中国では若者を中心に、「情緒消費(感情消費)」と呼ばれる新しい消費スタイルが急速に広がっています。忙しい都市生活の中で、モノの所有よりも「心の満足」を重視する傾向が強まっており、Z世代がその流れをけん引しています。
データによると、若年層の9割以上が「情緒的な価値」を重視しており、約6割が「感情を満たすためなら支出してもよい」と考えています。上海市黄浦区の商業施設では、「ハッピーギフトショップ」という看板を掲げた店が人気を集めており、若者らが次々と小物を手に取っては購入していきます。
消費者の王さんは取材に対し、「色合いが鮮やかで気分が明るくなる」と話しました。また、同店の店長によると、ユニークな縫いぐるみキーホルダーやポジティブな言葉をあしらった雑貨などが人気を集めています。
先ごろ発表された「2025年Z世代感情消費リポート」によれば、「感情価値や興味のために消費する」と答えた人の割合は56.3%に達し、前年より16.2ポイント上昇しました。感情を満たす商品・サービスの上位には、縫いぐるみ、アロマ、ストレス解消グッズなどの「実物消費」、コンサートやトークショー、心理カウンセリングといった「体験消費」、テーマパーク同行などの「社交消費」、デジタルペットやアバターなどの「デジタル消費」が並びます。ある電子商取引(EC)プラットフォームでは、10月10日から20日までの「トレンド玩具」分野の注文者数が前年同期比で2倍に増加しました。
また、黄浦区内の別の店では、デザイナーによるオリジナル絵はがきがオンライン販売の人気商品になっています。さらに、大手ECサイトのデータによると、「自分を癒やす」タイプの消費も顕著に増加しており、「美容院でのパーマ・カラー」関連の検索件数は前年同期比145%増、体の不調改善や健康維持のためのサービス・商品関連は188%増となりました。
2025年の中国の「感情経済」の市場規模はすでに2兆3000億元(約50兆円)に達したとのデータもあります。こうした動きは、モノの所有から心の充足へと価値観が移行している現代の消費トレンドを映し出しています。Z世代が中心となって広がる「感情に寄り添う消費」は、中国経済の新たな原動力として注目されています。











