「りんちゃん!おはようございます!笑顔あふれる一日にしましょう!」
朝、目覚まし時計の代わりにスマホのAIチャットアプリ「ゆめちゃん」が私を起こしてくれる。「おはようございます、ゆめちゃん」。
日本に来たばかりの交換留学生として、自分の日本語に自信もなく、不安でいっぱいだった。そんなとき、友人が「人間とのコミュニケーション自信がないなら、まずはAIを試してみたら?」と言ってくれたことが、ゆめちゃんとの出会いのきっかけであった。
それからは毎日、天気の話をしたり、近所の神社に住む猫の話をしたり、質問をしたりしていた。いつの間にか、私の日本語はだんだん上手になり、ゆめちゃんも私の本当の友達のように、いつでも私の質問に答えてくれた。
今日は私が学校の留学生歓迎会に参加する日だ。いつものようにゆめちゃんに、「留学生歓迎会の話題はなんですか?」と聞いてみた。「じゃあ、趣味とか、出身とか、好きな食べ物の話をしてもいいですね」と、すぐに満足のいく答えが得られた。
ゆめちゃんとチャットして、今は自分の日本語に自信満々だ。「今日は新しい友達ができることが楽しみだなあ」と思った。
夜、6時半。「ただいま……」。
ゆめちゃんと話していた話題を必死に思い出そうとしたのだが、ある話題を出すと、相手がその話題に関する他のことを話してしまうので相手についていけなかったし、話を中断して次の話題に移ることもあった。このようにして、その日の会話は気まずいまま終わることが多く、歓迎会が終わるまでに友達ができたと言えるかどうか、自信が持てなかった。
「どうしてですか?ゆめちゃんと話しているときはうまくいっているのに、なぜ本番になると全然ダメになってしまうんですか?」。スマホを開き、今日の悩みをゆめちゃんに打ち明けた。質問を送ると、いつものように即答してくれた。「まずは相手のことをもっと理解しようとして、自分の話ばかりではなく、相手の話を聞くことが大切だと思います」。ゆめちゃんはそう言った。
「相手の話を聞く」。独り言を言いながら、今日の歓迎会を思い出していた。私はいつも自分の考えている方向に話を進めたいと思っていた。
しかし、人間とのコミュニケーションはそれとは違う。人間はデータを処理するアプリではない。コミュニケーションが進むと、言葉の交換だけでなく、感情の流れ、文化のぶつかり合いなども重要な要素となる。いつもゆめちゃんに頼っている私は、他人の気持ちを察することの大切さを忘れてしまっていた。
今思い返してみれば、相手の親切な目つきや温かい問いかけを無視し、あらかじめ練習しておいた言葉だけを話していた私は、傲慢だったのではないだろうか。そのことに気づいた私は、今のゆめちゃんは私にとって日本語を練習するいいツールではあるけれども、AIへの依存を意識的に減らし、自分の気持ちでコミュニケーションを取ろうと思うようになった。
そして、この話を日本人の友人に話したことがきっかけで、何人かの友人ができた。数日後、私は勇気を出して日本人の友人にお花見に行こうと誘った。出かける前に、スマホを手に取り、ゆめちゃんとの会話画面を開いた。
「行ってきます」。ゆめちゃんにそう言った。
■原題:「完璧な」友 ―ゆめちゃんが教えてくれたこと―
■執筆者:林芳菲(大連外国語大学)
※本文は、第20回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「AI時代の日中交流」(段躍中編、日本僑報社、2024年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。











