年末から年始にかけて、地球上の生物、そして私たち現生人類(ホモ・サピエンス)の運命について考える機会があった。地球では、これまで5回生命の大絶滅が起きたが、現在6度目が進行中で、それは主に人間の責任に帰せられるという。
「6回目」が現在進行中
昨年暮れ、東京・上野の国立科学博物館で開かれている「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」(2月23日まで開催)に足を運んだ。大絶滅といえば、小惑星の衝突による気候の大変動で恐竜が死滅した約6600万年前のものが有名だが、そのほかにも約4億4000万年前、約3億8000万年前~3億6000万年前、約2億5200万年前、約2億100万年前にも、それぞれ生物種の75%以上が姿を消す事態が発生している。大絶滅展では、5回の大絶滅の原因を説明するとともに、当時の生物の骨格標本(レプリカ含む)や化石などを展示している。
この5回の中でも、2億5200万年前のペルム紀末の大絶滅は、陸上生物の97%が死滅する史上最大の惨劇だった。シベリアで発生した大規模な火山活動で有毒な火山ガスが全地球に降り注いだのが主因だが、他の四つの事例でも何らかの形で火山活動が作用している。6600万年前の絶滅も、小惑星の衝突に加え、現在のインド・デカン高原の火山活動による寒冷化と酸性雨の影響があったという。
5回の大絶滅は、すべて遠い過去に起きた出来事だが、私がこの展覧会に関心を持ったのは、現在、人間活動を主因とする6度目の大絶滅が進行中だといわれるからだ。実際、ホモ・サピエンスが北米大陸に進出した約1万5000年前以降、同大陸に生息していた数十種類の大型哺乳類がほとんど死滅したことに代表されるように、狩猟や森林開発、化石燃料の消費など、人類のさまざまな行動が自然界に大きなダメージを与えているのは間違いない。とはいえ、今のところ「200万年で75%以上の種の死滅」という大絶滅の定義を満たしていないし、なにより過去5回の大絶滅でも、生命はその後力強く復活・進化しており、それほど心配する必要はないのでは、という気もする。ところが、年明けに読んだ本で強烈なパンチを食らった。ほかでもない私たちホモ・サピエンスが、核戦争や小惑星の衝突などがなくても、今後1万年以内に絶滅するというのだ。
日中韓は「人口半減クラブ」入り
問題の本は、英国の古生物学者ヘンリー・ジー氏が著した「ホモ・サピエンス30万年、栄光と破滅の物語 人類帝国衰亡史」(2025年ダイヤモンド社)だ。同書によると、現在約80億人の世界人口は、2064年に97億3000万人でピークを迎えた後に減少に転じ、2100年には87億9000万人まで減少する。その中でも、2100年までに人口が現在の半分になる「半減クラブ」に属する国が23カ国あるという。その代表は、いうまでもなく日本だ。日本以上に少子化が進む韓国も当然このクラブに入るだろう。
同書は、中国は2100年に人口が現在から48%減るものの、ぎりぎり半減しないとしている。しかし、これは2017年の出生率(1.53)を基に算出した数字だ。中国の出生率はその後急激に落ち込んでおり、現在は1.0内外といわれる。晴れて半減クラブ入りしたのは間違いない。東アジア各国は人口減少のフロントランナーだが、特に大国・中国の減少が世界全体の人口数に与える影響は甚大だ。
よく言われることだが、一度出生率が低下に向かうと、再び上向かせるのは難しい。そして、人口が減り始めた社会の減少テンポはすさまじい。人口1億人の国で、100年で半減するとした場合、100年後5000万人、200年後2500万人…と計算してみるといい。
これは極端なケースかもしれない。しかし著者によると、世界平均の出生率を比較的高め(1.5~1.75)に設定しても、世界人口は2200年には26億~56億人、2300年には9億~32億人にまで減少する。こうした人口減少の理由は一つではないが、世界的な男性の生殖能力の低下 (20世紀後半から世界中で精子数の減少が報告されている)、晩婚化、気候変動の影響、遺伝的な均質性による感染症への脆弱性などが挙げられる。人口が減った社会では活力が失われて科学や技術は停滞し、近親婚の増加で体質の虚弱化が進む。その結果、1万年以内の人類絶滅に向けたカウントダウンが始まる…というわけだ。
出生率向上に「おせっかい」が効果的?
私のような想像力の乏しい人間には、1万年後の人類絶滅と言われても、なかなか実感がわかない。しかし、孫娘が生きているうちにやってくる2100年に、日本の人口が現在の半分になると言われると、それは大変だ、と思う。その意味で、このほど日本記者クラブで行われた八代尚宏昭和女子大学特命教授、鈴木亘学習院大学教授による「人口減少時代を生きる―経済学から見た結婚行動の変化」と題された記者会見は興味深かった。
八代、鈴木両氏によると、岸田文雄政権が2023年に打ち出した「異次元の少子化対策」は、出生率のアップにはほとんど意味がないのだという。なぜなら、同対策の中身は児童手当の拡充や出産育児一時金の引き上げなど子育てへの支援が中心だが、日本の出生率(2024年で1.15)が低いのは結婚そのものが少ないことが大きいからだ。日本では、既婚カップルの出生率は1.9前後と人口維持に必要な水準(2.1)に近くなっており、結婚すれば子どもを持つ可能性が高い。
では、どうして現代の日本で結婚率が低下しているのか。両氏は、経済的な理由などのほか、「周りの結婚へのプレッシャー、おせっかい、紹介、仲介などがなくなったことが未婚率上昇の要因である可能性」があると指摘する。こうした言動を、行動経済学では「ナッジ(nudge)」というそうだが、これが結婚を先送りしている人たちの背中を押す効果があるという。
とはいえ、「女性は25歳までに結婚しなくちゃ」と両親や親せきが急かしたり、職場の上司が「君にお似合いの女性を見つけたよ。そろそろ身を固めたらどうだ」と見合いを勧めたり、といった昭和のやり方を復活させるのは難しいだろう。政策としてできるのは、せいぜい出会いの機会や結婚関連情報を独身者に提供したり、結婚相談所の利用に補助を出したりする程度。改めて「少子化対策に特効薬はない」(鈴木教授)と思い知った次第だ。











