京都出身、シカゴ在住のマルチ奏者であるセン・モリモトにインタビューを実施。88risingにフックアップされた逸材が、アジア人アーティストの新しい在り方を語る。
BTS(防弾少年団)の大躍進や映画『クレイジー・リッチ!』の成功など、アジアン・カルチャーがこれまでになく国際的な注目を集めた2018年。そのなかで、アジアの音楽シーンの「今」を発信してきたメディア・プラットフォームにして、音楽レーベル/マネジメント/マーケティング会社と様々な側面をもつ88risingのショウケース・イベントが、2019年1月10日(木)に東京・ZEPP TOKYO、1月11日(金)に大阪・ZEPP BAY SIDEで開催される(セン・モリモトは不参加)。
それに先駆け、88risingから2018年のサマーソニックで初来日したのが、中国のハイヤー・ブラザーズとセン・モリモトだ。今回のインタビューは、サマソニの翌日に開催された単独公演のリハーサル後に、『WIRED』日本版前編集長(現・黒鳥社)で音楽ジャーナリストとしても活躍する若林恵が行った。
ー日本語ってどのくらいいけるんですか?
モリモト:ちょっとだけ。英語の方が得意かな。
ー了解です。リハーサルの調子はどうでしたか?
モリモト:いい感じだよ、音も良かったし。ここに来たのは初めてなんだけど、いい感じの雰囲気で気に入ったよ。
ー今夜のセットはどんな感じでやるんですか?
モリモト:バンドと一緒にやるよ。ドラムにベース、ギターとコーラスもいて、ぼく自身はサックスを吹いて歌うし、ドラム・サンプラーも使うよ。
ーそれは楽しみです。
モリモト:そうだね、だいたいは。会場の大きさにもよるんだけど。
ーちなみにバンドはどうやって成り立っているんですか? 全部自分でアレンジを考えてる?
モリモト:そうだね。基本的には最初にぼくが全パートを書いて、録ったものを持ち込むんだけど。でもそこからはメンバーと考えるよ。彼らがフィードバックやアイデアをくれるから、そこで一緒にやってみて、バンドとして全員で成立するようなアレンジメントが出来上がるんだ。
セン・モリモトが2018年に発表した1stアルバム『Cannonball!』
ーアルバムもそのようにして作ったんですか?
モリモト:いや、アルバムはぼくひとりで作ったんだ。
ーじゃあ、すべての楽器を演奏しているんですね。ドラマーとしてもすごく才能があるなあ。
モリモト:ありがとう!
ーご自身はマルチ・インストゥルメンタリストという肩書きで活動されてますが、具体的には?
モリモト:子どもの時にサックスをはじめたから、メインはサックスなんだけど、独学でピアノやドラム、ベース、ギター。キーボードもレコーディングで使うし、コンピューターでプロダクションや編集作業もするし。今はヴァイオリンにも挑戦してるんだ。
ー音楽的教養のバックグラウンドはクラシック?
モリモト:ジャズだね。サックスを習っていた時は基本的に。でも、そんなお堅い感じじゃなくて、自分が聴いてきた音楽に影響を受けてる。
ーなるほど。ぼくがあなたの存在をはじめて意識したのはナムディ・オグボナヤ(※)のアルバムでした。それ以前から友人の間で話題にはなっていたけど、実際に音を聴いたことはなくて。はじめて名前を目にしたのがナムディのアルバムのクレジットだったんです。
※Nnamdi Ogbonnaya:シカゴ出身のマルチ奏者。様々なバンドに出入りしながら、エクスペリメンタル・ヒップホップ寄りの2017年作『Drool』など自身のリーダー作も発表。The Sooper Swag Project名義で発表された、2016年作『Badd Timing』にはモリモトも参加している。
モリモト:そうなんだね。ナムディとは一緒にレコードをつくってるんだよ。
ー今年(2018年)のSXSWで彼のライブを観る機会があって。ちょっとびっくりしたんですよね。正直言うと……。
モリモト:正直に言って! 全然ダメだったんでしょ? ぼくには言っても大丈夫!
ーいやいや(笑)、逆です。想像してた感じとまったく違ってて、めちゃぶっ飛んだんですよ。もっとヒップホップ寄りの、彼がラップして……ってのだと思ってたら、めちゃアヴァンロックな感じで。
モリモト:ロック寄りのバンドとツアーしてるんだよね。
ーそうそう。ベーシストとドラマーはジャズの教養があることが明らかな感じのプレイヤーで、ギタリストはおかしなことに……なんだかフランク・ザッパにみえて。
モリモト:わかるよ! Jonnyだね。いや、彼は本当にフランク・ザッパの大ファンなんだよ。
ナムディ・オグボナヤのパフォーマンス映像
ーおもしろいよね、そういうのもシカゴっぽいのかな。音楽的にはもちろん、ヒップホップとかラップってところにカテゴライズされるわけだけど、それ以上の含みがあるというか。そういったシカゴから生まれる音楽ってどんな風なものだと思います?
