2025年10月26日、香港メディア・香港01は、中国が世界最大の自動車輸送船を建造する背景について報じた。

記事は、中国の自動車輸出台数が世界一となる中で自動車運搬船の不足が課題となっており、BYDや奇瑞汽車、上海汽車などの中国の自動車メーカーが続々と自前の大型自動車輸送船の発注に乗り出していると伝えた。

そして、自動車運搬船について車両や大型機械が自力で船内へ直接乗り入れ、自力で降りられる構造を持つロールオン・ロールオフ船(Ro-Ro船)の一種だと解説。コンテナ船のようにクレーンや追加のコンテナを用意する必要がなく、荷役にかかるコストと時間が大幅に削減されるほか、輸送中の損傷リスクも低減できるとし、中国で建造しているものは最大9500台もの自動車を積載できると紹介した。

その上で、中国企業が自前の自動車運搬船の建造に乗り出す理由について、輸出量の増加に伴う輸送力不足のほかに、輸送力不足に伴う運賃の大幅な高騰、日本や韓国に輸送力が集中していることによる制約リスクを挙げて説明。これまでの「借りた船で輸送する」状況では追いつかなくなり、「自分で船を造って運ぶ」必要性が高まったことを伝えている。

記事は、中国の自動車メーカーが続々と国内の大手造船所へ自動車運搬船を大量に発注し、自社の輸送船団づくりを進めていると紹介。特に上海汽車はすでに運搬船18隻を保有しており、世界の自動車運搬船船主ランキングで15位に入っているとした。また、中国の造船業も中国自動車メーカーの旺盛な需要を支えるだけのキャパシティーを有しており、「造船完成量」「新規受注量」「手持ち受注残量」という3大指標において、15年連続で世界市場のトップを維持していることを指摘した。

また、強力な生産能力だけでなく、非常に高い技術力も備わっているとし、9500台を積載できるメタノール燃料対応型の国産自動車運搬船「安吉茂盛」はすでに主要設備の国産化を実現していると伝えた。

さらに、中国企業は運搬船建造にあたって二酸化炭素排出量削減にも取り組んでおり、メタノール燃料など環境対応燃料を使用する輸送船を積極的に採用していると紹介。中遠海運の運搬船「遠海口」が液化天然ガス(LNG)と太陽光発電を組み合わせたデュアル燃料船で、従来の燃料船に比べて20%のエネルギー節約と24%以上の二酸化炭素削減を実現したほか、招商輪船は世界初のメタノールと燃料油のデュアル燃料を採用して温室効果ガス排出量を70%以上削減したと報じている。(編集・翻訳/川尻)

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