2025年12月15日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、ドイツの経済界が中国に対してなおも「甘い幻想」を抱いているとするドイツメディアの報道を紹介した。

記事が紹介したのはDLFドイツ放送ラジオの評論。

評論はまず、ドイツのワーデフール外相が先週訪中した際、中国によるレアアースの輸出規制継続やロシアのウクライナ侵攻への支持といった点で事実上何の収穫も得られなかったと指摘した。

その一方で、ドイツの経済界はなおも中国に対して「甘い幻想」を抱いているとし、「現実」を直視することになったドイツ政界が経済界に対して対中依存の低減と戦略的自律の実現を促すべきだと主張した。

その上で、経済界が抱いている「甘い幻想」について、まず訪中に同行した経済界代表団が、ワーデフール外相が中国政府に対してレアアース規制や親ロシアの問題について言及するという「当然の行為」を外交的成果として評価しているとして批判した。

また、経済界は中国の指導部が描く「現代的で経済活力に満ちた繁栄国家」という壮大な物語を過度に信用しており、中国を評価する際に高層ビルや高速鉄道、ハイテク電気自動車(EV)といった「光」の側面ばかりを好んで話す傾向にあるとも指摘。輸出依存のゆがんだ経済構造や年金制度、失業率、貧富の格差といった社会問題、高齢化や医療体制崩壊危機への対応の遅れ、地方政府の債務問題の深刻化といった中国経済の大きな問題から目を背けていると伝えた。

評論は、中国政府がこのような問題に起因する国内の経済的圧力を和らげるべく、強硬な外交と武力の誇示を試み始める中、仮に東アジア地域で紛争が起きれば世界的なサプライチェーンが寸断する「経済的災難」が発生する可能性があるとした。そして、ドイツひいては欧州全体の政界は、経済界に対し、サプライチェーンを再編し、レアアースだけでなく、化学基礎原料、チップ、医薬品、日用品といった分野でも中国への依存から脱却するよう促す必要があると論じた。

このほか、年明けに訪中を控えるメルツ首相に対して「経済界代表の助言を聞いているだけではいけない」と提言して評論を締めくくった。(編集・翻訳/川尻)

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