モリモト:そうだね、シカゴのシーンがクールなのは、それだけたくさんのことが同時に起きているからだろうね。もちろんヒップホップ・コミュニティは本当に多様だし、ほかにもエクスペリメンタル・ロックやノイズ、ジャズのアーティストたちが数え切れないくらい作品を出してる。最近は即興音楽も流行ってて、かなり大きなシーンがあるしね。そのなかで、ぼくやナムディとか、いくらかのアーティストはそういったすべての要素を取り入れて、ひとつにまとめあげるみたいなことにトライしてて、そういった試みがぼくらのサウンドをちょっと複雑で特別なものにしているんだと思う。でもそれも、シカゴっていうリッチなコミュニティがあるからこそ成立してることで。たくさんの音楽が同時進行で大量に生まれてるんだ。
ーそういったなかでも、自分が特別に強い繋がりを感じるコミュニティやシーンというのは?
モリモト:うーん、やっぱりヒップホップやR&Bになるのかな。今日一緒にやってくれるバンドメンバーも、たくさんのアーティストとプレイしてきてるしね。ぼく自身、ほかのアーティストのためにサックスやキーボードを演奏するんだ。
ーあなたはサックス奏者として長いキャリアがあるわけですが、サックス・プレイヤーとしての道に進むことも考えたことはあるんですか?
モリモト:あるよ。10代の頃にね。「いつかバークリーに行っちゃったりして!」とか。サックスで大学に行って、ニューヨークに行ってジャズ・ガイになるんだとかさ。でも高校生のときにラップ・ミュージックやヒップホップの曲を作り始めて、卒業する頃には自然と、ジャズで成功してやろうみたいな気持ちじゃなくなってたかな。それで大学には行かなかったんだけど、自分でちゃんと音楽を作り始めて。そこからはプロデュースに専念していて、しばらくサックスには触れていなかったんだ。でもここ数年で急にまたやりたいって気持ちになって、もう一度はじめてみたら、おもしろいことに「帰ってきたぞ!」みたいな気分ですごく懐かしくて。自分のなかに自然とあったジャズってものが、そこでようやく腑に落ちたというか。
ーちなみに、憧れだったサックス・プレイヤーは?
モリモト:ネヴィル・ブラザーズのメンバー、チャールズ・ネヴィルがサックスの先生だったことがあるんだ。彼はぼくが育ったマサチューセッツに住んでて。一緒にサックスをやってたKaiって友達とふたりで、毎週土曜に彼の自宅に行って、ジャム・セッションをしたりして過ごしてた。彼はジャズの歴史とか、自分の経験について話をしてくれて、音楽についてたくさんのことを考えるきっかけをくれたんだ。いわゆる定義じゃなくて、もっとどう感じたらいいのかをコミュニケーションを通じて教えてくれたんだよね。彼は間違いなくぼくのヒーローだよ。ちょうど2018年に亡くなってしまったんだけど。
ーそうでしたか。
モリモト:ほかには、キャノンボール・アダレイがすごく好きだったね。ジャズに最初にハマったきっかけのソニー・ロリンズは自分にとって大きな存在だし、スムースなサウンドが好きだからスタン・ゲッツみたいなプレイヤーも好きで。ジョン・コルトレーンなんかは、ちょっと洗練されすぎていて幼い頃はピンとこなくて。今はいいと思えるけどね。だからもっとスムースなポップな感じの、ソニー・ロリンズとかソニー・スティットとかが好きだったよ。あとは大好きなバンドがいたんだけど、今信じられないことに名前が出てこなくて。ドラムとベースとピアノのジャズ・トリオなんだけど、ニルヴァーナとかのものすごいカヴァーをしてて……。
ーバッド・プラス?
モリモト:そう、バッド・プラス! CDは1枚しか持ってなかったけど、すごくよく聴いたんだ。
セン・モリモトがサックスを吹くパフォーマンス映像
ーマサチューセッツからシカゴに引っ越したのは、自分が行きたいと思ってのこと?
モリモト:そうだね。当時付き合っていたひとと一緒に引っ越したんだけど、彼女は学校に行ってて、自分はなにをしたらいいかもよくわかってなかったよ。とにかく働かなきゃーって。誰も知り合いがいなかったから辛くて、部屋にこもって音楽を作ってるしかなくて。落ち着くまでには少し時間が必要だった。でもそこから出会った人はみんな好きだよ。
ー数年前にロスコー・ミッチェルっていうシカゴのサックス・プレイヤーが書いた古い記事を読んだんですが、彼はそこでシカゴとニューヨークについての違いについて書いていて、建造物や街の風景がフリージャズのスタイルにも影響していると。ニューヨークは道路や空も狭いけど、シカゴはもっと開けていると。ぼくはシカゴに行ったことがないから実際にどんなふうかわからないんですが、彼はシカゴ・ジャズの自由さというかユニークさが、そういったオープンさにあると述べていて。
モリモト:わかるよ。
ーもしシカゴじゃなくてニューヨークを選んでいたら、今つくっているサウンドも違うものになっていたと思う?
モリモト:そう思うよ! ぼく自身こうやってシカゴにたどり着けたことをすごくラッキーだと思ってる。ニューヨークだったらもっと厳しかったんじゃないかな。
ーシカゴにはそういった特別なヴァイブというか雰囲気を感じる?
