中国発のストリートフード「麻辣湯(マーラータン)」が、日本で急速に浸透しつつある。タピオカミルクティー、韓国フライドチキンに続き、「具材のセルフチョイス+香辛スープ」という特徴を持つこの中国料理が、若者の新たな食トレンドとして脚光を浴びている。
■ ネット発の“初体験”拡散
動画投稿アプリTikTok(ティックトック)では、初めて麻辣湯を試した若者の投稿が相次ぎ、人気に拍車をかけている。インフルエンサーの葉山柚子さんは友人の紹介で東京・上野の麻辣湯店「親愛的麻辣湯」を訪れ、店頭の案内に従って野菜や冷凍品、タコなど十数種類を自ら選択。1780円で2人でも食べきれないほどのボリュームとなったオリジナルの麻辣湯が提供されると、「味わいが濃厚で具材が新鮮。食感の多様さが印象的」と満足感を語り、「週2回でも飽きない」と若年層の嗜好(しこう)を示した。
■ 麻辣湯の起源と進化
麻辣湯は中国四川省楽山市の牛華鎮が発祥とされる。19世紀末から20世紀初頭、長江の船頭や漁民が川の水で野菜を煮込み、花椒(かしょう)や唐辛子で味付けしたことが原点だ。やがて市場へ進出し、四川を代表する軽食として定着した。
そして、1980年代の四川料理ブームを機に中国全国へ拡散した。2000年代には東北地方で骨スープを用いた“東北麻辣湯”が誕生し、「張亮麻辣湯」「楊国福麻辣湯」などのチェーンブランドが全国展開した。これらの発展が海外展開の土台となり、中国版フランチャイズ飲食の新たな輸出モデルを形成した。
麻辣湯は2010年ごろから日本や韓国で店舗が増え始め、近年は一層の定着が見られる。特に24年以降は東京・池袋、上野、新宿などで新店の開業が相次ぎ、食事の時間帯には行列が常態化している。
■ 「親愛的麻辣湯」―多様性と女性客のニーズ取り込みで差別化
数あるブランドの中で、福建発の「親愛的麻辣湯」が特に存在感を示す。同ブランドは24年に「中国麻辣湯十大ブランド」に選出され、「清潔感・健康志向・若者向け」を旗印に展開。主なターゲットは女性と若年層だ。
「親愛的麻辣湯」は上海の投資会社と組み、23年に日本市場へ本格進出した。東京・高田馬場に1号店を開き、上野、西川口、横浜へと店舗を拡大してきた。運営責任者の許雅雯(シュー・ヤーウェン)氏は東京在住で、現地ニーズを踏まえた調整を担っている。
同社の競争力は多様なスープと豊富な具材にあるといい、「スープはトムヤムや沙茶、香辣など12種類を提供し、日本にある麻辣湯ブランドの中で最多」と許氏は語る。また、80種類以上の具材を常備し、ビーフンや刀削麺などの主食を無料提供する仕組みで女性客の支持を広げている。!
■ 成長モデルの裏に潜むリスク
許氏は麻辣湯を選んだ理由として「ビジネスモデルの効率性と再現性」を挙げる。「要の技術はスープで、熟練の専門料理人は不要。
ただ、専門家の一部は急速なブームが「急熱・急冷」に終わるリスクを警告する。日本では過去にタピオカや韓国チキンが一時ブームとなり、その後急速に市場が縮小した経緯がある。
この点について許氏は、「淘汰(とうた)は確かに起こり得る。立地や運営の問題で撤退する店舗も出るだろう」としながらも、「辛さ調整やサービス改善を進め、日常食として定着させられれば、長期的な市場浸透も可能だ」と見通しを語った。
四川の川辺で生まれた1杯の料理が今、東京の街角で文化と世代をまたぐ交流媒体となっている。麻辣湯はその香りと社交性を武器に、都市の味覚地図を静かに書き換えつつある。(取材/RR)
@hayama_yuko 本番の味親愛的麻辣湯の絶品麻辣湯をご紹介しますリポーターに挑戦#麻辣湯 #マーラータン #中国グルメ #映えグルメ #リポーター オリジナル楽曲 - 葉山柚子-YUZU YELLOW-











