中国メディアの環球時報は15日、米サイトのNew Security Beatに掲載された「中国の電気自動車(EV)メーカーは米国の同業者をはるかにしのいでいる」とする論評を紹介した。筆者は米ジョージ・ワシントン大学工学管理・システム工学部のジョン・ヘルベストン教授。

論評はまず、米大手自動車メーカー、フォードの最高経営責任者(CEO)が中国の小米(シャオミ)が製造したEV「SU7」に感銘を受け、日常的に愛用していることを取り上げた。

そして、この中国製EVは、1回の充電で345マイル(約550キロ)の走行距離を誇り、価格はわずか3万ドル(約468万円)で、米国にはこれほどの車はないと伝えた。

論評は「これは驚くには当たらない」とし、米国が過去10年間、EV政策をめぐって議論を重ねてきた一方で、中国は圧倒的なリードを築いてきたと指摘。筆者が最近、サイエンス誌に掲載した記事で明らかにしたように、2024年に中国で販売された新車のほぼ半数がEVだったのに対し、米国ではその割合は10%に満たないことに触れた。

論評によると、中国のEV主導の台頭に対する米国の対応は壁を築くことで、中国製EVに歴史的に高い関税を課し、中国企業を米国のEVサプライチェーンから締め出してきた。しかし、この保護主義的なアプローチはイノベーションを生まない。

論評は「1980年代にトヨタなどの日本の自動車メーカーが米国に進出した時のことを覚えているだろうか」とし、「批評家たちは米国の雇用が奪われると警告したが、日本のメーカーは新しい製造技術を米国に持ち込み、米国の自動車産業全体の競争力を高めた。米国の労働者は雇用を維持し、米国企業はより良い車を作る方法を学び、消費者はより手頃な価格でより質の高い車の選択肢を増やすことができた」とした。

論評は「米国にとってより賢明な協働とはどのようなものか」について、フォードが中国を拠点とする世界最大手のEV向けリチウムイオン電池メーカー、寧徳時代新能源科技(CATL)と検討したように、米国企業は中国のバッテリー技術のライセンス供与を受けることや、米国の製造施設への中国からの投資を歓迎し、雇用と専門知識の両方を米国の労働者にもたらすこと、米国はソフトウエアと先端素材における強みを活用しながら、中国の優れた製造業から学ぶことを挙げた。

また「現在のような孤立の道は、米国の自動車産業に打撃を与えるだけではない」と指摘。手頃な価格のEVがなければ、米国は気候変動対策の目標達成においてさらに後れを取るリスクがあり、米国の消費者は時代遅れの技術に高額な費用を支払わなければならないとした。

論評によると、米国の自動車産業は1000万人の雇用を支え、年間7300億ドル(約113兆8800億円)の収入を生み出している。

論評は「米国は、国際競争力が低下する中で関税の壁の陰に隠れることで(少なくとも一時的には)これらの雇用を守ろうとすることも、安全保障上のリスクを管理しつつ、EV革命の恩恵を米国の労働者と消費者に確実に提供しながら、革新的な中国企業と戦略的に連携することも考えられる。歴史は、米国の産業が保護主義ではなく競争によって繁栄してきたことを証明している。今こそ、中国のEVを恐れるのをやめ、彼らから学ぶべき時だ」とした。(翻訳・編集/柳川)

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