香港メディアの亜洲週刊は1月30日付で、フィリピンのセブ市内で発生した、野積みされたごみ山の崩壊を紹介する記事を発表した。フィリピンではこれまでも何度か、ごみ山の崩壊が発生している。

亜洲週刊はごみ山の崩壊には安全性や法令を無視する業者や、政府の腐敗、さらに危険で衛生面に問題がある状態で働かざるをえない貧困層があると指摘した。以下は、亜洲週刊の記事を土台に再構成した文章だ。

轟音と共に崩壊、瞬時にして作業場を飲み込む

今回の崩壊事故はフィリピンのセブ市にある敷地面積20ヘクタールのビナリウごみ野積み場で1月8日午後5時に発生した。ごみは高さ35メートルまで積み上げられており、降り続く豪雨と地震の余震の衝撃を受けて轟音と共に崩壊した。崩壊に伴いごみ山からは鋼材や建築廃棄物が飛び出し、液体が噴出した。崩壊は瞬時に下方にあった分別作業場、修理補修場、事務棟を飲み込んだ。

現場では100人以上が作業を行っており、うち54人が生き埋めになった。自力あるいは仲間に助けられて抜け出せたのはわずか18人だった。10日間にわたる昼夜の捜索救助により、36人の死亡が確認された。犠牲者の多くはごみの分別に頼って生活を維持していた多くの貧困家庭の労働者だった。

フィリピンでまたも「ごみ山」の崩壊、セブで36人が犠牲に―香港メディア

法令と安全性を無視したごみ処理施設の運営

フィリピンの専門家およびメディアは、事故の原因は業者が利益を追求するために、違法にごみ山の山体を切削して底部の土壌を採掘した後に新しいごみを積み上げたことで、堆積体の傾斜角度が安全基準を大幅に超えたことにあると指摘した。

ごみ処理場の運営を委託されたプライム・インテグレーテッド・ウェイスト・ソリューション社(PIWS)は利益の最大化を追求するため、長期にわたり違法にごみ山の構造を改造していた。ビナリウごみ埋立場の管理を請け負ったのは18年で、PIWSは元からあった山体を許可なしに切削し、底部の土壌を採掘した後に新しいごみを投入した。このことで、ごみ山の傾斜角度は設計上許容される25度から45度へと上昇した。

24年の監査報告書は排水システムの機能喪失を指摘したが、是正はされなかった。

ビナリウ処理場では、排水システムが機能を失ったためにごみ層に長期にわたって水が溜まり、鋼鉄の梁の支持構造が腐食して破断したことも崩壊に至った原因とされる。

セブ市は事故発生前の1カ月間の降雨量が通年の平均降雨量の120%に達する異常気象に見舞われた。ごみ層は吸水して重量が30%増加した。さらに25年12月にフィリピン海で発生したマグニチュード6.7の地震ではセブ市も大きな揺れに襲われた。これらにより、ごみの山は極めて不安定な状態になった。フィリピン環境省の調査によると、地震によるごみ山の底部の土壌液状化の深さは8メートルに達していた。

フィリピンでは24年の改正「生態固体廃棄物管理法」で、埋立地には安定性監視装置の設置が義務付けられていたが、ビナリウ処理場では設置されていなかった。環境省中部ビサヤ事務所はビナリウ処理場を25年7月に検査した際に、無許可の土木工事が行われていることを発見したが、口頭での警告に留まり処罰は行わなかった。

業者と官僚が癒着、繰り返される悲劇

フィリピンでは2000年にケソン市のパヤタスごみ処理場での200人が犠牲になった崩壊事故を受け、01年に「生態固体廃棄物管理法」が施行されたが、核心となる条項は有名無実化している。フィリピンでは11年にルソン島北部バギオ市のごみ集積所で擁壁が崩壊し、13年にはマニラ近郊のリサール州ロドリゲス野積み場の斜面が崩落し、いずれも死者が発生した。

フィリピン全土の343カ所のごみの野積み施設のうち、82%に違法な操業が確認されたが、18年から25年の間に閉鎖されたのはわずか3カ所だった。

フィリピンにはごみ処理を行う非正規労働者が200万人いるが、1日の平均収入は5ドル(約780円)に満たず、防護条件のない状況下でのごみの分別作業などを強いられている。1月8日の事故の犠牲者の70%はそのような作業員であり、労災保険に加入しておらず、安全訓練も受けていなかった。

調査によれば、ごみ処理事業を行うPIWSは政治献金を通じて行政との「利益共同体」を形成していた。同社は22年から25年の間に、セブ市の官僚に対して2000万ペソ(約5300万円)を超える賄賂を贈り、契約更新と規制免除を獲得していた。

フィリピン環境省は1月8日の事故を受け、関連する企業に業務停止命令を出し、法令順守計画の提出を要求した。フィリピン上院も調査に着手し、全国のごみ野積み場の合法性を審査するよう要求した。

マルコス大統領は徹底調査と責任追及を約束した。環境省は地方政府と共同で監督管理措置を審査し、「生態固体廃棄物管理法」の実施細則の改訂を推進している。長期的な措置としては、フィリピン全土のごみ処理場の安全性の評価やごみ焼却発電の研究が含まれ、また「廃棄物エネルギー法」の改正も計画している。

しかし環境保護団体のグリーンピースは、フィリピンでは危険な廃棄物が年13%増加しており、処理施設の数が不足していると指摘し、「都市がごみによって封鎖されている状態」と評した。(翻訳・編集/如月隼人)

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