フランスメディアのRFIは26日付で、中国系ネット通販が欧州で勢力を急拡大させていると、複数の現地メディアを引用しながら報じた。
仏経済紙のレ・ゼコーは、「2025年、中国電子商取引の波がフランスを席巻した」と題した記事で、この1年間にシーイン(Shein)などの中国電子商取引大手がフランスの商業界に与えた衝撃を大きく取り上げた。
これらの中国系通販サイトによる衣料品販売量は、わずか数か月でフランスの衣料品販売量の6%を占めるようになった。シーインの場合は単独で3%だ。商品の平均価格はわずか9ユーロ(約1700円)で、対抗できるライバルはほとんど存在しない。
世論が最も沸騰したのは、シーインがパリの名門百貨店のベー・アッシュ・ヴェー(BHV)に出店したことだった。同件は、「ウルトラファストファッション」とフランスのファッションおよび小売体系への正面衝突と見なされた。フランスの政界、商界、規制機関は、毎日7000点の新商品を投入し、過剰な消費を促し、製品が化学繊維中心であるというビジネスモデルに対して強く反発した。
一方で、中国のネット通販業者は問題も起こしている。シーインのネット通販サイトでは、児童ポルノ関連商品や武器が扱われていたことが発覚した。政府は罰金、調査、小包の差し押さえなど、シーインに対する圧力を強め、EUに通報した。
シーインは一時、ネット通販のマーケットプレイス業務(他の業者の商品を扱い手数料を徴収するビジネス)を停止した。
中国のもう一つの大手である京東(JD.com)も欧州での布陣拡大を加速させている。まず、欧州の家電販売小売大手のセコノミー(Ceconomy)の買収を通じて、欧州でのオフライン小売ネットワークを拡張した。そして、25年にはネット通販サイトのジョイバイ(Joybuy)の試験運用を開始した。26年内に正式運用を開始する予定だ。同サイトではあらゆる価格帯の中国内外ブランドの商品を販売し、さらにパリでの当日配送サービスのような効率的な物流に挑む。そのビジネスモデルはアマゾンに近いとされる。
レ・ゼコーの記事は、「中国のネット通販大手は、オンライン分野での強力な拡張に実店舗の配置を組み合わせることで、フランスおよび欧州の小売業者に対する『二重の圧迫』を形成しており、爆発的な業界変革をもたらす可能性がある」と評した。
シーインは欧州での物流体系の構築も加速している。同社はこのほど、欧州における主要な物流ハブとして、ポーランドで超大型物流センターを稼働させたと発表した。同センターは高度に自動化されており、フル稼働時の敷地面積は74万平方メートルに達する。同センター初期段階で2000人分の雇用を創出した。
同プラットフォームは中国からの荷物を扱わず、主に欧州現地で生産された商品を扱う。倉庫保管と配送サービスを提供することで、「より速く、より信頼性の高い配送」を保証するという。
EUは26年から150ユーロ(約2万8000円)以下の小包に対する免税政策を取り消し、統一徴収メカニズムを導入する。シーインはポーランドに建設した物流センターの利用で、EU域外からの小包への最低3ユーロ(約560円)の課税を回避できるという。
シーインが物流センターの所在地にポーランドを選んだことには明確な戦略的考察がある。ポーランドはドイツとチェコに隣接し、交通網が発達しており、バルト海とアドリア海を結ぶ軸線に位置しており、さらに欧州最大の道路貨物運送国であるからだ。アマゾンも、すでにこの地に重要な配送センターを設置している。
しかしシーインのポーランド進出は、論争にも直面している。ネット通販業界は、シーインはEUの規範を十分に順守しておらず、不公正な競争を形成していると非難しており、ポーランド経済に毎年約20億ユーロ(約3700億円)の損失を与えると見積もっている。(翻訳・編集/如月隼人)











