中国メディアの新浪網などはこのほど、中国ではスーパーマーケットを運営する大手62社が、2024年には計3037店舗を閉店したと伝える記事を掲載した。5年ほど前から従来型の総合スーパーがネット通販に押されるなどで、苦境に陥っているという。

また、消費者の求めが多様化していることで、かつては集客力に直結していた「総合」が機能しなくなったことも、背景にある。

多くの中国人がスーパーに接したのは1990年代だった。スーパーが中国人が近代的生活を謳歌する象徴になった。スーパーの利用は、一定期間分の飲食品や日用品を1カ所で揃えることができ、より標準化された価格やサービスを享受できることを意味した。

かつては、家族で週末にスーパーへ行き大量に買い物をすることが1週間の重要な儀式だった。今では、朝食用の牛乳ならばスマートフォンのアプリで注文すれば30分以内に届き、まとめ買いしたステーキ肉は会員制店舗から翌日配送で自宅に届き、スナック菓子や飲料でさえ退勤途中にコンビニで手軽に買うことができる。生活様式が精密に分割されてしまった今、「1カ所で全てそろう」の商法は、居場所を失いつつある。

中国チェーン協会が最新発表した24年スーパー販売規模TOP100にランクインする企業の中では、62社が店舗数を縮小し、合計で3037店減少した。13社は横ばいで、店舗数を増やしたのは25社だけだった。

従来型の総合スーパーに「選手交代」の波、年間3037店が閉店―中国メディア
ウォルマート

ウォルマートや永輝などの「大規模で全て揃う」従来型モデルは衰退しつつあり、盒馬やコストコなど「専門的で精緻な」新業態は急成長している。一方、胖東来のように地域に深く根ざした「地道に展開する企業」は、独自の価値を構築することで強い生命力を示し、経営は安定している。

店舗縮小が最も顕著だったのは「世紀華聯」を展開する集百控股だった。

24年には中国全国のスーパー店舗減少数の約3分の1を占める1009店舗を閉鎖した。

売上高では、24年の中国スーパーTOP100の中で売上高が前年比で増加した企業は42社、売上高と店舗数がともに増加した企業はわずか14社だった。業界のリーダー的存在の永輝超市の売上は前年の487億元(約1兆1000億円)から299億元(約6600億円)へと大幅に減少した。聯華超市も売上高が135億元(約3000億円)から95億元(約2100億円)に減少した。

従来型の総合スーパーに「選手交代」の波、年間3037店が閉店―中国メディア
ウォルマート

「2025年中国ショッピング報告」によれば、19年には34%だったスーパーおよび小型スーパーの売上シェアは24年には32%に縮小した。かつては「小売の王者」だった大型商業施設は19%から13%に下落した。対照的に、ネット通販は快進撃を続け、22%だったシェアは32%に上昇した。

中国人の消費シーンは大きく変わった。かつては週末に食品や食材をまとめ買いするために車で大潤発や永輝などのスーパーへ行ったが、今ではネットを利用して盒馬やサムズクラブで箱単位の注文をすれば、即時配送か翌日配送だ。かつては日用品を買うためにスーパーへ行くことを忘れないようにせねばならなかったが、今では思いついた時にネット通販の京東や淘宝で注文すればよい。

中国を席巻するスーパー閉店ラッシュは、突如訪れた厳寒というよりも必然の業界再編だ。従来型スーパーの大規模で全てが揃うモデルは、効率至上と体験重視の新しい消費時代において訴求力を失った。

従来型の総合スーパーに「選手交代」の波、年間3037店が閉店―中国メディア
スーパーマーケット『盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)

ただし、危機の裏にはチャンスがある。例えば胖東来の事例だ。生鮮食品の鮮度管理を徹底し、偽商品を徹底排除し、顧客が満足できなければ理由を問わず返品に応じるなどの徹底した顧客本位の商法で評価を確立した。胖東来の会員制店舗の満員ぶりは、人々が対面販売を必要としなくなったのではなく、画一的で価値に乏しい小売を必要としなくなったことを示している。スーパーの物語は終わったわけではない。ただ、別の書き方に変わっただけだ。(翻訳・編集/如月隼人)

編集部おすすめ