2025年11月9日、韓国メディア・毎日経済は「一律65歳定年なら年間30兆ウォン(約3兆1800億円)の衝撃」と題した記事を掲載した。

韓国の主要労働組合2団体が先ごろ、定年を65歳に延長する法案を年内に処理するよう国会に要求した。

13年に定年が60歳に引き上げられた際も反対の声が上がったが、高齢化時代への先制的な備えを求める声が優位となり、16年から60歳定年義務化が段階的に施行された。それから10年もたたずに定年延長論が再浮上した形だ。韓国は昨年、超高齢化社会に突入した。33年には年金受給年齢が65歳に引き上げられるため、定年後の空白期が生じる。

共に民主党は先ごろ定年延長特別委員会を設立し、今週から活動を本格化する。関係者は「65歳定年を目標にするという前提以外は全て再検討する計画」だとしている。多様な再雇用制度の並行の是非や定年延長の最終地点などを協議するとみられている。

ただ、労働界による法制化の要求に関しては慎重論が広がっているという。一律の定年延長は、若者の雇用の萎縮を招くおそれがあり、企業の負担も大きい。そのため、雇用の形を多様化する「マルチトラック」に解法を見いだすべきだとの声が強くなっていると記事は伝えた。

韓国経済人協会が釜山大学のキム・ヒョンソク教授に依頼した研究によると、定年年齢が65歳になった場合、60~64歳の労働者雇用延長に伴うコストは年間30兆2000億ウォンに達すると推計された。キム教授は「一律の定年延長は衝撃が大きい」と強調している。

高麗大学労働大学院のパク・チスン教授は「企業、業種ごとに状況は異なるにもかかわらず、一律の立法を強行するのは前近代的認識だ」「韓国より先に超高齢社会に入った日本の場合、13年に政府が65歳までの雇用を勧告しているが、定年延長、定年廃止、再雇用など、さまざまな選択肢を与えている」と指摘している。

この記事に、韓国のネットユーザーからは「なぜ定年が必要なんだろう。会社の役に立つ人は雇っていればいいし、そうでないなら切ればいいじゃないか」「定年退職後、会社が必要とするなら契約社員として雇用すればいい」「若者が就職できないことのほうが深刻な問題じゃないか?年寄りは譲歩すべきだ」「未来を担う若者の雇用を奪う既成世代の労組」など、定年延長は必要ないとする声が多く寄せられている。(翻訳・編集/麻江)

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