※来日公演チケットプレゼント実施中。応募詳細は記事の最後に。
―まず、天井さんとトレイル・オブ・デッド(以下TOD)の出会いから聞かせてもらえますか?
天井:僕はちょうど1999年、『Madonna』がリリースされた頃にロッキング・オンに入ったんですよ。ただ、あのアルバムがマージから出た時点ではまだ存在を知らなかった。TODを最初に知ったきっかけは、2000年にモグワイがキュレーションしたAll Tomorrows Partiesっていうフェスのラインナップに入っていたから。音を聴いたことはなかったけど、異様に長いバンド名がやっぱり気になって。
―「...And You Will Know Us by the Trail of Dead」っていう、頭の3点リーダから目を惹きますよね。
天井:そうそう、当時話題だったゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラーより長かったし(笑)。でも、YouTubeやストリーミングなんてなかったから、すぐに聴くことはできなくて。そのあと、2000年にドミノから『Madonna』が再リリースされて、そこで初めて聴きました。
―あのときのATPはラインナップもかなり豪華ですよね。
天井:トップの大御所枠にシェラックとソニック・ユース、ワイアーがいて。それからモグワイ自身とシガー・ロス、ゴッドスピードが続いて、プラムやフォー・カーネーション、エイフェックス・ツインもいた。プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーも別名義で出ていたりして(Bobby Gillespies Hair)。そのなかにTODがいたのも、いわゆるお墨付きって感じがしましたね。
ゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラーの2000年作『Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven』収録曲「Storm」
―このラインナップに入ってくるのも納得というか?
天井:そうですね。ポストパンクもそうだし、USハードコア以降の流れから派生したオルタナとか、アンダーグラウンドなロックの要素もありつつ、スロウコアやポストロックの隆盛も反映しているし、一番おいしい部分が詰まっているように思いますね。
―あと、モグワイがTODをいち早くフックアップしているように、UKでの人気が先行していたみたいですね。当時のシングルも、チャートにランクインしたのはUKだけで。
天井:彼らはドイツにも強力なファンベースがあるらしいです。でも、アメリカでは決していい扱いを受けていなくて。当時のUSロック・シーンの状況は、TODにとってはあまりいいものではなかったんですよね。
―『Madonna』が出た99年前後のUSロックシーンは、天井さんから見てどんな感じでしたか?
天井:ロラパルーザも97年に一旦終わったり、いわゆるUSオルタナが下火になっていた頃で。代わりに台頭してきたのがニューメタルやラップメタル、ヘヴィーロックだった。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、KORN、リンプ・ビスキット、スリップノットが中心にいて、ちょっと離れたところにナイン・インチ・ネイルズやマリリン・マンソンがいた。それと同時にグリーン・デイやオフスプリングあたりのポップパンクやエモ、いわゆるエピタフ系とか、ワープド・ツアーが盛り上がっていて。アメリカはその2つの大きな流れに一番勢いがあった時期だったから、そこにTODが割って入るっていうのは流れに反しているというか、やはり異端でしたよね。
リンプ・ビスキットの1999年作『Significant Other』収録曲「Re-Arranged」。TODは2002年の『Source Tags & Codes』リリースを前に、彼らやNIN、マリリン・マンソンなどが在籍していたユニバーサル傘下のインタースコープへ移籍する。
―TODの1stアルバムが出た98年には、エリオット・スミス『XO』や、マージ(『Madonna』のリリース元)からはニュートラル・ミルク・ホテル『In the Aeroplane Over the Sea』といったUSインディーの名作も生まれています。