モリモト:その通りだよ、人々がとてもオープンなんだ。音楽に限ったことじゃなくて。ニューヨークの人たちは、外で他人に見られたり話しかけられたりするのをあまり心地よく思わないというか。なんだか怖い感じもするしね。それに比べるとシカゴの人はみんなフレンドリーだよ。
ー民族的な多様性もある?
モリモト:それは、地域とか街の成り立ち方によって異なるかな。ちゃんと公共機関が発達してていろんなとこにアクセスしやすいエリアはもちろんそうだけど、そうじゃない地区みたいなのもあって。でも、音楽コミュニティ内に限っていえば、すごく多様だよ。これまで一緒にやってきたパフォーマーはブラックにブラウンの人たち、ホワイトの人もいくらかいれば、ぼくみたいなのもいるしね。
ー88risingにフックアップされることになったきっかけは?
モリモト:弟と一緒にミュージック・ビデオを作ったんだけど……あ、ちなみに彼もいま一緒に日本に来てて。ヴィジュアルをやってるんだ。で、作ったビデオをいろんな媒体に送ったんだ。どこかでプレミア公開できたらいいなと思ってさ。そしたら88risingのショーン(・ミヤシロ)が「気に入ったよ」と電話をくれたんだ。彼らはクールだよ、よくサポートしてくれてる。
ーどんなところが?
モリモト:ぼくはいま24歳だけど、音楽制作自体は長くやってきていて、長くやってきてるからこそなにがしたいか、やりたくないかっていうのが自分のなかでハッキリしてるんだよね。ぼくは自分の部屋で音楽をつくるのが楽しくて、価値があることだって思ってる。それをリスクに晒すようなマネはしたくないんだ。だから、簡単にレーベルとサインしようとは思わない。ごめん、ちょっと話が逸れすぎたね……。ただ、とにかく88risingはその点でもつきあいやすいんだ。すごくクリエイティヴだし、ややこしい契約抜きでサポートしてくれてるっていうのがあるから、自分のペースで楽しいことができてる。
弟のユーヤ・モリモトが監督した「Cannonball」のMV
ーそうなんですね。もちろん界隈で88risingについては話題になっているんですが、実際どのように機能しているのかってことは誰も知らなくて。具体的にはどのようなサポートをしてくれるんですか?
モリモト:ぼくらはアルバムをほとんど作り終えていて、ビデオも自分たちでつくったタイミングだったから、彼らはレコードのディストリビューションとかをしてくれて。そのあたりは通常のレーベルにお願いすることとそんなに変わらないと思うよ。でも、普通のレーベルとやり方が違うのは、彼らはレーベル専属のアーティストとしての契約をぼくらに結ばせたりしないってところ。もっと集合体(コレクティヴ)って感じで、メディアへの露出のノウハウもあるし。オープンに好きなことをやらせてくれた上で、関係を築いてくれるのがありがたいよね。ビデオ公開の手助けをしてくれたのはもちろん、ライヴもいくつかアレンジしてもらったり。
ーじゃあアルバムに出資して、といった感じではなかったんですね。
モリモト:ほとんど作り終えてたから、自分たちで払っちゃってたというのもあるけど、いくつか必要な経費とかを払い戻してくれたりしたよ。実務的なお金の動きの話になっちゃうからアレだけど……。
ー「アジアの顔」として活動をする88risingと関係を築くということは、「アジア人アーティスト」として認識されるということになるわけですが、それについてはどう感じますか? いいことも、もしかしたらそうでないこともあるとは思いますが。
モリモト:そうだね、もちろんどういうふうに映るのかについては考えたよ。実際に彼らから連絡がきたときには、レーベルとしてどんな存在なのかってことをよくは知らなかったんだ。リッチ・ブライアンのビデオを観たことがあったくらいで。それでほかにもいろんなビデオを観たりしていくうちに、すごいカッコいいビデオをたくさん出してるなって思って。いい監督とたくさん仕事してるみたいだったし、興味をもったんだ。
インドネシア出身のリッチ・ブライアン「Dat $tick」のMVは、再生回数1億回を突破。
モリモト:それに、ぼくはアジアン・アメリカンだし、そういうことが本物のアジアの人からは実際どう思われるのかなって。それでインターネットでいろいろリサーチしてみたりね。そこから、88risingがアジアの人たちのなかでどれほど強い「ブランド」なのかってことを知ったんだ。そういった面では自分に安心や自信をもたらしてくれそうだって思ったし、その一方で、なかなかチャンスを得ることが難しいコミュニティの人たちの声を強化させていけるのはとてもいいことだと思ったんだ。
ーなるほど。
モリモト:本当にいろいろ調べたんだよ。あらゆる記事を読んで……批判的なのも、肯定的なのも。派閥は大きく3つくらいで、88risingはアジアン・カルチャーを商業化しすぎてて、一部が誇張されて晒されているようで嫌いだといっている否定派の人たち。それに対して、自分たちの声を届けてくれてるんだ、彼らは革新的で、アジアン・コミュニティから世界にヒップホップを発信する素晴らしい方法を提供しているっていう肯定派の人たち。それから残りが、ぼくみたいなふわっとした、分類できないニュートラルな視点の人かな。
ー2018年はBTSが全米チャートの1位を獲得したり、いろいろなことが変わってきていると思うんですよ。そういう点で、日本にいる自分にはどうも、アメリカのリスナーは「国外の今」の音楽を聴くことに対してもっとも保守的なようにみえる。
モリモト:いや、ぼくもその通りだと思うよ! みんな全然知らないよね。
ー気にもしてないというか。でもここのところ、ちょっと変わった流れもみえてきていて。急にアフロビーツが流行り出したりとか、そういうのには結構びっくりして。そういった兆候って感じてます?
