韓国では13日、全国統一大学入学試験の大学修学能力試験(CSAT)が実施された。最近では、中国の「受験戦争」の厳しさが話題になることもあるが、韓国の「受験戦争」はさらに過酷だ。
韓国ではCSATの実施日になると、国全体が試験会場になる。バスは受験生のために路線を臨時変更する場合がある。航空機は外国語のリスニングの時間帯になると、高度3000メートル以上でしか飛行できない。株式市場は受験生の移動時間帯の渋滞リスクを減らすために開場を1時間遅らせる。駐韓米軍でさえ騒音を減らすために軍事活動を調整する。
試験会場で受験生は極めて過酷な戦いに臨む。9時間の間に国語、英語、数学、韓国史、外国語、2科目の社会科学探究科目の試験をこなさねばならない。韓国の大学入試は多くの点で中国の大学入試と似ているが、試験結果によって決まる入学が認められる大学の序列は個人への影響はより強く、かつより長期にわたる。試験結果が受験生のその後の人生を決定すると言っても過言ではない。
韓国教育部によると、過去15年間の韓国での大学進学率は海外に留学した人を含めて73%に達した。しかし本当にCSATを通じてエリートへの扉を開けることができるのは、首都圏にある大学16校に合格できた場合だけだ。
この16校の中にもさらに序列がある。韓国の大学のピラミッドの頂点に立つのは「SKY」と総称されるソウル大学、高麗大学、延世大学で、合格率は1%から2%だ。「資格主義」の色彩が濃厚な韓国では、学歴がよい就職先に直結し、就職先は収入の多い少ないに直結する。一般的な大学の卒業生が個人の能力によって大企業に入って逆転する可能性はほとんど存在しない。財閥系企業、法律事務所、高級公務員、医師などのエリート職では、SKY卒業生が占める割合が極めて高い。
そのため韓国の多くの若者は10年以上にわたり、勉強に追われる。昼間には学校の授業を受け、放課後には学校が提供する低料金の補習に出席し、週末には私立の塾などでさらに授業を受ける。今年3月に韓国の教育部と統計庁が共同で発表した「個人の教育費用調査」によれば、学校での補習は韓国の家庭の「当然の選択」になった。そして小学生から高校生までの約80%が学校以外による教育を受け、さらには2歳以下の幼児の25%が就学前教育を受けている。これらにより、韓国では200億ドル(約3兆1200億円)規模の受験産業が成立した。
SKYを狙う優秀な生徒も「補習戦争」に参戦せねばならない。なぜならCSATには少数ではあるが超難問が設けられ、成績最優秀の生徒をさらにふるい分けるからだ。
全ての受験生が同じ試験問題に挑むCSATは一見公平に見える。しかし受験生の家庭背景や居住地などが試験結果を大きく左右する。すなわち経済が発達した首都圏の裕福な家庭ならば、高品質の補習を購入することで、CSATで高得点を得やすくなる。首都圏のトップ大学の生徒の出身は、主に首都圏の高収入家庭だ。
しかし、CSATはトップ大学に入る唯一の「門」ではない。民間の統計によれば、SKYの入学者の50%以上が前倒し入試で入学資格を得ている。すなわち、スポーツ競技の成績、論文の成果などによって大学側からCSATによる合格条件を大幅に緩和される場合がある。CSATの受験を免除される場合すらある。
15年にはアジア大会馬術団体優勝者の鄭維羅(チョン・ユラ)は特別入試によって梨花女子大学に入学した。この入学の過程には当初から疑わしい点が多かった。まず入学当年、梨花女子大学が馬術競技の成績を突然に特別入学の評価対象に加えたことだ。次に梨花女子大学の特別入学の制度はスポーツ競技での団体メダル獲得を評価対象にしていなかった。さらに鄭維羅は特別入学の申請締切日から4日後に団体金メダルを得たことだ。鄭維羅の母は当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領の背後にいた影の存在で、私的な関係を通じて国政に介入した事件の主人公の崔順実(チェ・ソウォン)だった。
特別待遇で大学に入学したのは保守系政治家の子女だけではない。19年には文在寅(ムン・ジェイン)政権の曺国(チョ・グク)法務部長官の娘の曺旻(チョ・ミン)が、医学論文に名を連ねることで高麗大学に入学したと指摘された。
鄭維羅と曺旻は最終的に大学から永久に入学資格を取り消された。鄭維羅の母である崔順実および曺旻の父の曺国と母の鄭慶心(チョン・ギョンシム)が受けた有罪判決にはいずれも、娘の不正入学に関連する部分があった。そして、「その他の鄭維羅」が各大学に依然として存在することは否定できない。
一方で、何の背景もない受験生にとって、CSATは相対的に公平な競争だ。CSATが若者の人生のスタートラインに大きな差をもたらし、階級の固定も助長することは否定できないが、普通の家庭にとっては明確なルールに対して精力を集中して注ぐことができる数少ない機会だ。そして朝鮮戦争による廃墟から立ち上がった韓国にとって、その背後で絶えず人材を供給し続けてきた教育体系の功績は大きかった。(翻訳・編集/如月隼人)











