2025年11月7日、台湾メディア・自由時報は、レアアース業界における中国の独占状態を打破すべく、西側諸国がオーストラリアに期待を寄せていると報じた。

記事はまず、国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、中国は世界のレアアース鉱採掘量の約7割、加工分野では実に9割超という圧倒的なシェアを握っていること、この状況下で中国がレアアースと関連製品の輸出管理を強化しており、世界各国でレアアース供給網への懸念が強まっていることを紹介した。

そして、オーストラリアに埋蔵するレアアース酸化物が世界の約17%に当たる約340万トンと推計されていると指摘。中国以外で唯一の完全なサプライチェーンを有し得る国として世界から期待され、現地のレアアース産業は国際的な支援を背景に急速に拡大していると伝えた。

その事例として、オーストラリアの代表的なレアアース企業であるライナスを紹介。同社は中国以外では世界最高品位のレアアース鉱床とされる西オーストラリア州のマウント・ウェルド鉱山を持つこと、マレーシアに大規模な分離・精製工場を持つこと、米国防総省の資金援助を受けてテキサス州に新たな重稀土類分離施設の建設を進めていることなどを挙げ、同社が「民主主義サプライチェーンの要」と位置づけられているとした。

記事は、ライナスに代表されるオーストラリアのレアアース産業が持つ強みとして、産出されるレアアースの質の良さ、放射性元素の含有比率が低く、環境面でのリスクコントロールがしやすいこと、透明性の高い司法制度と整備された採掘関連の規制、アジアの主要な製造拠点に地理的に近いため、物流コストを抑えられることなどを列挙。西側の支援により、2030年までに世界のレアアース生産シェアが現在の約10%から20~25%にまで高まる見込みだと伝えた。

一方で、オーストラリアが真の供給源となるには、乗り越えなければならない大きな課題が存在するとも指摘。レアアースの精製工程は放射性物質を含む廃棄物が生じるなど採掘以上に環境リスクがあり、中国では加工による長年の環境汚染が住民の健康被害につながっていることを挙げた。

また、採掘したレアアース鉱の分離と金属化のセクションにおいて、中国が現在85%のシェアを得ていることに言及。オーストラリアがこのセクションも完備するには莫大(ばくだい)な資金と高度な技術が必要になるとし、環境規制をクリアしつつ精製技術を確立するのは簡単ではないとの見方を示した。

記事は最後に、こうした課題を乗り越えられれば、オーストラリアにとっては世界の供給リスクと同時に、自国経済的も大きく潤う可能性を秘めているとした。また、中国と対立する米国との結束を一層強固にする地政学的な側面も持つとの見方も紹介して締めくくった。

(編集・翻訳/川尻)

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