2025年12月3日、 中国のポータルサイト・捜狐に「『呪術廻戦』はなぜ議論が絶えないのか、評価が二極化する背景とは」と題した記事が掲載された。

記事は、「24年9月、『呪術廻戦』は約6年半の連載を経て完結したが、圧倒的な売上と同様に強烈な賛否を生み出し、同作がもはや単なる熱血少年漫画の枠を超えた存在であることを証明したのである。

また、同作は少年と呪いの戦いを描く物語であると同時に、理想と現実、集団の規範と個人の意思の狭間で生き延びようとする現代の若者たちの精神を映す『鋭い鏡』でもある」と述べた。

そして、「18年3月5日、『週刊少年ジャンプ』50周年企画の目玉としてスタートした同作は、次世代の看板作品の候補として大きな期待を背負っていた。原作者・芥見下々氏は自ら影響元を公言し『BLEACH』や『NARUTO』など先行作品の要素を取り入れた結果、当初は『模倣』との批判も受けた。しかし、そうした手法がかえって理解しやすく新鮮な世界観を生み、現代都市に呪いを持ち込む設定は『日本版ハリー・ポッター』とも評された」とした。

記事は、「物語は人間の負の感情から生まれた呪霊と戦う呪術の世界を描く。主人公・虎杖悠仁(いたどりゆうじ)は人を救うため、千年の呪いの王・両面宿儺(りょうめんすくな)の指を飲み込み、処刑される危険と隣り合わせで東京呪術高専に身を投じる」と説明し、「この設定は、『週刊少年ジャンプ』的な熱血成長物語であると同時に、より複雑な現代的テーマを扱うための地盤となった」と論じた。

また、「『呪術廻戦』の世界的成功を支えたのが、制作会社・MAPPAによるアニメ化だ。原作の力強い画風を、洗練された映像美と迫力あるアクションへ昇華し『スタイリッシュで残酷』な独自の美学を確立した。さらに作品の核にあるのは冷徹な生存哲学である。虎杖は『正しい死とは何か』という問いを突きつけられ、仲間の死を背負いながら、次第に無邪気さを失っていく。この姿勢は、従来の少年漫画の楽観性から意図的に距離を取るものだ」と言及した。

さらに、「最強の呪術師・五条悟(ごじょうさとる)もまた、単なる無敵キャラではない。

彼の軽薄さの裏には、親友・夏油傑(げとうすぐる)を失った痛切な反省がある。彼は教育による変革を選び、新世代を育てることで腐敗した呪術界を変えようとした。『最強とは独り輝くためではなく、人を強くするためのもの』との彼の思想は、力に責任と継承という新たな意味を与えている」と考察した。

記事は、「『呪術廻戦』は23年前後、物語が『死滅回遊編』に入ったことで大きな転換点を迎えた。とりわけ五条悟と宿儺の『最強対決』が五条の敗北で幕を閉じたことにより、作品評価は賛否が真っ二つに分かれる。後半の展開の断片化、冗長な戦闘描写、複雑すぎる術式設定、情緒的な積み重ねを欠いた五条の敗北シーンなどに対し、作者が読者を突き放しているようだとの批判も相次いだ」とした。

一方で、「皮肉なことに、こうした強い批判はむしろ話題性を高めた。『勝つさ』『凡夫』『2.5条悟』といったセリフやミームが世界的に拡散し、毎話が更新されるたびに考察や論争が生まれた。読者は不満を口にしながらも、読むことをやめられなかったのである。結果的に作品は『たたかれながら愛される』形で完結し、累計発行部数1億部を突破するに至った」とも述べた。

その上で、「この評価の分裂こそが『呪術廻戦』の核心でもある。確実性のない時代において、単純な英雄譚(たん)や完全なハッピーエンドはもはや十分な説得力を持たない。

作中で描かれる無力感、理不尽な運命、権威への反抗、純粋な正義ではなく生存のために戦う姿勢こそが、現代の若者の感情と重なったのだ。同作は爽快感を提供する作品ではなく、不安や怒りを共有し、意味を模索する場を提供する作品へと変質したのである」と論じた。

そして、「原作漫画完結後も、『呪術廻戦』の影響力は衰えていない。MAPPAによるアニメシリーズは世界的成功を収め、第2期『渋谷事変』に続き、第3期『死滅回游』も26年1月の放送開始が明らかになっており、後半の複雑な展開をいかに映像化するかが新たな焦点となっている。物語の組み立て方には課題が残るが、伝統的な少年漫画の枠組みのを借りつつ、正解のない不安な現代において、いかに生き延びるべきかという問いを鋭く描き出した。『呪い』を通じて若者たちの葛藤と生命力を映し出し、一つの文化現象となった時代的作品である」と結んだ。(翻訳・編集/岩田)

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