デスコアやメタルコアをベースにした激烈な音楽でキャリアをスタートした英国発のバンド、ブリング・ミー・ザ・ホライズン。その後、アルバムごとに進化を遂げ、2015年の『ザッツ・ザ・スピリット』が全米・全英チャート初登場2位を記録。
そして今回リリースされるのが、3年ぶり6枚目の最新アルバム『amo|アモ』だ。ちなみに本作収録の「マントラ」は第61回グラミー賞の最優秀ロック・ソングにノミネートされている。

今回、Rolling Stone Japanでは日本のアーティスト5人に取材を敢行。まずは女性シンガーのLiSAに登場してもらった。

LiSAはアニソンファンを中心に、多くの信奉者を持つ女性ロックシンガー。昨年は自身初となるベスト・アルバムを2枚同時にリリースし、それぞれオリコン初週1位と2位を獲得するという偉業を成し遂げている。

LiSAとブリング・ミー・ザ・ホライズンに接点を見つけられない読者も多いかもしれないが、彼女は中学の頃からバンド畑にどっぷりで、ライブハウスで働いていた経験もあるゴリゴリのロック少女だった。今回は彼女らしい視点でブリング・ミー・ザ・ホライズン、そしてフロントマンのオリヴァー・サイクスという人物について語ってもらった。

―元々、LiSAさんはどうやってヘヴィな音楽にハマっていったんですか?

私は中学からバンドをやっていて、初めて出会ったのがアヴリル・ラヴィーンだったんです。それで彼女のルーツを探っていくうちにグリーン・デイ、ブリンク182、グッド・シャーロットみたいなパンクにハマって。私がバンドをやっていたのはちょうどエモが流行っていた頃で、周りにユーズドとかリンキン・パークのカバーをやってる友達がたくさんいたので、その影響でエモも聴くようになりました。そういう音楽を子どもの頃にたくさん聴いていたので、自然と激しい音楽も聴けるようになって、J-POPみたいにAメロ~Bメロ~サビっていうお決まりのパターンじゃない、不思議な構成をしてるメタルとかハードコアみたいなジャンルも聴けるようになりました。
で、Crossfaithが海外でブリング・ミーと対バンしてて、その頃にスタッフさんに教えていただきました。で、オリヴァー(・サイクス)がやってるブランド、ドロップデッド(DROP DEAD CLOTHING)がかわいかったので、最初は音楽よりもファッションから入って、彼のウェブサイトでいろいろ服を買うようになりました。

―音楽のほうは?

音楽はどちらかというと聴きづらくて、メロディがないどころかずっと叫んでるし、理解するにはちょっと時間がかかると思ってたんですよ。だけどオリヴァーの言動だったり、メタルコアのバンドなのにいろんな場所に出向いていく姿勢だったり、進化していく彼らの姿が好きになって追いかけるようになったんです。それで、前々作『センピターナル』あたりから自分が知ってる感覚というか、ユーズドみたいに懐かしいエモのテイストが感じられたし、オリヴァーも歌うようになっていて。「オリヴァー、歌えるんだ!」みたいな(笑)。

―あはは!

それで、これからはスリーピング・ウィズ・サイレンズみたいに歌モノで勝負していくつもりなんだな、今後どうやって進化していくんだろうって思っていたら、前回のアルバムで「大好きです!」ってなって(笑)、そこからはずっと聴かせてもらってます。

―前作『ザッツ・ザ・スピリット』のどんなところが好きなんですか?

オリヴァーの歌ってる姿と甘い声ですね。だけどしっかりロックしてるし、シャウトもしてるし、声色がどんどん変わっていって、彼らの本気を見たような気がするアルバムなんですよね。「俺たちが頂点だぞ!」って宣言してるような感じがします。作品の構成もすごくよくて。アルバムの最初から最後までツルッと聴けるし、「これ、私もやりたい!」って思わされるサウンドやメロディの構成がたくさんある。


―なるほど。

あと、イギリスのバンドだからか、パンクな匂いもすごくしますよね。ドロップデッドを着ていて思うんですけど、チェック柄があったり、ちょっとボロボロだったり、パンクからの影響を感じるテイストがブランドにも取り入れられてるんですよ。彼らの音楽のコアな部分、メッセージがたくさん込められてる。話はズレちゃいましたけど、『ザッツ・ザ・スピリット』は、私がオリヴァーという人にやってほしいと思い描いていた音楽の理想に到達したというか、「私のオリヴァー、キター!」って感じでした。

―あはは! 今作の感想はいかがですか?

