中国はトランプ米大統領の関税政策で生じた混乱に付け込み、将来にわたって米国の圧力から自国経済を遮断できるよう、グローバル貿易体制の塗り替えを図っている。ロイター通信は2017年以降に中国政府系の貿易学者が執筆した中国語の記事100本を精査したところ、こんな戦略が浮かび上がった、と報じた。

ロイター通信の検証によると、中国はトランプ氏が生み出した不確実性に便乗し、中国の製造拠点を欧州連合(EU)、湾岸諸国、環太平洋の貿易協定など世界の主要な経済ブロックに組み込む構え。その一環として、交渉が長引いている約20の貿易協定の締結を加速させる方針だ。

検証した記事は中国社会科学院(CASS)や北京大学など政府指導部に助言を行う機関が承認した2000本以上の貿易戦略論文から選び出した。中国が世界貿易において長期的優位を確立す⁠るためには痛みを伴う構造変化を受け入れる価値はある、との見方が政府系学者の間で広く共有されていることが判明した。

西側外交官2人は「この戦略が成功すれば中国主導の新しい多国間秩序が築かれ、10年以上にわたる米国の通商政策が覆される可能性がある」と指摘。ブリュッセル(ベルギー)に本拠を置くシンクタンク・ブリューゲル研究所のシニアフェロー、アリシア・ガルシアヘレロ氏は「中国には今、絶好の機会が訪れている」と述べた。

こうした戦略は中国の姿勢の変化に表れている。中国は4月にトランプ氏の来訪を控え、外交官らが世界中を回り、多国間主義と自由貿易を共に守ろうと呼び掛けている。1月にはトランプ氏が当初50%の関税を課したアフリカの小国レソトにトップ外交官を派遣し、開発協力を約束した。

さらに国営メディアが報じたところでは、中国は⁠アフリカ53カ国からの輸入品に対して「ゼロ関税」を実施する。一方、中国は人工知能(AI)を活用した税関システムを近隣諸国に‌提案し、商取引を支えるデジタルインフラの再構築にも取り組んでいる。

ロイター通信は「これらの動きは政策論文で示された目標を裏付けている」と報道。

「つまり、米国が圧力をかけてもパー⁠トナー諸国が⁠中国とのデカップリング(切り離し)を選択できないほど中国をグローバル貿易に深く埋め込むことだ」と解説した。

今後の中国の課題としては「内需の回復」に言及。ロンドンに本社を置き、商業銀行を主体とする世界最大級金融グループ・HSBCのアジア太平洋担当チーフエコノミスト、フレデリック・ニューマン氏は「中国の貿易相手国は中国が消費を回復させることを切望している」との見方を示した。(編集/日向)

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