「幻の 秋の夜長に 露けむり」

2020年、まだ大学受験の準備に追われていた私は、あるビデオをきっかけに初めて「日本」と出会った。

その年、私は高校3年生で、毎日「授業」や「宿題」や「暗記」などの繰り返しの中で過ごしていた。

ある日、休憩の時間に美しいビデオのカバーに惹かれた。それは京都の街並みを撮影したビデオだった。約40分間、カメラはただ京都の街に沿って撮影していた。ビデオには解説もバックミュージックもなかった。しかし、ビデオの中の街並みには、静かで古い雰囲気が漂っていて、夕陽が徐々に沈み、空も淡いオレンジ色に染まっていた。

街路樹の桜がそよ風にそよぎ、花びらが雪のように舞い落ちていた。古い建物が通りに沿って建ち並び、瓦屋根は夕日に照らされて微かに光っていた。時折、和服を着た女性が街角をゆったりと歩いてきた。遠くからは澄んだ笛の音とチャンチャラチャンと琴の音が聞こえた。その瞬間、私はこの静かで美しい絵巻に深く引き込まれ、京都の夕暮れの街並みに「浸りました」。高校の先生が言ってた通り、日本の景色は本当に絵巻のように美しかった。

中日友好が深まり、文化交流が益々頻繁になるにつれて、日本を旅行する中国人が増えている。

2023年7月、日本を訪れた中国人観光客の数は31.3万人で、訪日観光客総数の13.5%を占めた。また、2022年11月以降、日本を旅行する中国人観光客の数は安定して増加している。しかし、日本を旅行することは、多くの中国人にとってまだ簡単ではない。経済的な負担や仕事の忙しさなど様々な理由で、行きたくても、実際には行けない人が多いからだ。

大学受験が終わった後、新型コロナウイルス流行の関係で、結局私は日本に行くことができなかった。今日、AI技術の進歩に伴い、多くの「不可能」が次々と実現している。2022年、ChatGPTはロボットによるテキストチャットまで現実した。2024年には、Soraの開発により、仮想世界が現実となった。現在、VR技術も日々成熟している。もしVR技術とAI技術を組み合わせたら、「日本旅行」のハードルは大幅に下がるかもしれない。現実世界で日本の土を踏むことができなくても、より多くの人々が仮想世界で日本の景色を楽しみ、日本の文化を体験し、日本人と交流することで、日本をより深く理解する未来は近いのだ。

VR技術を通じて、私たちはいつでもどこでも「本物の仮想の世界」を見ることができる。

AI技術により、私たちは仮想世界の人々と自由に交流することができる。VR装置を装着して、日本の街角に立っていると想像してみてください。桜が満開の小道を散歩し、春風が頬を撫でるのを感じ、花の香りをじっくりと味わうことができる。茶室に座って、茶の音を聞きながら、茶道文化の深い意味を味わうこともできる。この仮想世界では、自由に日本人と交流し、彼らの生活習慣や文化伝統を知り、新しい友達を作ることもできる。日本の街角や伝統的な日本建築の中で、濃厚な日本の雰囲気を感じ、まるでその場にいるかのような気持ちになる。

VR技術とAI技術の組み合わせにより、私たちは時空の制約を超えて、日本文化との親密な接触を実現することができる。このような仮想旅行が実現すれば、日本に行くことができない人々の好奇心や憧れを満たすだけでなく、より多くの人々が日本のユニークな魅力をより深く理解し、体験することができるに違いない。

「友として 心を結び 海を越え 文化の花は 永遠に咲く」

中国には「遠い親戚より近くの隣人」という古い言葉がある。海を隔てて向かい合う「良い隣人」としての中国と日本は、現在の情報化時代においても時代の風に乗り、日本で中華文化が深く尊まれたように、中国でも和の美が愛でられる未来は明日にも迫っている。

■原題:もうひとつの世界で日本に出会う

■執筆者:鄧雄濤(清華大学)

※本文は、第20回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「AI時代の日中交流」(段躍中編、日本僑報社、2024年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。

なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

もうひとつの世界で日本に出会う―中国人学生

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