正直、びっくりしました(笑)。「こう来るか!」って。私もアルバムを作るときはいつも迷うんです。進化することでファンを置いていったらどうしようっていう気持ちと、変化せずにそのままであり続けることによって自家中毒を起こして、「ずっとこれしかできなくなったらどうしよう」っていう恐怖。でも、彼らは進化することを選んでいくんだなっていうことを感じたアルバムでした。

―それでいて人気を拡大させていくっていうのが凄まじいですよね。

ヒップホップ的な要素だったりブリング・ミーにしかできないサウンドの変化があったり、デジタルな部分が多くなってるけど、入口はちゃんとバンドサウンドにしてくれてるんですよね。
いろいろ挑戦しつつも、「お前らのことを置いていかないよ」っていうメッセージを最初に示してくれてる。だからファンが付いていくんだろうなって思います。

―大胆に変化しているのに、ファンを突き放さないバランスが絶妙ですよね。こういう進化って多くのアーティストの理想だと思います。

内臓が出てるアルバム(『Suicide Season』)からするとびっくりするぐらい変わってるけど、前作と比べると180度変わったことをやっているわけではないですからね。

―ご自身に置き換えると、ここまでの変化は怖いですよね。

すごく怖いですね。その”怖い”の意味は、さっき言ったように「みんなを置いていったらどうしよう」っていうのもあるし、そのサウンドが果たしてそこのフィールドにいる人たちに敵うものなのかっていう怖さがあります。

―LiSAさんはデビュー当時からロック一本で来ていますが、次第にサウンドを重く激しくしていくという選択をしました。どうしてそうなっていったんでしょうか?

元々、私は怒りをあらわにするタイプの音楽のほうが好きで。最初はアニメを通じてのデビューだったんですけど、アニメ好きの人たちのなかにもメタルみたいな激しい音楽が好きな人がいるっていうことを知って、自分のファンにも私が好きな音楽を楽しんでもらえるんじゃないかと思って、そこからどんどん自分の好きな要素を入れていくようになりました。ブリング・ミーは時代に合わせて好きなものを取り入れていると思うんですけど、私は過去に好きだったものを引っ張ってきて、ようやくここまでたどり着いたっていう感じです。


―時を経るごとにより自分になっていったと。アニメ好きにメタルリスナーが多いのはなぜだと思いますか?

アニソンのなかでも激しい音楽のなかにデジタルを取り入れたり、弦を入れることで新しいアニメソングの形を提示した方達もいて、激しくて速い曲が多いですよね。

―確かに。そう考えると、今までメタルを聴いたことのないアニメファンも試しに聴いてみたらハマる可能性はありますね。LiSAさんの新曲「ADAMAS」は、歌詞を読んでみるとLiSAさんの新たな初期衝動を感じると言うか、ここからまた攻めるぞという力強さが溢れているように感じました。

やっぱり、周りがどうこうっていうことじゃなくて、自分自身がカッコいいと思うことを貫いていくのがミュージシャンのあるべき姿なのかなと。人に潰されてたまるか、そんなことで私たちが作ってきた世界は崩れない、という意思表示がしたかったんです。

―ブリング・ミーみたいに変化していくカッコよさもあるし、ラモーンズAC/DCのようにひとつの姿勢を貫くカッコよさもあって、LiSAさんが選んだのは後者だったんですね。

でも、私は石橋をとことん叩いて渡るタイプなんですけど、絶対にこれだったらカッコいいって思えるものを見つけられたらそっちに行くかもしれない。私はまだこれまで作ってきたもの以外に「これだ」と思えるものに出会えていないんです。あと、私はファンの人と一緒に歳を重ねていくのが理想なので、今の音楽をやり続けるというよりは、ファンとずっと一緒に遊んでいられる音楽、みんなと寄り添っていける音楽を素直に作れたらいいなと思ってます。私は自分の歌詞や音楽に自分自身の”今”を注ぎ込むし、その時の自分の思いをリアルに言葉にしているので、自分と同じぐらいの年齢の方に届いたらいいなと思いながらこれからも曲を作っていくんだと思います。


―わかりました。では、再びブリングミーの話に戻りますが、具体的に気になった曲はありますか?

