中国の人民元は米国との貿易紛争、低成長、超低金利、外国投資の低迷をものともせず、新型コロナの「パンデミック(世界的大流行)」が発生した2020年以降で最大の年間上昇率を達成しつつある。ロイター通信は「中国政府が人民元の国際利用を再び推進しようとしているのではないか」とのアナリストの見方を伝えた。

ロイター通信によると、中国人民銀行(中央銀行)が設定している基準値は昨年11月以降、予想以上に堅調で、経済のファンダメンタルズが弱い状況で注目を集めてきた。政策金利はドルに比べて大幅に低い。成長は低迷する消費が重しとなり、資本収支は10月末まで10カ月で2810億ドル(現レートで約43兆5550億円)の赤字だった。

その一方で、中国の経済計画は人民元に対する野心を強めているようだ。人民元の国際化については「慎重に推進する」と長年約束してきたが、10月に発表された第15次5カ年計画(2026~30年)は「慎重に」という言葉を削除した。

人民元は18年に米国の貿易制限をめぐる衝撃に対し緩衝材的な役割を果たす形で約5%下落したが、25年はほぼ3%上昇している。これは人民銀が数カ月にわたりほぼ毎朝設定する基準値で人民元の値動きを誘導し、同時に頻繁なドル買いで価格変動が大きくならないように抑えて着実な上昇を支えてきた結果だ。

欧州最大の金融機関、ソシエテ・ジェネラルのアジアマクロ担当主席ストラテジストのキヨン・ソン氏は「不安定な市場環境という状況で強く安定した人民元を示せば、中国が人民元の国際化を促進する上で適切な事例となる」と指摘。人民元を支える最大の力は人民銀で、投資銀行のアナリストに対して相場上昇の継続を期待させている。

米国の金融グループ、ゴールドマン・サックスのアナリストは「経済的および非経済的な理由の両方から、人民元の国際化は中国政府の政策優先事項となり、今後数年間で大幅に加速する可能性が高いと考えている」と説明。ゴールドマンのアナリストは「中国当局が人民元の強さに満足しているため年末までに1ドル=7元(約147円)、1年後に6.85元まで人民元高が続く」とみている。

英国ロンドンに本拠を置くスタンダードチャータードの中華圏・北アジア担当チーフエコノミストのシュアン・ディン氏は「中国政府が人民元の価値を安定させつつ緩やかな上昇を許容する傾向は、価値保存手段としての人民元に対する信用を高めるだろう」と言及。

「中国政府のこうした意図は中国の貿易競争力と資本フローの変動を管理してきた当局の実績に支えられているようだ」と分析した。(編集/日向)

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