天井:そうなんですよ、ローカルのインディー・バンドはすごく充実していたんです。オリンピアやポートランド、アセンズのエレファント6界隈の流れは影響力も大きかったし日本でも支持されていて、チームとしての活力は確かにあった。でも全体の流れから言えば、真っ当なギターロック・バンドにとっては不遇の時代だったかもしれない。
―ポストロックの象徴的作品であるトータスの『TNT』も98年ですよね。
天井:TODも局地的にはそういった流れを汲んでいたということですよね。
サニー・デイ・リアル・エステイト『How It Feels to Be Something On』収録曲「Pillars」
―そういう文脈でいうと、アット・ザ・ドライブイン(以下ATDI)の2作目『In/Casino/Out』も98年ですね。
天井:ATDIが2000年の頭に『Relationship Of Command』でメジャー・デビューしようという時期に、ロッキング・オンががっつり組んで盛り上げようとしたんですよ。ショーケース的なイベントなんかもあって。ATDIとミューズ、それからJJ72。この3組を誌面で盛り上げようって流れがあったのはよく覚えてます。こう振り返ってみると、同じテキサス出身のATDIが一緒のタイミングで活躍していたのは、TODにとっても大きかったですよね。盟友と呼べるようなバンドがいて。
―たしかに。
天井:あと、TODとも繋がるポストロック~ハードコアの流れでいうと、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイもテキサス出身ですよね。だから、テキサスにも根強い流れみたいなものはあったんですよ。
アット・ザ・ドライブイン『Relationship Of Command』収録曲「One Armed Scissor」
バットホール・サーファーズの1993年作『Independent Worm Saloon』収録曲「Who Was in My Room Last Night?」
―そういえば、天井さんが執筆した『Madonna』(2013年リイシューの日本盤)のライナーノーツを読んでびっくりしたんですよ。『Madonna』のジャケットにも明らかなように、TODは独特な宗教趣味を押し出しているじゃないですか。
天井:そうですね。
―なのに、「少年時代に地元の教会の聖歌隊に所属していた」「考古学や人類学を研究し、バンド名はマヤ文明に伝わる詠唱儀式からとられた」という逸話が実はウソだったという(笑)。
天井:そうそう、ホラだったんですよね。僕も又聞きですけど、メジャー最後のアルバムとなった『So Divided』(2006年)を出した頃にカミングアウトしたらしくて。「ライブ前に牛の生き血を飲んでいた」っていうのもたぶんウソです。
―もったいぶったバンド名とアートワークで、どれだけヤバい連中なんだろうと思っていたのに。
天井:あの音楽性と特殊なエピソードで、「一体どんなバンドなんだ!?」ってリスナーは想像力を膨らませていたわけじゃないですか。

『Madonna』と『Source Tags & Codes』のアートワークを使った、3月の来日公演のフライヤー
―そんな盛りまくりのエピソードも信じ込ませてしまうくらい、いろんな音楽的素養を感じさせるバンドですよね。
天井:さっきも話した通りテキサスのシーンから出てきてるわけだけど、そもそもの発端がオリンピアにあったから(※)、ライオット・ガールに対してもシンパシーを抱いていて――実際、メンバーのひとりはTODを始める前にマキルテオ・フェアリーズというクィア・コア・バンドも組んでいたし。オリンピア繋がりで言えば『Source Tags & Codes』収録の「Homage」でアンワウンドについて歌っているように、ポスト・ハードコアからポストロックに至る流れがバックボーンにあるんじゃないですかね。
※TODの中心人物であるコンラッド・キーリーとジェイソン・リースは、オリンピアで短命のバンドをいくつか率いて活動していた。
アンワウンドの1996年作『Repetition』収録曲「Corpse Pose」。90年代のキル・ロック・スターズを牽引した彼らは、作を重ねながらポスト・ハードコアとマス・ロック、ポストメタルを繋ぐような作風へと移行した。
―リリース20周年を迎えた『Madonna』ですが、天井さんのなかでの位置付けは?
