中国の衛星企業が自国の宇宙ステーションなどを監視してきた米国の衛星を精密撮影した写真を公開したと香港紙が報じた。宇宙は「撮って撮られて」の米中間の戦略競争の最前線で緊張が高まっている。
韓国・中央日報が紹介した香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)の記事によると、中国の長光衛星技術はSNSに自社の衛星「吉林1」衛星群が米国のワールドビューリージョン衛星を40~50キロの距離から撮影した写真4枚を公開した。
長光衛星技術は中国科学院傘下の研究所から分社して設立された企業。米商業用遠隔感知企業マクサー・インテリジェンスが運用しているワールドビューリージョン衛星は、地上と宇宙の目標物を精密に撮影し高解像度イメージを提供できる。複数の衛星群で運用され、特定地域を短い間隔で繰り返し観測できることが特徴だ。
ワールドビューリージョン衛星は、これまで中国の宇宙ステーションと偵察衛星を撮影し公開してきた前歴がある。長光衛星技術が米国のワールドビューリージョン衛星の写真を公開したのも、ワールドビューリージョン衛星が中国の衛星「実践26」を6月3日に撮影し7月10日ごろに写真を公開したのに伴った対抗措置と解釈される。
実践26は最新光学偵察衛星で、5月29日に中国の酒泉衛星発射センターから長征4号ロケットに載せられて打ち上げられた。 ワールドビューリージョン衛星はそれぞれ1.9センチと4.9センチの解像度で29キロと74キロの距離で実践26を撮影した写真を公開し、中国の反発を呼んだ。
SCMPは中国の実践26衛星と宇宙ステーションなどを監視撮影したワールドビューリージョン衛星を再び中国の衛星「吉林1」衛星群が撮影した今回の事件を巡り、「衛星追跡、位置追跡と高精密映像機能の発展で触発された米中間の宇宙競争が深まっていることを見せている」と分析した。
同紙はその上で、米中が先を争って宇宙軍を創設している状況にも言及。米国は2019年に六つ目の独立軍事部門として宇宙軍を創設し、これに対応して中国は昨年4月に人民解放軍航空宇宙軍を創設した。
さらにイーロン・マスク氏が設立した米宇宙探査企業スペースXのスターリンク衛星は7月と10月の2回にわたり中国の宇宙ステーションに接近して回避機動を誘発した。これと関連して中国は米国に「同様の事件を防止し国際宇宙法を尊重するための即時措置を取ること」を促した。
これと関連して専門家は「米中の宇宙技術がレーザー武器と結びつく場合、衛星基盤の攻撃と防衛交戦を可能にできる。宇宙が戦略的競争の最前線となっており、対立激化を防ぐためにより有効な行動規範を設けることが急がれる」と訴えた。(編集/日向)