学原料であるエチレンの損益分岐点は通常1トン当たり300ドル(約4万4300円)だが、今年第2四半期はわずか220ドル(約3万2500円)だった。韓国の石油化学産業は長期ににわたって「ナフサを分解してエチレンを輸出」というビジネスモデルに依存してきたが、国際原料価格の高騰と中東や中国でのエチレンの増産という板挟みに直面して、利益を出せる余地は絶えず圧縮されている。さらに、トランプ米大統領の政策のために国際エネルギー貿易環境が悪化しいていることも、韓国企業にとっては打撃だ。韓国の石油化学企業であるGSカルテックスの分析によると、米国の高関税政策と米中貿易摩擦が重なったことで、世界の基礎化学産業構造は再編されつつある。そのため、輸出依存型の韓国には一層の不確実性がもたらされたという。
朝鮮日報は、近年では中東地域諸国と中国が石油精錬化学装置を増やし続けていると報じた。インドの石油精錬能力も過去10年間で85%増加し、24年には日産能力が517万バレルに達し、28年までさらに増強される見込みだ。これらにより、韓国にとって経済学で言うところの「価格決定権の外部流出」という状況が発生した。すなわち、韓国企業は、価格決定と生産量調整の余地が大幅に圧縮された。
外資との合弁多いことも、対応策の「足かせ」に
また、韓国石油化学大手の多くが合弁企業であり、外資側の持株比率が高いために、重大な意思決定についての方針の迅速な統一を図ることが難しい。シェブロンが50%出資のGSカルテックスやフランスのトタルエナジーとの合弁会社である韓華トタルエナジーズは株主構成が複雑で決議が難しく、S-Oilはサウジアラムコの支配下で状況に逆行して事業を拡大している。
韓国紙の文化日報は「政府が企業の自主性に依存する体制では、利益の調整、価格交渉、株式の配分などにおいて、時間とコストが必然的にかかる。一方で、中国は小規模で老朽化した石油化学設備を(政府主導で)段階的に淘汰しており、日本は法律や行政命令を通じて石油化学業界の統合を推進している。両国の政府主導型の改革は、韓国よりも明らかに速い」と論じた。韓国企業は改革の遅れによって、今後も長期にわたり国際競争で不利な立場に置かれるのではないかとの懸念が広がっているという。
韓国石油化学産業の脆弱(ぜいじゃく)さがますます露呈する中で、米国石油大手のシェブロンは突然、「韓国の精油と石油化学分野で大規模投資を行う」と発表した。ロイターによると、シェブロンの幹部はシンガポールのアジア太平洋石油会議で世界事業の配置について語り、韓国で石油精製および石油化学分野に重点を置く大規模投資を計画していると述べた。業界からは、シェブロンの投資は韓国政府の推進する高度化改造やバイオ燃料など新興分野の育成政策と方向性が一致しているとの指摘が出た。企業レベルでは、シェブロンは50%出資するGSカルテックスを通じて投資を拡大し、不況期に業界へ資金と技術の「安定装置」になる可能性がある。しかし世論は、この動きが合弁会社の経営権や資本配分の権限を変化させ、米国資本による韓国の基幹産業への支配力が強化されるとして、懸念を示している。(翻訳・編集/如月隼人)