中国メディアの参考消息は19日、シンガポールのオンラインメディア、シンクチャイナに掲載された「米中大豆貿易の復活は世界市場を再構築する可能性がある」とする論評を紹介した。筆者はオックスフォード・グローバル・ソサエティの研究員、ジェネビーブ・ドネロン・メイ氏。

論評はまず、米当局者が10月末、中国が米国産大豆の購入再開に合意したと発表したことを受け、シカゴ商品取引所(CBOT)の大豆先物が2024年6月以来の 高値に急騰したことに触れた。

そして「食料安全保障は中国当局にとって長年の懸案事項だった」とし、「大豆は食用油と飼料の重要な原料であり、中国と米国の貿易関係において中心的な主要商品でもある。中国は世界4位の大豆生産国だが、その輸入量は世界の大豆貿易の60%以上を占めている。国産大豆の大部分は、豆腐、豆乳、その他の伝統食品などの用途に充てられており、輸入大豆は飼料と食用油の国内需要を満たしている」とした。

論評によると、この構造的な依存関係により、大豆は戦略的資源であると同時に地政学的な脆弱性となり、中国の長期的な計画と短期的な外交的関与に影響を与えている。中国は米国との第1次貿易戦争における経験を経て、単一供給国への過度な依存からの脱却を目指す長年の取り組みを加速させた。2018年以前は中国の大豆輸入量の約3分の1を米国の農家が供給していた。貿易戦争が始まって以降はブラジルが急速に米国を追い抜いた。ブラジルの優位性は依然として続いている。24年に中国が輸入した過去最高の1億500万トンの大豆のうち、ブラジルが7455万トン、米国が2214万トン、アルゼンチンが410万トンを供給した。この傾向は25年も続いている。中国が4月に米国産大豆への関税を34%に引き上げたことを受けて、米国産大豆輸出はほぼゼロに落ち込んだ。

1~8月に中国が輸入した米国産大豆は593万トンにとどまった。

論評によると、中国はより一層のリスクヘッジのため、新たな供給源を模索している。エチオピア、アンゴラ、ロシアとの最近の合意は、大豆の代替供給源開拓に向けた継続的な取り組みを反映している。同時に、中国国内の大豆生産量は今年、2100万トンに達すると予測されており、5年前と比べて顕著に増加している。

論評によると、米国産大豆の購入の一部回復は、経済外交と保険メカニズムの両方の役割を果たす。つまり、単一供給国への過度の依存に対するヘッジであり、将来の地政学的ショックに対する緩衝材となる。米国への影響は大きい。中国による新たな購入により米国の農家は肩の荷を下ろすことができる。世界貿易とサプライチェーンへの影響も大きい。世界最大の食料生産国であり輸入国でもある中国にとって、その農業貿易政策の変更は食料、資本、貿易の流れに影響を与える。

論評は「中国の調達政策の調整が限定的であったとしても、他の主要な輸入国・地域に供給の余地をもたらし、輸出国に価格と生産の調整を促す可能性がある。特に東南アジア、中東、アフリカ地域は、大豆の供給量の増加と価格競争力の強化から恩恵を受ける可能性がある」とした。

(翻訳・編集/柳川)

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