中国の大学生、孫宇弘(スン・ユーホン)さんは買ったばかりの赤いトルティーヤのような生地に牛肉やトウモロコシ、レンコンなどを包んだ「嫩牛五方」を見せながら、「赤い生地をかんだ瞬間に口の中にサプライズが広がる。初めての食感」とした上で、「中国の国産アニメーション映画『ナタ 魔童の大暴れ(哪吒之魔童閙海)』が大好きなので、このセットを購入した。
国慶節(建国記念日、10月1日)と中秋節(旧暦8月15日、今年は10月6日)の8連休には、ファーストフードチェーンのケンタッキー・フライドチキンとナタのコラボ企画「紅運盛宴」が大人気となり、天津ではナタをテーマに飾り付けられた店舗が次々と登場。映画に登場するキャラクターのコスプレで、孫さんのようにコラボ商品を購入するために来店した若者もたくさんいた。
コラボ経済が追い風となり、若者の祝祭日の過ごし方がますます生き生きしたものに変わりつつある。中国コンサルティング大手の灼識諮詢(CIC)によると、中国のIP派生商品市場の規模は2024年に1742億元(約3兆6582億円)に達し、29年には3357億元(約7兆497億円)にまで拡大すると予想されている。食卓から旅行、ギフト、体験に至るまで、業界の垣根を越えたコラボが今、伝統的な祝祭日に若々しい活力を注ぎ込んでいる。

山西省から江蘇省に旅行に来た趙薇さんは、「以前は旅行と言うと、特産品を楽しんでいたが、今は体験を楽しみ、思い出をつくることができる」と話す。街中を歩いている時に、ミルクティーショップ・霸王茶姫(CHAGEE)では、江蘇省と安徽省でしか買えない中秋節限定のマグネットが手に入ることを知り、すぐに購入したという。趙さんはまた、「マグネットを見ると、今回の旅行を思い出すし、お土産にも適している。小さなマグネットに地域独特の文化が詰まっている。このようなコラボ商品があると、旅行にもお土産にも文化的要素が加わり、他の人と会話する時の話題にもなる」とした。
上海市青少年研究センターがSNSアプリ「Soul」と共同で発表した「2025Z世代エモ消費報告」によると、今年、若者の約6割が情緒的価値のために喜んでお金を使っている。