2025年11月20日、中国メディアの第一財経は、高市早苗首相の「存立危機事態」発言に反発する中で中国政府が再び日本産水産物の輸入を停止したことについて、代替先を見つけることは難しいと報じた。

記事は、中国外交部の毛寧(マオ・ニン)報道官が19日、中国が日本に対し水産物の輸入停止を通告したことについて、水産物の監督管理責任や品質保証の安全性確保に関する約束を守るための技術資料を日本が提出していないと説明するとともに、高市首相の発言にも言及し「現状、日本の水産物を中国に輸出しても市場はない」とコメントしたことを伝えている。

その上で、かつては日本にとって中国が最大の農林水産物輸出相手国であり続け、2022年には中国国内の消費力上昇に伴って輸出額が前年比25%以上増の2783億円にまで到達し、水産品はホタテやナマコなどを中心として約871億円と日本の水産物輸出額全体の22%を占めたと紹介。それが23年8月の福島第1原発の汚染処理水海洋放出を受けて中国政府が日本産水産物の輸入を全面停止して様相が一変、24年の対中水産物輸出額は22年比で90%以上の激減となり、特に主力だったホタテは24年の対中輸出がゼロになったとした。

そして、中国政府による輸入停止後、日本政府は米国やメキシコ、東南アジアなどに新たな輸出先を求め、代替市場開拓を試みているものの、水産物全体の輸出額は依然として減少しており、中国市場の穴を埋める信頼できる買い手を見つけられていないのが現状だと指摘。日本の食品輸出全体は増加傾向にあるものの、水産物の輸出だけが減少する状況が続いていると伝えた。

記事は、日本政府が食品の輸出額について、今年は2兆円、30年には5兆円にまで増やす目標を掲げているものの、中国への水産物輸出が止まったことで目標達成に暗雲が立ち込めているとしたほか、水産業界は米トランプ政権による15%の相互関税で国際市場での価格競争力が低下する中で、再び大きな打撃を受けることになると評している。(編集・翻訳/川尻)

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