中国メディアの観察者網は9日、「日本はこんなことで『レアアースの自由』を実現したのか?」と題する記事を掲載した。著者は上海国際問題研究院情報研究所元所長で日本の政治・外交を専門とする陳鴻斌(チェン・ホンビン)氏。
陳氏は、高市早苗首相が4日に衆議院選挙の応援演説で、南鳥島沖の深海6000メートルからレアアース泥の試験採掘に成功したことに言及し、「だから日本は、これから今の世代も次の世代もレアアースには困らない」と語ったことを紹介。一方で、「この意気揚々とした発言はすぐに否定されることとなった」とし、翌日にこの発言の根拠を問われた佐藤啓副官房長官が「自民党総裁としての発言に、政府の立場でのコメントは差し控える」と明言を避け、「レアアースの安定供給確保に向けては鉱山開発や供給源の多角化、研究開発が重要だと認識している」と返答したことを説明した。
この高市首相の発言については、朝日新聞がファクトチェックを行い「ミスリード」と判定しているが、陳氏も「あまりにも信ぴょう性に欠ける」と指摘。「中国は世界最大のレアアース大国であり、2024年の生産量は世界全体の70%を占めた。09年には、日本はレアアースの93%を中国から輸入している。その後10年以上、輸入先の多角化を模索したが25年になっても日本のレアアース輸入は中国が66%を占めている。日本は、中国と米国に次ぐ世界第3位のレアアース消費国であり、とりわけ高性能永久磁石、ロボット、ハイブリッド車、電子機器製造などの分野で大量に使用している。しかし国内に資源がないため、長年にわたり中国や米国から輸入し、あわせて戦略備蓄体制を構築してきた」と説明した。
その上で、「かつて日本の企業2社が共同で豪ライナス・レアアース社の株式を大量取得(出資)したが、同社からの重希土類製品の第1陣が日本に到着したのは25年10月になってからだった」と紹介。「同社で産出された原料の多くはマレーシアで加工されている。20~24年にマレーシアから日本へ輸出されたレアアース製品の価格は、他国の同種製品よりも明らかに高かった。軍需製品を生産する企業であればこの額を支払う可能性があるものの、競争の激しい消費者市場では他の企業はこのような高価格の製品を到底受け入れられないとされている」と論じた。
そして、「日本にはレアアース鉱床が存在しないため、海底資源開発に活路を求めてきた」とし、11年に南鳥島沖の排他的経済水域の海底でレアアース鉱床を発見して以降、開発を進めており、今年1月には探査船「ちきゅう」が試掘に成功したことに言及。一方で、「仮にレアアースが確認されたとしても、抽出・精錬が可能かどうかは別問題である。多くの国が鉱床を有しながらも精錬能力はなく、米国ですら中国に精錬を依存している。日本に十分な精錬能力があるかは未知数だ」と主張し、「深海からの採掘、長距離輸送、海水排出工程はコストが極めて高く、陸上鉱山を大きく上回る可能性が高い」と指摘した。
また、「日本政府は戦略的理由から、採算が合わなくても開発を継続する姿勢を見せているが、財政的には大きな疑問が残る。国内で消費税減税論が強まる中、巨額投資を支える財源は不透明だ」としたほか、「精錬にかかる環境負荷や長期的かつ大規模な泥の吸引作業に設備が耐えられるかは不透明であり、深海生態系への影響も未知だ」と指摘。「総じて、日本の深海レアアース開発は第一歩を踏み出したに過ぎず、『レアアースの自由』を語るにはあまりに道のりは遠い」と結論付けた。(翻訳・編集/北田)











