外務省が12月に発出した2本の広域情報は、海外の危険が現地だけに潜むものではないことを明示している。制服動画や番号偽装で迫る特殊詐欺、そして高収入の誘いから渡航、監禁を経て犯罪加担へと誘導する闇バイト。
「それらしさ」を演出する詐欺
海外安全情報が扱うのはもはやテロや感染症だけではない。今やスマートフォン越しの詐欺が日常的な判断力を標的にする時代になっている。外務省によると、海外で特殊詐欺が発生しており、日本国大使館・総領事館職員、日本の警察官や税関職員などをかたるケースが確認されている。
厄介なのは、詐欺の手口が「それらしさ」の演出に特化してきた点だ。日本の政府機関の制服を着用した姿を動画などで示してだますケースまで報告されている。視覚情報は文字情報より強く人間の判断を揺さぶる。脳は字面より制服に弱いのだ。
ただし、ここは明確に断言できる。外務省は日本国大使館・総領事館、警察官や税関職員といった日本の公的機関が正式な手続によらず送金を要求することはないと明記している。この原則を知っていれば、どれほど巧妙な演出であろうと対処の軸は揺るがない。
闇バイトのわな、被害者と加害者が同じ入口から
話は「だまされない」心得だけでは終わらない。外務省の広域情報によると、海外の闇バイトに応募し、犯罪組織に「かけ子」として特殊詐欺に加担させられるケースや、意図せず違法薬物の運び屋として犯罪に加担してしまい、現地警察に拘束または保護される事案が続いているという。未成年者が加担させられたり、犯罪組織内部で暴行を受けたりするケースも報告されている。
ここで押さえるべきは構造だ。闇バイトの誘いは入り口で、そこから特殊詐欺や密輸へとつながっていく。犯罪組織は「短期間で多額の報酬」「楽して高収入」などの甘い誘い文句で実行役(捨て駒)を募っていると外務省は明記する。
それに応募すれば深刻な事態となる。外務省は海外であっても犯罪行為に対する刑罰は免れないと警告している。「知らなかった」「聞いていた内容と違う」は、人生相談としては同情を誘うが、捜査や裁判の場では万能の免罪符ではない。
警察庁の注意喚起も具体的だ。オンラインゲームやインターネットなどで知り合った面識もない者から海外でもうかる仕事に誘われ、渡航した結果、脅迫・監禁され、犯罪に加担させられる事案が発生している。タイへ渡航後にミャンマーへ密入国させられた例、ノルマ未達で暴行を受ける環境下で詐欺をさせられた例など、実例は枚挙にいとまがない。だから結論は単純だ。
精神論ではなく「通信の作法」、今すぐできる四つの対策
では、どう防ぐか。答えは常識に立ち返ることだ。
1. 送金、ギフトカード、番号要求にはゼロ回答とする
迷った時点で赤信号だ。正当な機関は即座の送金を迫らない。
2. 「いったん切る」を最優先にする
相手の権威(制服・肩書)より、こちらの呼吸を取り戻すのが先だ。実在する電話番号を偽装して表示させる手口も確認されているため、画面表示は信用できない。
3. 連絡先は自分で調べ直す
番号偽装の手口が存在する以上、画面に表示された番号をそのまま信じてはならない。公式サイトなどから自分で調べた番号に掛け直す。
4. 一人で抱え込まない
外務省は家族や外務省、警察への相談を促している。また、警察相談専用窓口「#9110」への相談も有効だ。
闇バイトや特殊詐欺は国籍を選ばず、「判断の隙」を突く犯罪として国際化している。フォーカス台湾は2025年に日本で詐欺関与を疑われ逮捕された台湾人が約50人に達し、過去(23年4人、24年5人)から急増したと報道した。











