中国では毎日経済新聞や中国商報など多くのメディアが、家具類などの大型量販店チェーンのイケアが、中国各地で一斉に閉店するという話題を取り上げた。その背景には深刻な経営不振があるのではなく、ビジネスモデルの戦略的転換があるという。
イケア中国は7日、2月2日をもって上海宝山、広州番禺、天津中北など7店舗を閉鎖すると発表した。この情報が伝わるや、各地の店舗には瞬く間に大量の人が押し寄せた。ショールーム内をショッピングカートで縫うように進む人、最後の1台となったデスクを奪い合って言い争う人、そして多くの人々が静かに特徴的な建物である「ブルーボックス」の前に立ち、記念撮影をした。この一見混乱した「別れの波」の背景には、中国の家具インテリア類の消費モデルの変遷がある。
イケア中国の収益は減少を続けており、2024年には19年のピーク時から約3割減の約111億5000万元(約2523億円)にまで落ち込んだ。しかし、多くの店舗の一斉閉店の直接の原因は経営不振ではない。むしろ、人々の消費行動の変化に、できるだけ先回りして対応する戦略転換の一環だ。
中国に進出したイケアは、都市郊外に大型店舗を構えた。顧客自身が商品を見て歩く倉庫型スタイル、そしてレストランで提供されるスウェーデンミートボールなど「新たな食」が人々を魅了した。イケアは都市部の中産階級家庭にとって、「週末の目的地」になった。自家用車の普及、都市の拡大、そして消費水準の向上は、中国のイケアの追い風だった。
しかし現在では、不景気や若者のオンラインショッピングへの依存により、従来型の大型店舗の高コストや、来店者数がそのまま売り上げに結びつかないという問題が日増しに顕著になっている。
さらに厳しい状況は、ローカルブランドの台頭にある。源氏木語や林氏家居といった新興競合ブランドは、中国の家庭により適したデザイン、無料配送や設置、そして迅速な新商品投入能力によって、イケアに取って替わる存在になった。24年には、中国でネット通販の大型セールが行われる11月11日の「ダブルイレブン」の天猫(Tモール)での家具売上高トップ3がいずれも国内ブランドであり、イケアは7位に甘んじた。
また、美団や京東の即時配送サービスは、短距離ならば30分以内での配達を実現しており、長距離を移動しての買い物の必要性をさらに弱めている。人々はもはや、ソファ一つを買うためだけに、丸一日かけて郊外にあるイケア店舗に行こうとは思わなくなった。
しかし、イケアがビジネス環境の悪化に受身であるわけではない。目指しているのは「精密なローカル戦略」だ。イケアは今後2年間で、北京や深センなどに10店舗以上の「小型コミュニティー店」を開設する計画だ。店舗面積は数百から1千平方メートル程度が多く、住宅街の近くに立地し、業務としては家全体のデザイン相談や小物商品の販売に注力する。顧客はインテリアデザイナーに自宅まで来てもらって室内の寸法の計測に基づいて家具などの提案をしてもらうことができる。そしてオンラインで注文して自宅配送で受け取る。つまりオフラインとオンラインを融合させた販売方式だ。
このような小型店舗と各種サービス、オンラインでの注文を組み合わせたモデルは、大量小売ビジネスの新たな主流になっている。ウォルマート中国は大型スーパーの閉鎖を加速させる一方で住宅地で小型店舗を展開し、ニトリは中国の100以上の店舗をすべてショッピングセンター内に設置している。フランス系スポーツ用品販売のデカトロンは「良品体験型小型店舗」を導入した。中国家具協会によれば、25年1月-11月の業界全体の売上高は前年同期比で9.1%減少したが、オンライン販売は成長を維持した。
これらの動きを発生させている重要な要因は、消費行動の合理化と断片化だ。「25年中国家具類消費トレンド研究報告」は、リフォームが市場全体の7割以上を占めると予測した。つまり、家具を「新居購入時に大量購入して一度でそろえる」のではなく、同じ家に住み続けながら高頻度、小規模、かつ個人の嗜好を反映させて「家具類を更新し続ける」パターンだ。従来型の大型店舗はこのような購買リズムに適応しにくいが、小型店と即時配送を組み合わせれば、「今日替えたいと思った。明日には使いたい」という即時的な欲求をよりよく満たすことができる。
消費者にとって、イケアの戦略転換は別れであると同時に適応でもある。家族の記憶を刻んできた「ブルーボックス」は姿を消していくかもしれないが、ブランドが消滅するわけではなく、より軽やかな形で日常生活に溶け込んでいく。なお、在庫一掃が終わった後もアフターサービスは全国のカスタマーセンターが統合して引き継ぎ、オンラインプラットフォームも運営を継続する。
イケア中国の変革は業界全体にも重要な示唆を与えている。未来の家具類小売は、店の大きさや商品の種類の多さを競うのではなく、「ユーザーをより理解し、より速く応答し、より細やかなサービスを提供する」ことを競うものになる。イケアの転換は単なる7店舗の閉鎖ではなく、一つの時代の縮図であり、「家具を売る」から「ライフスタイル・ソリューションの提供」への変化だ。
今後数年は、さらに多くの従来型大型店舗が同様の決断を迫られると予想される。オンラインとオフラインのデータおよびサービスのループをいち早く繋(つな)げた者が、「スモール・イズ・ビューティフル」という新たなレースでの先頭走者になるだろう。イケアの新たな一歩は、困難ではあるかもしれないが、中国の家具小売業界の次の10年を明確に指し示している。(翻訳・編集/如月隼人)
— 中国動画 (@RC00547555) January 10, 2026