モリモト:特に88risingについて?
ーそうですね、アジアのコンテンツに関していうと。
モリモト:もちろん、実感してきてるよ。なんか突拍子がなくて、かつネガティヴに聞こえるかもしれないけど、アジアの音楽市場はアメリカの手が入ってない、まだまだ未開発の状態にあると思うんだ。だから、そこがガッツリと組んだら、これからすごいことになると思うんだけど。どれほどお金を産むビジネスになるか考え出したら、気が遠くなっちゃうくらいだよ。とにかく、みんなにメリットがあるような関係性ができるのはいいことだよね。
ーそのうえで、あなたの音楽がアジアを代表する、といった見方をされることについてはどうですか? 2018年は日本人の活躍も多かったですよね。スーパーオーガニズムのオロノやミツキだとか。同じ日本人として活躍している姿をみるのは嬉しいのだけれど、彼ら自身がアジア人、ひいては日本人として括られることに対して、実際のところよく思っているのだろうか、と。
モリモト:ぼくは誇りに思っているよ。出身はどこであれ、自分たちみたいないわゆる二世が、これほどまでに世間的な認知を得たり、広く発信することができるようになったのはおそらく初めてのことで、そういう意味で自分たちは、そうした環境における第一世代なんだと思う。それってすごく興味深いことだと思ってて。そういった特殊な文化、世代の声を届けるまたとないチャンスだよね。自分の経験からすると、ぼくみたいな今の世代の二世って、自分のルーツにすごくワクワクしてるんじゃないかと思う。ただ母国と深い関わりがないだけで、ぼくら自身はそれを欲してる。だからミツキとかぼくだとか、日本にルーツがある人たちは、この国になにか借りがあるみたいな気がしていて、もう一度ちゃんと繋がりたいって思ってるよ。もちろん、言語やカルチャーの違いはあるから、すべてのギャップを埋めることは難しいけど。でも一般的に、今のアメリカに移住してきた一世のひとたちも、アメリカの外の母国と再び繋がりを持ちたいって感じてると思うな。
ーそして、88risingを率いるショーン・ミヤシロも同じようなバックグラウンドを持っているんですよね。
モリモト:そうだよ。ショーンも日本人だけど、アメリカで育ったんだ。
ーしかも、今はアメリカだけでなく、アフリカや東南アジアでも同じようなことが起きてますよね。
モリモト:ぼくらの世代の二世がカルチャーの流れを大きく変えてるってことだよね? その通りだと思う。それにすごくいいことだと思う。そういう人たちがどうやって生きているのか、現状を理解することも大事だし、それを記録することもね。
ー日本人アーティストとのコラボレーションには興味はありますか?
モリモト:もちろん! やりたいけど、誰とやったらいいかわかんないだけで……。でも、できたらいいなと思うよ!
ーこれまでに日本の音楽って聴いたことがある?
モリモト:ほんの少し。お父さんはアメリカに住んでるんだけど、すごい量のCDをコレクションしてて。ほとんどが60~70年代のものなんだけど、古い演歌とかも好きでさ。自分では、わりと最近になって興味が出はじめてから、80年代のものとかを少しかじって。佐藤博が好きだな。アメリカではそのあたりの古いファンクみたいなレコードがいますごく人気があって、そもそも手に入りやすいんだと思う。アメリカでは日本の古いものが新しく感じられて、その逆もまた然りみたいな、ふたつの国で時代を行ったり来たりしてるみたいな関係性ってすごく面白いよね。
Rich Brian/Higher Brothers/AUGUST 08/KOHH
88RISING
出演:リッチ・ブライアン、ハイヤー・ブラザーズ、オーガスト08、KOHH
※出演を予定していたジョージ、NIKIはキャンセル。セン・モリモトは不参加。
〈東京公演〉
日程:2019年1月10日(木)
会場:ZEPP TOKYO
〈大阪公演〉
日程:2019年1月11日(金)
会場:ZEPP BAY SIDE
詳細:https://www.creativeman.co.jp/event/88rising/
「NEXT GENERATION BANK 次世代銀行は世界をこう変える」
責任編集:若林恵
黒鳥社が贈る"紙の読み物"「blkswn paper 黒鸟雑志」第1弾
次世代ビジネスカルチャームック
制作・発行:黒鳥社
発売:日本経済新聞出版社
本体1200円(+税)
詳細:https://blkswn.tokyo/paper001/
BTS(防弾少年団)の大躍進や映画『クレイジー・リッチ!』の成功など、アジアン・カルチャーがこれまでになく国際的な注目を集めた2018年。そのなかで、アジアの音楽シーンの「今」を発信してきたメディア・プラットフォームにして、音楽レーベル/マネジメント/マーケティング会社と様々な側面をもつ88risingのショウケース・イベントが、2019年1月10日(木)に東京・ZEPP TOKYO、1月11日(金)に大阪・ZEPP BAY SIDEで開催される(セン・モリモトは不参加)。
それに先駆け、88risingから2018年のサマーソニックで初来日したのが、中国のハイヤー・ブラザーズとセン・モリモトだ。今回のインタビューは、サマソニの翌日に開催された単独公演のリハーサル後に、『WIRED』日本版前編集長(現・黒鳥社)で音楽ジャーナリストとしても活躍する若林恵が行った。
ー日本語ってどのくらいいけるんですか?
