2026年2月6日、台湾メディア・自由時報は、半導体受託製造(ファウンドリ)の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が建設を進める熊本県内第2工場の製造プロセスを大幅にアップグレードし、日本国内初となる3ナノメートル(3nm)プロセスの量産を行う方針であることを報じた。

記事は、TSMCの魏哲家(シーシー・ウェイ)会長兼最高経営責任者(CEO)が5日、日本の高市早苗首相を表敬訪問し、今回の投資計画を伝えたことを紹介。

当初予定していた6~12ナノプロセスから先端の3ナノへと前倒しすることで、投資総額が122億ドル(約1兆9000億円)から170億ドル(約2兆7000億円)に拡大する見通しであることを伝えた。 これに伴い、日本政府も従来の最大7320億円から補助金を増額する方向で検討を開始したとしている。

そして、台湾の半導体の技術を守る活動を行う市民団体の代表的メンバー、許美華(シュー・メイホア)氏が、TSMCが日本への先端投資を急ぐ背景には台湾国内の深刻なリソース不足があることを指摘したことを伝えた。

記事によると許氏は、AI(人工知能)やHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)向け需要の爆発的な増加に対し、台湾の土地、電力、水、人材といったインフラ供給がすでに限界に達していると分析。今回の決定は、TSMCが日本国内の豊富なリソースを確保し、増産要求に応えるための戦略的な選択であるとの見解を示した。

許氏はまた、今回の動きには他国の競合企業をけん制する強力な狙いがあるとも指摘。米国や欧州での投資と同様に日本でも3ナノプロセスの量産を先行させることで、現地の潜在的な競合他社の生存空間を圧迫する効果があると論じた。

特に、まだ量産実績のない日本の国家プロジェクト「Rapidus(ラピダス)」に対し、世界で稼働中の先端技術を早期導入することで、競争上の優位を決定づける大きなプレッシャーになるとの見方を示した。

許氏はさらに、今回の投資発表が米台間などで流布されている「TSMCは米国に工場建設を強要されている」といったデマ、いわゆる認知戦を論破するものであるとも主張。日本政府もTSMCに対して先端工場の建設を強要しておらず、今回の決定は純粋に市場需要と地政学的リスクの分散、そして現地の顧客ニーズに基づくものであるとの認識を示している。

記事は、許氏が「日本が次世代のAIサプライチェーンに参入するためには、最終的に台湾のTSMCやサプライチェーンに頼らざるを得ない」とも指摘したことに触れ、高市首相が魏氏を歓迎した背景には、日本が先端産業の未来を台湾の半導体エコシステムに託さざるを得ない構造的な現実があるとの認識を示したことを伝えた。(編集・翻訳/川尻)

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