天井:80年代にブラスト・ファーストやホームステッドが拠点を担ったUK、USのアンダーグラウンド~オルタナの流れを踏まえつつ、ポストロックとか現行のシーンとも繋がりがあることを示したアルバムだと思うし、サウンド面では真っ当なギターロック・バンドらしく、ラウド&クワイエットの緩急がありますよね。これはモグワイとかにも通じる部分だと思うけど、メロディアスなボーカル・パートと、アグレッシブなノイズとかジャムとのコントラストがありながら、渾然一体としているところもある。
―そうですね。
天井:しかも3分くらいから7分台の曲まで、振れ幅を広く聴かせられるっていう。演奏力もしっかりとあるし、耳から入ってくるカタルシスっていうのが大きいと思いますね。
―改めて聴いても、ギターの鳴りが素晴らしいですよね。天井さんも上掲のライナーで触れていたように、後年のクラウド・ナッシングスやメッツにも通じるものがあるというか。
天井:その辺のバンドは正統な遺伝子というか、系譜を継いでる感じがしますよね。当時のTODはまだ4、5人でやってたので、そんなにごちゃごちゃしたプロダクションではなかったと思うんですよ。それであそこまでの音が出せるのは凄いと思います。
クラウド・ナッシングスの2012年作『Attack on Memory』収録曲「Stay Useless」
―後追いの感覚でいうと、このアルバムがマージからリリースされたのも不思議な気がして。TODがスーパーチャンクと一緒にツアーしていたのが契約のきっかけらしいですけど、当時のマージ勢に比べるとTODの音は明らかに異質ですよね。
天井:今思うと、スプーン繋がりじゃないかなと思うんですよ。エンジニア/プロデューサーのマイク・マッカーシーという人物が、スプーンの初期から最近のアルバムまで関わっていて。それと並行して、TODも1stアルバムからずっと手がけてるんです。スプーンの『They Want My Soul』(2014年)も、ルーツ音楽やいわゆるロック・マナーに乗っ取ったバンド演奏と、ポストプロダクションやエレクトロニックなテクスチャーの融合みたいな部分がポイントだったじゃないですか。その辺は『Source Tags & Codes』とも共通する部分があるし、青写真を重ね合わせることができる部分が多いと思います。
スーパーチャンクの1999年作『Come Pick Me Up』収録曲「Hello Hawk」。ジム・オルークの共同プロデュースも話題に。
スプーン『They Want My Soul』収録曲「Let Me Be Mine」
―このあとTODは2001年のサマーソニックで初来日を果たすわけですが、プライマル・スクリームの一員として同フェスに出演していたケヴィン・シールズ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)が「Mistakes & Regrets」を絶賛したというエピソードがnoiseyの記事に載っていました。
天井:『XTRMNTR』(2000年)から『Evil Heat』(2002年)の頃って、プライマル自身が一番尖ってた時期ですよね。ケヴィン・シールズもそうだし、デヴィッド・ホルムズやDFAのティム・ゴールズワージーもいて、まさに超最強のメンツだった。そういうモードのなかで、TODがケヴィン・シールズの目に留まって絶賛されるのはよくわかる気がしますね。
『Madonna』に収録されたTODを代表する名曲「Mistakes & Regrets」
―TODの異質な部分は、サウンド面のどのあたりに表れていると思いますか?
天井:「変」な部分が前面に出てくるのは、『Source Tags & Codes』以降だと思うんです。『Madonna』までは4人ないし5人のギターロック・バンドっていうフォーマットだったけど、そのあとメジャー(インタースコープ)に移籍して予算が増えたことで、ゲストプレイヤーを雇ってストリングスやホーン、ティンパニーと音を入れまくって、さらにMIDIやシーケンサーといった編集ソフトを駆使しながら、どんどんレイヤーを重ねてテクスチャーを固めていったという。それでプログレっぽくもなったし、既存の文脈のどこにも置きづらいバンドの特異性みたいなものが出てきたんじゃないですかね。
―天井さんによる当時のインタビューでも、回答者のコンラッド・キーリーは『Source Tags & Codes』を「さらなる実験とさらなる暴走、つまり究極に向かうためのもの」と表現していましたね。あと、メジャーレーベルを遠慮なく銀行やパトロン呼ばわりしている(笑)。
天井:そう、とにかく金を出させるっていう(笑)。特にアメリカのインディーバンドは、メジャーとの契約に関して一度懲りてるはずなんですけどね。94、95年頃のバンドはメジャーに行ったけどダメだったというパターンが多くて、業界に搾取されるイメージというか、「メジャーと契約するのも考えものだね」って雰囲気がしばらくあったんですよ。そのなかで、このバンドはあえて野心的に、というか金を引っ張り出すために乗り込んでいったという。
『Source Tags & Codes』のリードシングル「Another Morning Stoner」
―『Source Tags & Codes』で語り草になっているのが、当時のPitchforkのレビューで10点満点を獲得したことですよね。とんでもない絶賛ぶりだったわけですが、その背景というのは?
