2025年10月28日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、レアアース分野において西側諸国が中国の独占状態を打破する道について論じた記事を掲載した。

記事は、現在、世界のレアアース供給は中国による圧倒的な集中支配下にあり、採掘量で約70%、より重要な精製・加工といった中間工程では最大90%のシェアを握っていると紹介。

この支配的な状況がエネルギーや自動車、防衛、人工知能(AI)など戦略的分野のグローバルサプライチェーンを脆弱(ぜいじゃく)にする中、中国政府は、自国技術を使ったレアアース材料の輸出に政府の承認を義務付けるなど、統制をさらに強化しており、世界的な懸念を呼び起こしていると伝えた。

また、10年に中国が領土紛争を理由に日本へのレアアース輸出を中断した事例などを挙げ、重要な戦略資源であるレアアースが国家間の外交・経済紛争における強力な交渉材料となり、現代の安全保障と産業競争力を左右する鍵になると説明した。

その上で、米国と欧州連合(EU)はレアアースの脱中国依存に向けた努力を続けており、米国が今月に85億ドル(約1兆3000億円)規模のレアアース関連協定を締結したと報じられたことを紹介。同時に、企業が十分なレアアース供給を確保できるよう、中国との交渉を進めているとした。

記事は、中国依存を脱却するための「真の挑戦」は、精製・加工能力、すなわち中間工程の拡大にあると指摘。鉱山を所有していても、中間工程を掌握できなければ「結局レアアースを中国に送って加工してもらわなければならない」状況に陥るため、リスク回避にならないとする専門家の見解を伝えている。

そして、レアアース供給の多様化を実現するには、中国以外で新しい鉱山を開設するだけでなく、新しい精錬施設を建設して熟練労働者を育成すること、価格安定メカニズムや、自動車・防衛などの下流産業との長期購入契約を含む経済的インセンティブを提供することが必要だとした。

記事はさらに、西側での加工施設建設は、厳格な環境基準を満たす必要があるため、より高価で時間を要し、地域住民の反対を招く可能性があるという問題点にも言及。中国のような「比類のない技術的専門知識」や潤沢な労働力をどう確保するかも大きな課題となっており、米戦略国際問題研究所(CSIS)が7月発表した報告の中で「もし迅速かつ協調的な行動がなければ、中国の長期的な支配に対抗できる機会は縮小し続ける。その結果、重要な技術や産業、そして安全保障上の利益は、継続的にリスクに晒され続けることになる」と警告したことを伝えた。(編集・翻訳/川尻)

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