外国人の受け入れと多文化共生に取り組んでいる鈴木康友静岡県知事が2026年2月18日、日本記者クラブで記者会見し、外国人受け入れは「脅威でなく好機」と語った。

鈴木氏は衆議院議員を経て2007年から4期、政令市の浜松市長を務めた。

日系ブラジル人の住民が多い同市で、庁舎の中に外国人向けの学習支援センターを作るなど、共生社会の実現に向けた施策を進めた。2024年に静岡県知事に就任。全国知事会では「外国人の受入と多文化共生社会実現プロジェクトチーム会議」のリーダーを務めている。

鈴木知事によると、静岡県には過去最高の12万8311人の外国人が生活。1990年には約2万人にとどまっていたが、同年の入管法改正後、日系人を中心に増加。浜松市など製造業が盛んな県西部地域を中心に、「在留資格」を有している外国人が急増した。近年は「就労資格」や「留学」が増加。出身国・地域は130に及び、多国籍化が進展している。

静岡県内の在留外国人の国籍はブラジル(3万1635人)、フィリピン(2万1168人)、ベトナム(2万933人)、中国(1万734人)、インドネシア(8282人)、ネパール(7110人)、ミャンマー(5046人)、ペルー(4760人)、韓国(4177人)の順(その他は1万4466人)。

外国ルーツの子どもの不就学ゼロを目指す

静岡県の多文化共生の取り組みについて、「こころの壁と言葉の壁のない静岡県」をモットーに(1)多文化意識の定着(2)やさしい日本語の普及(3)外国人相談窓口の充実(4)外国人向け情報提供の強化(5)外国ルーツの子どもの不就学ゼロを目指した教育環境の整備(6)働きやすい環境の整備―などを列挙した。

鈴木氏は浜松市長時代の2017年に外国人によってもたらされる文化的多様性を脅威ではなく好機と捉え、都市の活力や成長の源泉とする「インター・カルチュラル・シティ・ネットワーク(ICC)」に同市がアジアで初めて加盟。2025年8月に静岡県が都道府県で初めてICCに加盟した。ICCは欧州、豪州、韓国など世界の160以上の自治体が参加。

優れた取り組みの共有や国内外に対する訴求力向上に努めているという。

さらに全国知事会に「多文化共生プロジェクト(PT)チーム」が設置され、技能実習から育成就労への円滑な移行、多文化共生の形成に向けた国の推進体制の構築などを推進。2025年7月に「多文化共生」をテーマとしたセッションを初開催。参加県知事と地方の課題を共有し、連携を図った。

参加した各県知事から「労働力不足が深刻な中、外国人の受け入れは必要」「外国人の増加に対する不安を解消するためのメッセージや適切な入国管理も重要」「自治体は根拠を持ってしっかりと国に働きかける必要がある」などの意見が表明されたという。

全国知事会は青森県で開いたセッションで「排他主義、排外主義を否定し、多文化共生社会を目指す我々47人の知事」と明記した「青森宣言」を発表した。

宣言は「日本は外国人を受け入れるか受け入れないかの基本的方針を議論しないまま今に至るが、(外国人の受け入れは)特定地域の問題ではすまされなくなっている」として、多文化共生の施策を実施する上での根幹となる総合的な基本法の策定、司令塔組織の設置を国に求めた。

これを受け全国知事会は「外国人の受け入れと多文化共生社会の実現に向けた提言」をまとめ国が責任をもって「育成就労制度」に取り組むよう要請した。

鈴木知事は全国知事会を代表して国に要請。法務省の鈴木馨祐法相(当時)から「大都市圏に集中しない制度や現状に沿った分野設定を検討中。就労から社会統合に変えなければならない」とのコメントがあったことを紹介した。

内閣官房の青木一彦内閣官房副長官(当時)は「関係閣僚会議の下、多文化共生施策を進めている。

育成就労は地方の意見を聴きながら進めたい。多文化共生について、日本語教育や医療通訳の整備が重要」と返答したという。

鈴木知事は静岡県に寄せられた主な意見の事例を紹介。「外国人なしでは日本の経済は動いていかない」「多文化共生に賛成だ」などの肯定的な意見の一方で、「外国人が増え過ぎて不安。受け入れを抑制してほしい」「日本人がやさしい日本語を使うのではなく、日本語を話せる外国人を入国させ仕事をさせてほしい」など批判的な意見も多かったという

高市首相は松下政経塾の5期後輩、「外国人抜きでは立ち行かないと理解」

高市政権が保守的な考えの下、外国人に厳しい対応をしていることについて「外国人との共生に逆風にならないか」との質問に対し、鈴木知事は「高市首相は松下政経塾で、一期生の私の5年後輩で(高市氏が)22歳の頃からよく知っているが、非常にクレバーな方で外国人抜きでは国の運営が立ち行かないことを理解している。イメージと大分違って現実を踏まえて適切に対応されると思う。私自身、今でも個人的な関係があるので直接会う機会があれば説明したい」と語り、心配は杞憂(きゆう)と明言した。

編集部おすすめ