天井:やっぱり、アメリカの状況が変わったのが大きかったと思いますね。アルバムがリリースされた2002年は、ちょうどロックンロール・リバイバルが沸いていた頃で。ミニマルでシンプルなロック・サウンドが再評価されていたなか、また異質な存在感を放っていたんだと思います。オルタナ好きにとって、ドンピシャに刺さるものが出てきたと。しかもメジャーから。そういう待望論めいたものもあったのかなと。あのレビューも実際に読んでみると、かなり感情的な内容なんですよね。
―「濃密で、美しく、複雑で、心をかき乱す、爆発的で、危険な……ロック・ミュージックがそうであることを切望するすべてが詰まっている」ですからね。
天井:そうそう。じわじわ期待が膨らんで、最高潮に盛り上がったところにハマったのかなと。
―とはいえ、ストロークスとは真逆の方向を突き進んでますよね、過剰極まりなくて。
天井:流行りの路線からは完全にアウトですよ。それなのに、堂々たる王道感がある。
―作品全体としても、前作よりスケール感が増してますよね。
天井:演奏の厚みとテクスチャーの厚みがグッと増していて、金と物と時間をたっぷり費やしただけはあるなと(笑)。かといって全然冗長な感じはしないし、全体として締まっていて。今聴いてもやっぱりすごいアルバムだと思いますね。
―『Source Tags & Codes』では、どの曲が好きですか?
天井:「How Near How Far」かな。それからタイトル曲。6分もあるけど緩急のつけ方で飽きさせないし、ストリングスなんかのアレンジメントも無理なく無駄なく入っていて、プロダクションがしっかりしている。この時期のバンドのいい状態が曲に表れている気がします。
―そして、『Source Tags & Codes』はバンド最大のヒット作になったと(全米73位)。2002年はUSインディーでいうと、スプーンの人気作『Kill the Moonlight』や、ウィルコ『Yankee Hotel Foxtrot』などが出た年です。
天井:TODと同じインタースコープからは、クイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジ(以下QOTSA)が『Songs for the Deaf』を発表して、ようやくメジャーで結果を残した年でもありますね。
―この年のインタースコープといえば、エミネム『The Eminem Show』とt.A.T.u.ですよね。その規模のポップアイコンとTODが、なぜかレーベルメイトだったという(笑)。
天井:その2組やオーディオスレイヴ、リンプ・ビスキットがしっかり売れていたからこそ、TODみたいなマイナーバンドにもお金をかける余裕みたいなものがあったのかなと。日本の音楽シーンでも90年代の終わり頃、ボアダムズだったり渋谷系のコアなアーティストがメジャーからリリースされるみたいな流れってありましたよね。
2000年の前作『Rated R』は全米チャート圏外となったQOTSAだが、『Songs for the Deaf』では17位と一気に飛躍。その後、マタドール移籍後の2014年作『...Like Clockwork』で1位を達成した。
t.A.T.u.が2002年にインタースコープから発表した「All the Things She Said」。日本では翌年に本格上陸を果たした。
―あとは前年の2001年にシステム・オブ・ア・ダウンの『Toxicity』が大ヒットしたり、ラウド・ロックの流行も後押しになったのかもしれないですし。
天井:ラウド系で言えば、2000年前後にはアイシスやコンヴァージとかの流れも関係していたと思うんですよ。グラインドコアやポストメタルとか。サウンド的にそっち側とのリンクもあったというか、距離感は近いものがあったのかなと。
コンヴァージの2001年作『Jane Doe』収録曲「Fault and Fracture」
―先ほどの話にもあったように、天井さんは『Source Tags & Codes』が出た頃に電話インタビューされたんですよね。何か印象的だったことはありますか?
