2025年11月9日、香港メディア・香港01は「中国の製造業の労働生産性が米国よりはるかに低い」という見方に対し、中国人学者が異論を唱えたことを報じた。
記事は、香港の投資会社PAGグループのCEOで、米ペンシルベニア大学ウォートン校の元教授でもある単偉健氏が6日、金融調査会社Gavekalで発表した論文で、「世界の工場と呼ばれながら中国の製造業の労働生産性が米国よりはるかに低い」という見方を「研究方法の根本的な欠陥」と断じたことを紹介した。
単氏はまず、研究方法に存在する問題として、米アップル社のような「製品の設計とブランドを担当するODM企業」と、富士康のような「実際の製造を担うOEM企業」が区別されないまま、従来の付加価値の考え方で比較している点、米中両国間の物価の差、購買力の差を考慮していない点を挙げた。
その上で、造船や鉄鋼、電気自動車(EV)など五つの産業で実際の「物の生産量」を比較した結果、中国人労働者1人当たりの生産量は米国人の約2.4倍に達することが判明したと主張した。
一方で、これを金額ベースで計算すると中国の製品単価が低いことから、中国の優位性は1.2倍にまで縮小すると指摘。さらに、中国の高い生産性が賃金に反映されていないとし、例えばテスラの上海工場における従業員の生産性は米国の2倍であるにもかかわらず、賃金は米国人労働者の17~18%にとどまっていると論じた。この数字の「あや」も、中国の労働生産性を低く見積もる要因になっていると単氏は考えているようだ。
単氏は、中国の労働生産性は今や米国を大きく上回っているという「現実」を踏まえ、現在米国が進める国際分業を無視する「再工業化」政策に疑問を提起。米国政府がアップルに国内でのiPhone組み立てを迫るような動きは、むしろ国民の所得を低下させる可能性があるとした。そして、中国が製造業の総合力で優位を持つ中、米国が長期的に成功するためには、貿易保護主義ではなく、自国が強みを持つ高付加価値分野に特化すべきだと結論づけた。(編集・翻訳/川尻)











