歌手の浜崎あゆみの上海での「無観客公演」が物議を醸している。独メディアのドイチェ・ヴェレ(中国語版)や仏国際放送ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版が相次ぎ報じた。

浜崎の上海公演は当初11月29日に予定されていたものの、前日の28日に急きょ中止となり、理由は「不可抗力によるもの」と説明された。浜崎本人からも、関係者やファンらに感謝と謝罪が行われた。

浜崎は29日、フェイスブックに英語で「1万4000の空席を前にしていましたが、世界のツアーオーディエンス(TA)の深い愛を感じることができ、私にとって最も忘れがたい公演の一つとなりました。このステージを生み出してくれた200人の中国と日本のスタッフ、バンドメンバー、ダンサーの皆さんに心から感謝します」とつづり、観客がいない中でパフォーマンスをする自身の写真を投稿した。

ドイチェ・ヴェレの記事は、今回の件がSNSで物議を醸し、X(旧ツイッター)では「恥をかくのは中国であって、浜崎あゆみではない」「上海はメンツをまるごと失った。もう外資に期待するのはやめてもらおう。100年後まで悪名を残すことになるだろう」といった厳しい意見が出ているほか、中国のSNS・微博(ウェイボー)でも「上海の件は私たちが間違っていました。Sorry」との声が出ていることを伝えた。

また、RFIの記事は、あるネットユーザーのコメントとして「私は浜崎あゆみが誰か知らなかったが、その(無観客ライブの)瞬間、彼女は私のアイドルになった。歌の内容でも、歌唱力の高さでも、見た目のかわいさでもない。彼女が荒唐無稽な出来事に痛快な一撃を与えてくれたからだ」と伝えたほか、中国数字時代誌(Digital Times China)がペンネーム「裱糊匠」氏による「何年後かにこの映像を振り返った時、目にするのは単なる後悔ではなく、一つの時代の断片である。私は確信している。

心根の正直な人が音楽を求め、美を求め、自由を求めることを妨げるものなど何もない、と」との文章を掲載したことを紹介した。

浜崎の上海公演の撮影スタッフを自称する人物の「謝罪声明」も物議を醸している。浜崎の無観客ライブについてはネットユーザーの間で「誠意がある」「これぞ契約精神だ」などと称賛する声が広がっていたが、一部の中国メディアが撮影スタッフだという人物の謝罪声明なるものを掲載。声明で同人物は「リハーサル時に浜崎らがステージ上にいる様子を撮影し、抖音(ドウイン。中国版TikTok)に投稿した結果、これがセルフメディアなどに転載され、結果として『浜崎あゆみが無観客の中でフルで公演を行った』という虚偽の情報の拡散を招き、関係者に迷惑をかけたことを深く後悔している」と謝罪している。

しかし、ドイチェ・ヴェレの記事は、「中国メディアによる浜崎の無観客公演はデマだと主張する報道」に対しても反発の声が上がっているとし、「フィルターバブルの中にいる人ぐらいしかだませない」「理由なき公演中止の焦点を、盗撮やリハーサルといった方向へそらそうとしている」といった意見を紹介。また、RFIの記事も「自己欺瞞(ぎまん)だ」「ふざけるな、ここまでして、誰をだますつもりなのか」「これはまさに現代版の『鹿を指して馬という』だ」といった声が上がっていることを紹介した。

RFIの記事はさらに、「本人の投稿が証拠としてある」と言及。浜崎がインスタグラムで「私達は昨日の中止要請の後、無観客の状態で1曲目からアンコールまで行ってから会場を後にしました。会えるはずだった1万4000人のTAの皆さんに向けて、演者・スタッフ全員で全身全霊で本番と寸分変わらぬ想いをもちステージをまっとうさせて頂きました」と明かしていたことを伝えている。

なお、RFIの記事はこのほか、広州や北京で日本人歌手のライブが順調に行われたとの報道があることにも触れ、「上海は日本ボイコットをやりすぎているのでは?」との声が出ていると指摘。上海は華やかで発展している印象があるものの、ハロウィーンで厳しい取り締まりが行われたり、コロナのパンデミック時にロックダウンが行われるなど、強硬な対応がとられる都市でもあるとの分析を伝えている。

(翻訳・編集/北田)

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