天井:やっぱり放言癖というか、ビッグマウスだなとは思いました(笑)。でも、その発言のスケール感が音楽にうまくハマってたんですよね。マヤ文明の話とかもそうですけど、すべてのカルチャーを一纏めにして、全人類だの地球だのって言い出しちゃう陰謀論者みたいなイカれた感じが音楽の世界観に合っていて、いいキャラクターだったと思うんですよね。正直、ルックスさえよければマーズ・ヴォルタくらい売れてた気はするんですよ。セドリックやオマーくらいカッコ良かったら売れないわけがない、みたいなことは当時から言われてました(笑)。
―そこに大きな差が(笑)。マーズ・ヴォルタは2003年に1stアルバム『De-Loused in the Comatorium』を発表していますけど、サウンド面はTODとも近いですよね。
天井:ATDIはガリガリに削ぎ落としたソリッドなハードコア・パンクだったけど、マーズ・ヴォルタはそれこそプログレとかダブの要素もあって。ポストプロダクションにこだわって編集もやったり。TODはそれに先駆けていたと思うんですよね。
マーズ・ヴォルタ『De-Loused in the Comatorium』収録曲「Inertiatic ESP」
―マーズ・ヴォルタが2005年の『Frances the Mute』で全米4位まで登り詰めたのと対照的に、TODは2005年の『Worlds Apart』が全米92位、翌年の『So Divided』が全米190位とまったく奮いませんでした。
天井:ちょうどインディー勢がビルボードでも結果を出してた時期ですよね。デス・キャブ・フォー・キューティーやシンズのような、TODの同世代がメインストリームのチャートに入って商業的成功を収めていくなかで、メジャーに行ったはずのTODが数字上での結果を出せなかったのは悲しかった。
―同じインタースコープに所属していたQOTSA、ヤー・ヤー・ヤーズ、ジミー・イート・ザ・ワールドも順当にセールスを伸ばしているほか、古巣のマージでは2007年にアーケイド・ファイアが全米2位、スプーンが全米10位を達成しています。
天井:モデスト・マウスが全米1位になったのも2007年ですよね。この頃になると、コアな人たちはブルックリン周りに注目していた印象です。
―2007年はアニマル・コレクティヴの『Strawberry Jam』が全米チャート入りしたり、ブルックリンのシーンが最盛期を迎えつつあった時期でもありますよね。一方で、ポスト・ハードコア周辺ではQ and Not Uなど勢いのあったバンドが失速したり、ポストロックもだいぶ落ち着いてしまった。
天井:ロカストがいた、ゴールド・スタンダード・ラボラトリーズ周りの動きは面白かったですけどね。ただ、同時期にハードコアから派生した人たちで言えば、LCDサウンドシステムのジェームス・マーフィーや、!!!のニック・オファーのように、ダンスとかクラブ・ミュージックの方に向かう流れもありましたね。彼らもポニーやヤー・モス(The Yah Mos)といったバンドで90年代半ばくらいから活動しているし、世代的にもTODとは近い存在のはずです。
LCDサウンドシステムの2ndアルバム『Sound of Silver』も2007年のリリース。同年の年間ベストを席巻した。
―モデスト・マウスもダンスっぽいアプローチを取り入れてましたしね。そうやって時代に対応する動きもあるなか、TODは独自の世界観をより濃密にすることでカルト・バンド化していった。
天井:『World Apart』と『So Divided』に関しては、『Source Tags & Cords』のいい部分を悪い方向に煮詰めたというか、お金をかけていくうちにこじらせてしまった感があるというか。魅力的な作品ではあるんですけど、その過剰さの受け皿となるような状況がなかった気はしますよね。ただ、その超独自路線を極めた時期を経て、メジャーから離れた2009年に発表した『The Century of Self』はNYで録っていて。イェーセイヤーのメンバーが参加していたり、クリス・コーディがプロデュースを手がけていたりしているんです。実際、本人たちは「ダーティー・プロジェクターズにも参加してほしかった」とも話していて。
―ブルックリン界隈にも目配せしていたわけですね。
天井:2012年に僕がTODに行ったインタビューの見出しが「影響されていない音楽があるとすれば、それは”今のロック”だと思う」ってやつなんですけど、そうは言いながら周りにも目を向けていたように思うんですよね。
『The Century of Self』のリード曲「Isis Unveiled」
―2012年のHostess Club Weekenderで実現した前回の来日でも、『Madonna』の再現ライブをやっていましたよね。
天井:ライブはすごくよくて、大満足で帰路に着いた記憶があります。ちょうどメジャーを離れたくらいから、ゲストプレイヤーをたくさん入れたコテコテのプログレっぽい編成をやめて、バンド・サウンドに再びフォーカスするようになったんですよね。そこから2012年に『Lost Songs』というアルバムができて、バンドとしての状態がよくなっている時期に『Madonna』の再現ライブをやってくれたので、一番いいタイミングで観れたんじゃないかと思います。
―『Lost Songs』はアンサンブルも締まっていて、『Madonna』に通じる部分を感じます。
天井:最新作の『IX』(2014年)もバンド・サウンド寄りだったし、今回もまたそういうモードで来てくれるんじゃないかと。
Hostess Club Weekenderでのライブ映像
―TODがシーンに遺したものってなんだと思いますか?