「マザー・タング」がめちゃくちゃ好きです。「彼がこんなに歌っていいんですか!?」って感じ。あと、ヒップホップの人と一緒にやってるのに「ヘヴィー・メタル」っていうタイトル付けちゃうのもパンクですよね(笑)。「シュガー・ハニー・アイス&ティー」も単語の頭文字を取ると”shit”だったりして、パンクな精神がいろんなところに入っていて面白いと思います。そうやって一つひとつの言葉に彼らの世界観がすごく表れていて、そういう意味では1stの頃から全く変わってないんだなって思います。あと、私はグライムスが好きでずっと聴いてたんですけど、自分が好きなものと彼らの好きなものがくっついたのがよかったです。オリヴァーと女の子の声はすごく合いますよね。

―前作の「ハッピー・ソング」もいいですよね。

ああ、あれもいいですね。あと、ラウドなのにオーケストラを取り入れてるのもいい。バンドが好きな身からすると、突然デジタルな音になるとちょっと置いていかれた感じがしちゃうけど、彼らは生音の使い方がすごく上手なんですよね。


―これだけ進化を続けると離れる人は離れてもおかしくないわけじゃないですか。だけど、逆に多くのファンを引きつけているっていうのは、単に聴きやすくなったからという理由だけでは済ませられないと思うんですよね。

私はこのアルバムを聴いていて、これまで彼らがやってきた音楽にも、これからやっていく音楽にも尊敬があるんだなって思いました。時代とともにどうしても”古いもの”っていうレッテルを貼られてしまうサウンドが多いと思うんですけど、彼らはいつの時代になっても自分たちの好きな最先端の音楽がいっぱいあるんだろうなって思います。 

―各ジャンルの音に愛があるからこそ、説得力のあるサウンドになっていると。

そうですね。私も海外のポップ・ミュージックが好きなのでよく聴くんですけど、それを自分でやりたいと思ってもどうやったらいいかわからない。だけど彼らはどんなに新しいサウンドを取り入れても、自分たちが作ってきたそれまでの音と上手く折り合いをつけて新しいブリング・ミー・ザ・ホライズンというバンドの作品にしているのがすごいと思います。

―LiSAさんはオリヴァーのどんなところに魅力を感じますか?

私は完全にルックスです(笑)! あとは彼のファッションもカッコいいと思っていて、そこからさらに甘い歌を歌うようになって「ヤラれた!」って感じです。

―彼のインスタも独特な世界観がありますよね。

ありますね。何をやってもブレない。

―今後どうなっていくんでしょうね?

楽しみですよね。「次は何やるんだろう?」ってずっと追いかけさせたくなるのは大事なんだなって彼らを見てて思いました。だからこのアルバムが出た後も、ファンはきっと次の作品を楽しみにするんだと思います。

LiSAが語るブリング・ミー・ザ・ホライズン「音楽への尊敬とパンク精神」

「赤い罠(who loves it?) / ADAMAS」
LiSA
SACRA MUSIC
発売中
https://www.lxixsxa.com/

LiSAが語るブリング・ミー・ザ・ホライズン「音楽への尊敬とパンク精神」

『amo | アモ』
ブリング・ミー・ザ・ホライズン
ソニーミュージック・インターナショナル
発売中
※初回仕様のみロゴステッカー封入/歌詞対訳付き

収録曲
01. i apologise if you feel something | アイ・アポロジャイズ・イフ・ユー・フィール・サムシング
02. MANTRA | マントラ03. nihilist blues feat. Grimes | ニヒリスト・ブルース feat. グライムス04. in the dark | イン・ザ・ダーク
05. wonderful life feat. Dani Filth | ワンダフル・ライフ feat. ダニ・フィルス 06. ouch | アウチ07. medicine | メディスン08. sugar honey ice & tea | シュガー・ハニー・アイス&ティー
09. why you gotta kick me when im dow? | ホワイ・ユー・ガッタ・キック・ミー・ホエン・アイム・ダウン?
10. fresh bruises |フレッシュ・ブルーゼズ11. mother tongue | マザー・タング12. heavy metal feat. Rahzel | ヘヴィー・メタル feat. ラゼール
13. i dont know what to say | アイ・ドント・ノウ・ホワット・トゥ・セイ

http://www.sonymusic.co.jp/artist/bringmethehorizon/
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