2025年10月21日、華字メディアの星島環球網は、人工知能(AI)ブームによる連鎖反応により、スマートフォンやサーバー向けの従来型チップの供給が逼迫(ひっぱく)され始め、需要が急増し買い占めが起こるなど、過去の半導体不足と同様の現象が発生していると指摘した。

記事は初めに「22年11月のChatGPTの登場により、生成AIブームとデーターセンター建設競争が起きて以降、メモリーチップメーカーは生産能力を技術難易度の高い広帯域メモリ(HBM)チップへと振り向けてきた。

中国の半導体メモリ産業をけん引する長鑫存儲技術(CXMT)などの新興メーカーや、DRAM市場の約7割を握るサムスン電子とSKハイニックスも、高性能チップへの転換を加速させている。また、モルガン・スタンレーのデータによると、グーグル、アマゾン、マイクロソフトといった大手企業が今年だけでAIインフラに4000億ドル(約60兆7250億円)を投資するという。複数の専門家やアナリストによると、このような投資熱の中で従来型のデータセンターやPCが更新時期のサイクルに入り、スマートフォンも想定を上回る販売状況と重なったことで、非HBM系のメモリーチップの価格が上がっている」と現状を紹介した。

半導体調査・分析会社のテックインサイツ(TechInsights)によると、DRAMの現物価格が9月時点で前年同月比約2倍となり、4月時点の伸び率(前年比4%)から急上昇した。さらにDRAMの平均在庫期間が23年初頭の31週間から昨年の10週間を経て、今は8週間にまで短縮しているという。米マイクロンは9月、26年までにHBM、非HBMのいずれも高い利益率を達成できるとの見通しを示した。KBセキュリティーズ(KB Securities)のアナリストのジェフ・キム(Jeff・Kim)氏の予測によると、来年には非HBM系メモリーチップの利益率がHBMのそれを上回る可能性があるという。

記事は「チップ価格の急騰は米国の関税引き上げや中国のレアアース輸出規制の影響を受けている家電やサーバー機器のメーカーの利益をさらに圧迫している。また、英国のパソコンメーカー・ラズベリーパイ(Raspberry Pi)が10月初め、メモリーデバイスのコストが前年比約120%上昇したことを理由に製品を値上げするなど、一部メーカーはコスト増を消費者に転嫁せざるを得ない段階に来ている」と指摘した。

記事は最後に、2人の専門家の意見を紹介した。一人目の半導体流通業のフュージョン・ワールドワイド(Fusion Worldwide)のトビー・ゴナーマン(Tobey Gonnerman)社長は、「すでに通常の2~3倍の発注が見られるなど、過去の半導体不足の時と同じ現象が起きている。市場では買い占めが起きている。

今後さらに悪化するだろう」と回答した。2人目のテックインサイツのダン・ハッチソン副社長は「典型的な供給不足は通常1~2年で落ち着く。27年ごろにはチップ業界全体が減退気味になるだろう」と回答した。(翻訳・編集/原邦之)

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