天井:難しい質問ですけど、さっき挙がったクラウド・ナッシングスやジャパンドロイズなど、TODらしいサウンドを感じさせるバンドが今のシーンにいるってことじゃないですか。あと、TODはルイヴィル・シーンの潮流も汲んでると思うんですよね。テキサスと同じアメリカ南部だし。スリントとか、その前身のスクワール・バイト周辺の流れがある気がして。そういえば、この前シェイムにインタビューしたんですよ。そしたら「次のアルバムはスリントっぽくなるよ」なんて言っていて。そういうポスト・ハードコアやスロウコアの流れが、TODを経由して今のバンドに繋がっているのを見つけることもできるのかなと。
スリントの1991年作『Spiderland』収録曲「Good Morning, Captain」
天井:それから、近年はエモの再評価も進んでいますよね。ミネラルやアメリカン・フットボール、ゲット・アップ・キッズも新作を出しましたし。そこの流れからTODを再発見することもできるんじゃないかな。わかりやすく言えば「これエモいっしょ!」って感じの曲調だし、ちゃんと聴かせるメロディーがある。ちょっとスプリングスティーン的な、熱いロックって感じがありますもんね。
2018年のライブ映像
―ここ数年ロックに元気がないと言われるなか、これほど元気があるロックもなかなかないでしょうし。
天井:あり余ってる感じですよね(笑)。バンドも『Madonna』20周年モードに仕上がっているというか。ギターバンドとしていい状態にあると思うので。
―最近のツアーでも、昔の曲をバンバンやっているみたいです。
天井:やり込んでて、ちゃんと染み込んでいるサウンドがいい感じに聴けるんじゃないですか。あと、彼らを新代田Feverで観れるのもすごいなって。あそこで『Source Tags & Codes』の再現ライブをやるのはかなり貴重ですよ。
―ハードコアを生で観るなら、Feverほど恵まれた環境はないですよね。昨年のメッツも素晴らしかったですし。
天井:昔観たライトニング・ボルトも凄かったし、このあいだのシェイムもよかったです。海外のファンもかなり熱くなるんじゃないかな。
Hostess Club Presents...
And You Will Know Us by The Trail of Dead
20YEARS OF MADONNA
2019年3月4日(月)渋谷Club Quattro
Performing Madonna
Support Act : 踊ってばかりの国
2019年3月5日(火)新代田Fever
Performing Source Tags & Codes and Greatest Hits
Support Act :トリプルファイヤー
Open 18:00 / Start 19:00
料金:6,500円(税込 / 別途1ドリンク)
詳細:http://ynos.tv/hostessclub/schedule/20190304.html
〈トレイル・オブ・デッド来日公演チケットプレゼント〉
Rolling Stone Japan読者2組4名様を、希望日の公演(3/4 or 3/5)にご招待します。
【応募方法】
1)Twitterで「@rollingstonejp」と「@hostessofficial」をフォロー。
2)ご自身のアカウントで、下掲のツイートをRT。
〆切:2月24日(日)
※当選者には応募〆切後、「@hostessofficial」より後日DMでご案内の連絡をいたします。
トレイル・オブ・デッド来日公演
2組4名様を希望日にご招待!
3/4 (月) 『Madonna』
W/ 踊ってばかりの国
3/5 (火) 『Source Tags & Codes』
W/ トリプルファイヤー
▪️応募方法
1)当アカウントと @hostessofficialをフォロー
2)この投稿を2/24までにRT
↓記事はこちらhttps://t.co/GXUmLJokia pic.twitter.com/PN47MnccSy— Rolling Stone Japan (@rollingstonejp) 2019年2月14日