世界のスマートウオッチ市場でシャオミ(小米)がサムスンを出荷シェアで上回り、世界3位に浮上した。これは単なる価格競争の勝利ではない。

視点をメーカーから消費者へ移すと、そこには「何を基準に選ぶか」という判断軸の変化がある。

シャオミがサムスンを逆転、変わる消費者の購買判断

2025年第3四半期の世界スマートウオッチ市場において、アップルが約23%で首位、ファーウェイ(華為技術)が約17%で2位、シャオミが約9%で3位、サムスンが約8%で4位となった。

業界メディアが報じた「シャオミがサムスンを逆転」という事実は、この1ポイント差に集約される。しかし、ここで注目すべきは順位そのものではない。背後にある数千万単位の購買判断がどの方向へ動いたのかだ。

メーカーの競争戦略が変わったから市場が動いたのではない。消費者の選び方が先に変わり、結果として順位が動いたと捉える方が実態に近い。

高機能競争の終焉、腕時計は「健康管理ツール」に

スマートウオッチはかつて「手首に載せたスマートフォン」だった。だが25年時点で、消費者が最も重視しているのはアプリ数や演算性能ではない。心拍数、睡眠、血中酸素、運動量といった健康関連機能が毎日安定して使えるかどうかだ。

シャオミは医療機器レベルの先進性を前面に出さなかった。その代わり、「十分な精度」「分かりやすいユーザーインターフェース」「過不足のない機能」を低価格帯で提供した。このさじ加減の良さが多くのユーザーにとって最適解となった。

新興市場が示す現実、初購入者が市場を動かす

成長をけん引したのは中国内陸部、東南アジア、南米といった新興市場だ。これらの地域ではスマートウオッチは買い替え商品ではなく、初めて購入する商品だ。

ここで比較されるのは高級モデル同士ではない。「生活に役立つか」「価格が現実的か」という極めて素朴な基準だ。

シャオミは25年、スマートウオッチの出荷を前年比約22%増と大きく伸ばした。一方のサムスンは、販売規模自体は維持したものの、成長率では中国勢に及ばず、シェアは約8%へと低下した。中低価格帯での競争力の差がそのまま順位差として表れた形だ。

サムスンのブランド力が弱まったのではない

サムスンのブランド力が失われたわけではない。変わったのは、ブランドが購買の決定打にならなくなった点だ。

かつては「どのブランドか」が品質保証だった。だが現在は、「何ができて、価格はいくらか」が先に問われる。ブランドは安心材料の一つに後退し、絶対的な選択理由ではなくなった。

この環境下では、価格と機能のバランスを最適化した企業が前に出る。シャオミの逆転は、その構造変化を可視化した事例にすぎない。

次の主戦場はAI

今後の競争軸は明確だ。

人工知能(AI)を活用した健康予測、異常検知、生活アドバイスだ。

アップルはプレミアムから中価格帯へ裾野を広げ、ファーウェイとシャオミはボリュームゾーンを押さえながら高度化を進める。一方サムスンは、Galaxy Watchシリーズなどを通じて再定義を迫られている。

重要なのは技術の先進性ではない。誰の日常をどこまで楽にできるかという設計思想だ。今回の順位変動は、中国メーカーの台頭というより、消費者の判断軸が成熟した結果だ。市場はもはや「高いか安いか」では動かない。使われ続ける理由を提示できた企業だけが、次の成長局面を手にする。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

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