モリモト:ちょっとだけ。英語の方が得意かな。
ー了解です。リハーサルの調子はどうでしたか?
モリモト:いい感じだよ、音も良かったし。ここに来たのは初めてなんだけど、いい感じの雰囲気で気に入ったよ。
ー今夜のセットはどんな感じでやるんですか?
モリモト:バンドと一緒にやるよ。ドラムにベース、ギターとコーラスもいて、ぼく自身はサックスを吹いて歌うし、ドラム・サンプラーも使うよ。
ーそれは楽しみです。
いつもそういった編成なんですか?
モリモト:そうだね、だいたいは。会場の大きさにもよるんだけど。
ーちなみにバンドはどうやって成り立っているんですか? 全部自分でアレンジを考えてる?
モリモト:そうだね。基本的には最初にぼくが全パートを書いて、録ったものを持ち込むんだけど。でもそこからはメンバーと考えるよ。彼らがフィードバックやアイデアをくれるから、そこで一緒にやってみて、バンドとして全員で成立するようなアレンジメントが出来上がるんだ。
セン・モリモトが2018年に発表した1stアルバム『Cannonball!』
ーアルバムもそのようにして作ったんですか?
モリモト:いや、アルバムはぼくひとりで作ったんだ。
ーじゃあ、すべての楽器を演奏しているんですね。ドラマーとしてもすごく才能があるなあ。
モリモト:ありがとう!
ーご自身はマルチ・インストゥルメンタリストという肩書きで活動されてますが、具体的には?
モリモト:子どもの時にサックスをはじめたから、メインはサックスなんだけど、独学でピアノやドラム、ベース、ギター。キーボードもレコーディングで使うし、コンピューターでプロダクションや編集作業もするし。今はヴァイオリンにも挑戦してるんだ。
ー音楽的教養のバックグラウンドはクラシック?
モリモト:ジャズだね。サックスを習っていた時は基本的に。でも、そんなお堅い感じじゃなくて、自分が聴いてきた音楽に影響を受けてる。
ーなるほど。ぼくがあなたの存在をはじめて意識したのはナムディ・オグボナヤ(※)のアルバムでした。それ以前から友人の間で話題にはなっていたけど、実際に音を聴いたことはなくて。はじめて名前を目にしたのがナムディのアルバムのクレジットだったんです。
※Nnamdi Ogbonnaya:シカゴ出身のマルチ奏者。様々なバンドに出入りしながら、エクスペリメンタル・ヒップホップ寄りの2017年作『Drool』など自身のリーダー作も発表。The Sooper Swag Project名義で発表された、2016年作『Badd Timing』にはモリモトも参加している。
モリモト:そうなんだね。ナムディとは一緒にレコードをつくってるんだよ。
いい友達さ。
ー今年(2018年)のSXSWで彼のライブを観る機会があって。ちょっとびっくりしたんですよね。正直言うと……。
モリモト:正直に言って! 全然ダメだったんでしょ? ぼくには言っても大丈夫!
ーいやいや(笑)、逆です。想像してた感じとまったく違ってて、めちゃぶっ飛んだんですよ。もっとヒップホップ寄りの、彼がラップして……ってのだと思ってたら、めちゃアヴァンロックな感じで。
モリモト:ロック寄りのバンドとツアーしてるんだよね。
ーそうそう。ベーシストとドラマーはジャズの教養があることが明らかな感じのプレイヤーで、ギタリストはおかしなことに……なんだかフランク・ザッパにみえて。
モリモト:わかるよ! Jonnyだね。いや、彼は本当にフランク・ザッパの大ファンなんだよ。
あまりにも好きすぎて、見た目まで似てきちゃったんじゃないかな(笑)。
ナムディ・オグボナヤのパフォーマンス映像
ーおもしろいよね、そういうのもシカゴっぽいのかな。音楽的にはもちろん、ヒップホップとかラップってところにカテゴライズされるわけだけど、それ以上の含みがあるというか。そういったシカゴから生まれる音楽ってどんな風なものだと思います?
