2025年10月22日、中国メディアの第一財経は、人工知能(AI)がゲーム制作における人件費を最大90%削減できる一方で、一部からは「AIが作るゲームには魂がない」との声も出ていると報じた。
記事はまず、AIがゲーム制作の効率を大きく向上させている現状を紹介。
具体的には、ゲーム制作工数の大半を占めるアート資源処理の効率化でAIの効果が特に顕著であると解説。テンセントなどの大手ゲーム企業が開発・公開するAIツールは、アニメーション制作の要である3Dモデルと骨格の動きを連動させる工程において、数日かかっていた作業をわずか数時間に短縮し、人件費を70~90%も削減したと説明した。
また、3Dモデル制作でもAIが植生や建築物など背景リソースを自動生成することで制作効率が大幅に向上しており、数億円規模のAAAタイトルであればアート関連コストを数千万元単位で削減できると指摘。AIツールは手作業よりも運用コストが低く、コスト全体の圧縮に大きく寄与していると伝えた。
一方で、AIがゲーム制作の核となる「創造性」や「魂」を提供できるかという論争も業界内で起こっているとし、米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスクCEOによるxAI社のゲームスタジオ設立宣言に対して、業界関係者から「AIは優秀なゲームに必須のクリエイティブな要素やビジョンを提供できない」と批判的な意見が出たことを紹介した。
さらに、実際にリリースされたAIゲームについても、「技術デモのようで遊ぶうちに飽きる」「会話が定型的で面白みに欠ける」といった声がユーザーから寄せられており、AI生成物のパターン化や単調さが指摘されていると伝えた。
ただ、これに対しては一部の専門家からは異なる見方も示されているという。以前はAIに人間的な表現力や「魂」がないと考えていた関係者も、最近のAI生成小説などの進歩に触れ、AIが人間の感情や連想を呼び起こし始めていることに驚きを示しており、「AIに対する強い拒否反応を示すのは危険な姿勢。AIを敵と見なすか友と見なすかにかかわらず、業界関係者はAIを深く理解する必要がある」と主張するようになったと記事は紹介している。
記事は、AIツールを用いたゲーム制作プロセスの未来についても展望。最もAIツールの恩恵を受けるのは、極小規模なインディーゲームチームや短納期プロジェクトチームであり、従来はコスト面などで中・大型チームでしか不可能だったモーションキャプチャなどの作業がAIによって実現できるようになり、「技術的な平等の実現」が可能になるとの見方を示した。
一方で「AIはまだ専門性の低い人間を専門家レベルに引き上げることはできない」とし、大規模な成熟したチームでの導入は当面限定的なものにとどまると指摘。将来的にAIは「大型企業のチーム連携の強化とコスト削減」に貢献しつつ、「中小型企業の長所を伸ばし弱点を補う」役割を担うという専門家の予測を紹介した。
そして「最終的には各種のAI技術を統合して、テキスト入力から完全なゲームを素早く生成する『スマートエージェント』の登場が、ゲーム制作の未来の姿になるだろう」と締めくくった。(編集・翻訳/川尻)