モリモト:そうだね、シカゴのシーンがクールなのは、それだけたくさんのことが同時に起きているからだろうね。もちろんヒップホップ・コミュニティは本当に多様だし、ほかにもエクスペリメンタル・ロックやノイズ、ジャズのアーティストたちが数え切れないくらい作品を出してる。最近は即興音楽も流行ってて、かなり大きなシーンがあるしね。そのなかで、ぼくやナムディとか、いくらかのアーティストはそういったすべての要素を取り入れて、ひとつにまとめあげるみたいなことにトライしてて、そういった試みがぼくらのサウンドをちょっと複雑で特別なものにしているんだと思う。でもそれも、シカゴっていうリッチなコミュニティがあるからこそ成立してることで。たくさんの音楽が同時進行で大量に生まれてるんだ。
ーそういったなかでも、自分が特別に強い繋がりを感じるコミュニティやシーンというのは?
モリモト:うーん、やっぱりヒップホップやR&Bになるのかな。今日一緒にやってくれるバンドメンバーも、たくさんのアーティストとプレイしてきてるしね。ぼく自身、ほかのアーティストのためにサックスやキーボードを演奏するんだ。
ギターのBrian Sanbornはいつもノーネームとやってたり。今日バック・ヴォーカルをやってくれるKainaは普段はソロで活動してるけどこうやってぼくの音楽に参加してくれてるし、ドラムのRyanとベースのDejon Crockranも同様にプレイヤーとしてたくさんの人と共演してる。コミュニティのために自身をシェアして、一緒に音楽をつくってるんだよ。
ーあなたはサックス奏者として長いキャリアがあるわけですが、サックス・プレイヤーとしての道に進むことも考えたことはあるんですか?
モリモト:あるよ。10代の頃にね。「いつかバークリーに行っちゃったりして!」とか。サックスで大学に行って、ニューヨークに行ってジャズ・ガイになるんだとかさ。でも高校生のときにラップ・ミュージックやヒップホップの曲を作り始めて、卒業する頃には自然と、ジャズで成功してやろうみたいな気持ちじゃなくなってたかな。それで大学には行かなかったんだけど、自分でちゃんと音楽を作り始めて。そこからはプロデュースに専念していて、しばらくサックスには触れていなかったんだ。でもここ数年で急にまたやりたいって気持ちになって、もう一度はじめてみたら、おもしろいことに「帰ってきたぞ!」みたいな気分ですごく懐かしくて。自分のなかに自然とあったジャズってものが、そこでようやく腑に落ちたというか。
ーちなみに、憧れだったサックス・プレイヤーは?
モリモト:ネヴィル・ブラザーズのメンバー、チャールズ・ネヴィルがサックスの先生だったことがあるんだ。彼はぼくが育ったマサチューセッツに住んでて。一緒にサックスをやってたKaiって友達とふたりで、毎週土曜に彼の自宅に行って、ジャム・セッションをしたりして過ごしてた。彼はジャズの歴史とか、自分の経験について話をしてくれて、音楽についてたくさんのことを考えるきっかけをくれたんだ。いわゆる定義じゃなくて、もっとどう感じたらいいのかをコミュニケーションを通じて教えてくれたんだよね。彼は間違いなくぼくのヒーローだよ。ちょうど2018年に亡くなってしまったんだけど。
ーそうでしたか。
モリモト:ほかには、キャノンボール・アダレイがすごく好きだったね。ジャズに最初にハマったきっかけのソニー・ロリンズは自分にとって大きな存在だし、スムースなサウンドが好きだからスタン・ゲッツみたいなプレイヤーも好きで。ジョン・コルトレーンなんかは、ちょっと洗練されすぎていて幼い頃はピンとこなくて。今はいいと思えるけどね。だからもっとスムースなポップな感じの、ソニー・ロリンズとかソニー・スティットとかが好きだったよ。あとは大好きなバンドがいたんだけど、今信じられないことに名前が出てこなくて。ドラムとベースとピアノのジャズ・トリオなんだけど、ニルヴァーナとかのものすごいカヴァーをしてて……。
ーバッド・プラス?
モリモト:そう、バッド・プラス! CDは1枚しか持ってなかったけど、すごくよく聴いたんだ。
セン・モリモトがサックスを吹くパフォーマンス映像
ーマサチューセッツからシカゴに引っ越したのは、自分が行きたいと思ってのこと?
モリモト:そうだね。当時付き合っていたひとと一緒に引っ越したんだけど、彼女は学校に行ってて、自分はなにをしたらいいかもよくわかってなかったよ。とにかく働かなきゃーって。誰も知り合いがいなかったから辛くて、部屋にこもって音楽を作ってるしかなくて。落ち着くまでには少し時間が必要だった。でもそこから出会った人はみんな好きだよ。
ー数年前にロスコー・ミッチェルっていうシカゴのサックス・プレイヤーが書いた古い記事を読んだんですが、彼はそこでシカゴとニューヨークについての違いについて書いていて、建造物や街の風景がフリージャズのスタイルにも影響していると。ニューヨークは道路や空も狭いけど、シカゴはもっと開けていると。ぼくはシカゴに行ったことがないから実際にどんなふうかわからないんですが、彼はシカゴ・ジャズの自由さというかユニークさが、そういったオープンさにあると述べていて。
モリモト:わかるよ。
ーもしシカゴじゃなくてニューヨークを選んでいたら、今つくっているサウンドも違うものになっていたと思う?
モリモト:そう思うよ! ぼく自身こうやってシカゴにたどり着けたことをすごくラッキーだと思ってる。ニューヨークだったらもっと厳しかったんじゃないかな。
ーシカゴにはそういった特別なヴァイブというか雰囲気を感じる?
モリモト:その通りだよ、人々がとてもオープンなんだ。音楽に限ったことじゃなくて。ニューヨークの人たちは、外で他人に見られたり話しかけられたりするのをあまり心地よく思わないというか。なんだか怖い感じもするしね。それに比べるとシカゴの人はみんなフレンドリーだよ。
ー民族的な多様性もある?
モリモト:それは、地域とか街の成り立ち方によって異なるかな。ちゃんと公共機関が発達してていろんなとこにアクセスしやすいエリアはもちろんそうだけど、そうじゃない地区みたいなのもあって。でも、音楽コミュニティ内に限っていえば、すごく多様だよ。これまで一緒にやってきたパフォーマーはブラックにブラウンの人たち、ホワイトの人もいくらかいれば、ぼくみたいなのもいるしね。
ー88risingにフックアップされることになったきっかけは?
モリモト:弟と一緒にミュージック・ビデオを作ったんだけど……あ、ちなみに彼もいま一緒に日本に来てて。ヴィジュアルをやってるんだ。で、作ったビデオをいろんな媒体に送ったんだ。どこかでプレミア公開できたらいいなと思ってさ。そしたら88risingのショーン(・ミヤシロ)が「気に入ったよ」と電話をくれたんだ。彼らはクールだよ、よくサポートしてくれてる。
ーどんなところが?
モリモト:ぼくはいま24歳だけど、音楽制作自体は長くやってきていて、長くやってきてるからこそなにがしたいか、やりたくないかっていうのが自分のなかでハッキリしてるんだよね。ぼくは自分の部屋で音楽をつくるのが楽しくて、価値があることだって思ってる。それをリスクに晒すようなマネはしたくないんだ。だから、簡単にレーベルとサインしようとは思わない。ごめん、ちょっと話が逸れすぎたね……。ただ、とにかく88risingはその点でもつきあいやすいんだ。すごくクリエイティヴだし、ややこしい契約抜きでサポートしてくれてるっていうのがあるから、自分のペースで楽しいことができてる。
弟のユーヤ・モリモトが監督した「Cannonball」のMV
ーそうなんですね。もちろん界隈で88risingについては話題になっているんですが、実際どのように機能しているのかってことは誰も知らなくて。具体的にはどのようなサポートをしてくれるんですか?
モリモト:ぼくらはアルバムをほとんど作り終えていて、ビデオも自分たちでつくったタイミングだったから、彼らはレコードのディストリビューションとかをしてくれて。そのあたりは通常のレーベルにお願いすることとそんなに変わらないと思うよ。でも、普通のレーベルとやり方が違うのは、彼らはレーベル専属のアーティストとしての契約をぼくらに結ばせたりしないってところ。もっと集合体(コレクティヴ)って感じで、メディアへの露出のノウハウもあるし。オープンに好きなことをやらせてくれた上で、関係を築いてくれるのがありがたいよね。ビデオ公開の手助けをしてくれたのはもちろん、ライヴもいくつかアレンジしてもらったり。
ーじゃあアルバムに出資して、といった感じではなかったんですね。
モリモト:ほとんど作り終えてたから、自分たちで払っちゃってたというのもあるけど、いくつか必要な経費とかを払い戻してくれたりしたよ。実務的なお金の動きの話になっちゃうからアレだけど……。
ー「アジアの顔」として活動をする88risingと関係を築くということは、「アジア人アーティスト」として認識されるということになるわけですが、それについてはどう感じますか? いいことも、もしかしたらそうでないこともあるとは思いますが。
モリモト:そうだね、もちろんどういうふうに映るのかについては考えたよ。実際に彼らから連絡がきたときには、レーベルとしてどんな存在なのかってことをよくは知らなかったんだ。リッチ・ブライアンのビデオを観たことがあったくらいで。それでほかにもいろんなビデオを観たりしていくうちに、すごいカッコいいビデオをたくさん出してるなって思って。いい監督とたくさん仕事してるみたいだったし、興味をもったんだ。
インドネシア出身のリッチ・ブライアン「Dat $tick」のMVは、再生回数1億回を突破。
モリモト:それに、ぼくはアジアン・アメリカンだし、そういうことが本物のアジアの人からは実際どう思われるのかなって。それでインターネットでいろいろリサーチしてみたりね。そこから、88risingがアジアの人たちのなかでどれほど強い「ブランド」なのかってことを知ったんだ。そういった面では自分に安心や自信をもたらしてくれそうだって思ったし、その一方で、なかなかチャンスを得ることが難しいコミュニティの人たちの声を強化させていけるのはとてもいいことだと思ったんだ。
ーなるほど。
モリモト:本当にいろいろ調べたんだよ。あらゆる記事を読んで……批判的なのも、肯定的なのも。派閥は大きく3つくらいで、88risingはアジアン・カルチャーを商業化しすぎてて、一部が誇張されて晒されているようで嫌いだといっている否定派の人たち。それに対して、自分たちの声を届けてくれてるんだ、彼らは革新的で、アジアン・コミュニティから世界にヒップホップを発信する素晴らしい方法を提供しているっていう肯定派の人たち。それから残りが、ぼくみたいなふわっとした、分類できないニュートラルな視点の人かな。
ー2018年はBTSが全米チャートの1位を獲得したり、いろいろなことが変わってきていると思うんですよ。そういう点で、日本にいる自分にはどうも、アメリカのリスナーは「国外の今」の音楽を聴くことに対してもっとも保守的なようにみえる。
モリモト:いや、ぼくもその通りだと思うよ! みんな全然知らないよね。
ー気にもしてないというか。でもここのところ、ちょっと変わった流れもみえてきていて。急にアフロビーツが流行り出したりとか、そういうのには結構びっくりして。そういった兆候って感じてます?
モリモト:特に88risingについて?
ーそうですね、アジアのコンテンツに関していうと。
モリモト:もちろん、実感してきてるよ。なんか突拍子がなくて、かつネガティヴに聞こえるかもしれないけど、アジアの音楽市場はアメリカの手が入ってない、まだまだ未開発の状態にあると思うんだ。だから、そこがガッツリと組んだら、これからすごいことになると思うんだけど。どれほどお金を産むビジネスになるか考え出したら、気が遠くなっちゃうくらいだよ。とにかく、みんなにメリットがあるような関係性ができるのはいいことだよね。
ーそのうえで、あなたの音楽がアジアを代表する、といった見方をされることについてはどうですか? 2018年は日本人の活躍も多かったですよね。スーパーオーガニズムのオロノやミツキだとか。同じ日本人として活躍している姿をみるのは嬉しいのだけれど、彼ら自身がアジア人、ひいては日本人として括られることに対して、実際のところよく思っているのだろうか、と。
モリモト:ぼくは誇りに思っているよ。出身はどこであれ、自分たちみたいないわゆる二世が、これほどまでに世間的な認知を得たり、広く発信することができるようになったのはおそらく初めてのことで、そういう意味で自分たちは、そうした環境における第一世代なんだと思う。それってすごく興味深いことだと思ってて。そういった特殊な文化、世代の声を届けるまたとないチャンスだよね。自分の経験からすると、ぼくみたいな今の世代の二世って、自分のルーツにすごくワクワクしてるんじゃないかと思う。ただ母国と深い関わりがないだけで、ぼくら自身はそれを欲してる。だからミツキとかぼくだとか、日本にルーツがある人たちは、この国になにか借りがあるみたいな気がしていて、もう一度ちゃんと繋がりたいって思ってるよ。もちろん、言語やカルチャーの違いはあるから、すべてのギャップを埋めることは難しいけど。でも一般的に、今のアメリカに移住してきた一世のひとたちも、アメリカの外の母国と再び繋がりを持ちたいって感じてると思うな。
ーそして、88risingを率いるショーン・ミヤシロも同じようなバックグラウンドを持っているんですよね。
モリモト:そうだよ。ショーンも日本人だけど、アメリカで育ったんだ。
ーしかも、今はアメリカだけでなく、アフリカや東南アジアでも同じようなことが起きてますよね。
モリモト:ぼくらの世代の二世がカルチャーの流れを大きく変えてるってことだよね? その通りだと思う。それにすごくいいことだと思う。そういう人たちがどうやって生きているのか、現状を理解することも大事だし、それを記録することもね。
ー日本人アーティストとのコラボレーションには興味はありますか?
モリモト:もちろん! やりたいけど、誰とやったらいいかわかんないだけで……。でも、できたらいいなと思うよ!
ーこれまでに日本の音楽って聴いたことがある?
モリモト:ほんの少し。お父さんはアメリカに住んでるんだけど、すごい量のCDをコレクションしてて。ほとんどが60~70年代のものなんだけど、古い演歌とかも好きでさ。自分では、わりと最近になって興味が出はじめてから、80年代のものとかを少しかじって。佐藤博が好きだな。アメリカではそのあたりの古いファンクみたいなレコードがいますごく人気があって、そもそも手に入りやすいんだと思う。アメリカでは日本の古いものが新しく感じられて、その逆もまた然りみたいな、ふたつの国で時代を行ったり来たりしてるみたいな関係性ってすごく面白いよね。
Rich Brian/Higher Brothers/AUGUST 08/KOHH
88RISING
出演:リッチ・ブライアン、ハイヤー・ブラザーズ、オーガスト08、KOHH
※出演を予定していたジョージ、NIKIはキャンセル。セン・モリモトは不参加。
〈東京公演〉
日程:2019年1月10日(木)
会場:ZEPP TOKYO
〈大阪公演〉
日程:2019年1月11日(金)
会場:ZEPP BAY SIDE
詳細:https://www.creativeman.co.jp/event/88rising/

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